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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
5節 逃げるか、逃げないか
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第076話 素直じゃない

「……梨奈りな、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だって。『もう元の颯馬そうまに戻ってる』って陰星いんせい君も言ってたし。

 だから私は大丈夫。ほら行くよ」


 そんな会話をしながら、私は梨奈と一緒に病室の外に出る。


 意識が戻ってから大体30分ぐらい経って、私はようやく1人でちゃんと動けるようになった。

 そして病院にお世話になる方が嫌なので帰ることにした。


 もちろん服は着ていたジャージに着替えて。


 陰星達は着替える前に「先に帰っていい」と言って、病室から追い出した。

 ……今からは、私達3人の問題だから。


 私達は隣の颯馬の病室の前に移動して、扉をノックする。

 そして「颯馬、入るよ」呼びかける。


 数秒後、「どうぞ」という声が返ってきた。

 私と梨奈は扉を開けて中に入る。


 病室はやっぱり私が居た病室とほとんど同じみたい。

 そしてベッドの上にいる颯馬は、さっきより顔色は良さそうに見える。


 私達はとりあえず、ベッドの脇に椅子を置いて座る。


 座って荷物を足元に置く。

 すると梨奈がすぐに口を開いた。


「颯馬、身体はどう?大丈夫?」

「だいぶ落ち着いた。……それより、2人の方が」

「私は大丈夫。でも鈴保の方が……」


 2人がほぼ同時に私を見た。

 何故か少し恥ずかしくて、私は「別に。もう歩けるから。大丈夫」と返す。


 それより、私は知りたいことがあってきた。

 段階を踏むのとか苦手だし、さっさと聞きたい。


 なので私は「それより」と言葉を発して、話題を動かす。


「何で私をそこまで嫌うの?」

「それは私も気になってた。鈴保すずほも部活に戻ってきたんだしさ、また仲良くしようよ?」

「それ……は……」


 颯馬はそう呟きながら、私達から顔を背けた。

 視線の先にあるのは窓。


 ……いや、もう外は暗いからカーテンが閉められていて外は見えないんだけど。


 私は待っていても話が進まない気がしたので、急かす言葉を口にする。


「ねぇ、黙ってたって何もわからないんだけど」

「それ鈴保が言う……?」


 隣にいる梨奈が痛いところを突いてくる。

 「今はその話はしてない」って返したい。


 でもそうしたら話が脱線する気しかしない。

 なので私はぐっとこらえて「……とにかく」と言葉を続ける。


「私達の関係はこれ以上悪くなることなんてないんだから。ほら言って」


 自分で言っといてあれだけど、変な急かし方。

 でも事実なのは間違いないと思う。


 だって怪我をした後、私が勝手に逃げて距離を取って、そして喧嘩して。

 それで私が部活に復帰したら今度は颯馬が部活に来なくなって。


 挙句の果てに、颯馬が堕ち星に成って私達を襲った。



 それでも梨奈は、私のことも颯馬のことも大切な友達だと思ってくれてる。



 私だって……やっぱり颯馬のことは心配だし。


 小学生の頃は梨奈と2人だった。

 だけど……今はもう、2人だと少し寂しい。



 そう思うぐらいだから、私達の関係はこれ以上悪くならない。



 悪くなっても、何だかんだ心配し合うと思う。

 そんな自信があった。



 梨奈は私の言葉に、横で少し「えぇ……」って引いてるけど。



 だけど、颯馬はやっと口を開いた。


「……俺とお前らは部活で知り合っただろ」

「そうだね」

「だから鈴保が怪我をしてから、会わない方が良いと思った。

 学校にも来なくなったし」

「……え?」


 想定していた言葉と違う言葉を聞いて、私はその言葉を最後に固まってしまった。


 でも私はすぐに気を取り直して「……待って?」と聞き返す。


「どういうこと?意味がわからないんだけど」

「……怪我をして、あの大会に出られなかった。俺と会えば、そのことを思い出すと思ったんだ。

 それに……どう声をかけたら良いかもわからなかった」


 私は完全に固まってしまった。


 だって、この前の喧嘩のときは完全に私を責めてるような言い方だったじゃん。

 それが……私のためを思って?


 混乱していると、梨奈が「じゃあ……」と口を開いた。


「『陸上から逃げたやつ』って……」

「……嫌な記憶からは逃げたいだろ。

 それで逃げのに、俺達の感情で引き戻すなんて酷すぎるだろ」


 その言葉でようやく、混乱していた私の頭の中に確信が生まれた。


 つまり颯馬は私のことを嫌っていたんじゃない。

 むしろ逆で、私を気を遣って「陸上から逃げたやつ」って言ったってこと。


 いや……は?


 意味は分かった。でも理解ができない。

 そんな私の隣で梨奈がため息をついた。


「そう思ってるなら、何で相談してくれなかったの?」

「相談したら梨奈は確実に鈴保に話しに行くだろ。

 俺は鈴保をそっとしておいたほうが良いと思ってたんだ」


 少し怒ってるような口調の梨奈に、颯馬はムッとしたような口調で言い返した。


 そして私はそのやり取りを聞いて、思わず「何それ…口下手すぎない?」と突っ込んでしまった。

 すると梨奈が呆れながら「鈴保が言わないで」と返してきた。


「あぁ~~……もう!2人とも素直じゃないんだから!

 結局は元に戻りたいけど、どうしたら良いかわからないってだけじゃん!すっごい遠回り!

 2人とも!これからはちゃんと悩みがあるなら私に相談すること!いい?」


 ……それって、梨奈の負担が増えるじゃん。


 実際に今、鳴きそうなのか怒ってるのかわからない顔だし。


 そして颯馬も、どう考えてるかはわからないけど返事をしない。


 すると、梨奈がさっきよりも少し声を大きくして「わかった?」と聞いてきた。


「……はい」「……わかった」


 私と颯馬が、ほぼ同時に渋々返事をした。


 すると、何故か梨奈が笑い出した。

 私と颯馬も、何故かつられて笑い出す。



 ……私はやっぱり、また2人とこうやって笑いたかったんだ。



 もっと早く、2人と話しておけば良かった。



 ……せめて梨奈に話していれば。



 笑いながらそんなことを思った。



 でも今、またこうして笑えてるからそれでいいと思った。




 だけど、颯馬の「裏切った」という言葉の言う意味は聞けなかった。



 ……まぁ予想はついてるけどさ。

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