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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
第1章 1年生  1節 再会
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第007話 巻き込みたくない

 誰かの話し声が聞こえる。

 自分の状況がわからない。


 俺は何をしていた。俺に、何があった。


 身体に上手く力が入らず、すぐに動けない。

 1つわかるのは、俺は固い地面の上ではなくて何か柔らかい物の上に寝ているということ。



 俺は目を覚ます直前の記憶を思い出す。



 そうだ。俺ははえ座と戦っていた。

 最後の記憶はプールサイドだ。



 ……ではなんで柔らかい物の上にいるんだ?



 ようやく目を開けると、そこは知らない天井だった。

 首を動かして、辺りを見回す。


 わかったのは、ここは恐らく保健室ということ。


 そして、今一番会いたくない2人がすぐそばにいるということ。


 2人は俺の寝ているベッドのそばに置いた椅子に座り、会話をしている。

 その光景を見て、今の状況に合点がいった。


 そして、2人が目を開けた俺に気が付いた。


「やっと気がついた!あっ……えっと……大丈夫?」

「……なんでお前達がここにいる」

「わざわざここまで運んであげたのに、そういう言い方はないでしょ」


 白上しらかみ 由衣ゆい水崎みずさき 日和ひより

 2人の幼馴染がそこにいた。


 どうやら気を失った俺を、保健室まで運んでくれたらしい。


 普通ならお礼を言うべきだ。

 しかし、どうしても俺は「関わって欲しくない」という気持ちが勝ってしまった。


 俺はまだ言うことを聞かない身体に力を入れて、ベッドから起き上がる。

 そして、ベッドから降りようとする。


「ちょっと!?どこ行くの!?」

「帰るんだよ」


 ここにはいられない。

 これ以上、2人を危険なことに巻き込みたくなかった。


 しかし、やはり星力を使いすぎてしまったようで上手く立てない。


 倒れそうになる俺を由衣が支えて、無理やりベッドに座らせようとする。

 俺は力が入らないため、抵抗できずに座らされた。


 そして由衣は「ねぇ……どうしてそこまでして戦うの?」と聞いてきた。


「お前に関係ないだろ」

「確かに……関係ないかもしれないよ。あんな怪物たちに関わらない方が正しいのかもしれない」


 なんだよ。俺が言いたいことはわかってるじゃないか。

 そんな考えと共に、「わかってるなら関わるなよ」と吐き捨てる。


「でも!友達が怪物と戦ってるのを心配しちゃいけないの?私達は戦う力はないよ。そんな私達が関わったら怪我どころじゃ済まないかもしれない」

「だったら!!」

「でも!!それがわかってても、私はまー君が心配なの!

 ……最初の頃、覚えてる?私さ、周りの子とどうやって関わったらいいかわからなくってさ。ずっと1人だった。

 でもそのときに、まー君が1人は寂しいよってみんなの輪に入れてくれた。私それが凄く嬉しくってね。私、まー君のお陰で変われたんだ。

 だから今度は、私がまー君の助けになりたいの」


 俺は言葉に詰まる。

 2人が俺のことを友達だと思い、心配してくれているのはこの数日で痛いほどわかってる。

 それがこの3年間で変わってしまった俺であろうとも。


 だが、その思いには応えられない。

 俺は2人とは一緒にいられない。


 もう一度、俺は立ち上がる。


 さっきよりはしっかり立てた。


 止めようとする由衣を押しのけ、今度こそ俺は保健室から出ようとする。


 由衣が呼び止めているが、その言葉を聞こえないふりをして。



 しかし、もう1人の幼馴染が出口に立ちふさがった。


 

「ちょっと、無視して帰るつもり?」

「……俺に関わるな。」

「そればっかり。由衣はこんなに心配してることに何も思わないの?」

「……そういうわけじゃない」

「だったらなんで」


 俺はまた言葉に詰まってしまった。


 普通に高校生活が許されるなら俺だって仲良くしていただろう。

 でも俺にはそれはできない。


 もう《《あのような出来事》》を繰り返したくはない。


 そのとき、頭の中に《《あいつ》》との日々がフラッシュバックした。


『だから僕は、君を助けたかった』

『誰かのために戦う…ね。やっぱりいいな、真聡は。正義のヒーローみたいで』

『僕も真聡の力になれればなぁ』

『なぁ、その力があればここにいるやつら、一掃できるかな』

『だから僕は、ここにいるやつを皆殺しにする。弱い奴が虐げられるのはもう嫌なんだよ!』 


『俺が、この力でお前を止める』


 ……そうだ。俺はもう失いたくないんだ。


 だからこの2人と一緒にはいられない。巻き込むことはできない。


 俺は無言で日和を押し退けて保健室を出ようとする。

 しかし、日和も抵抗してくる。


 押し合いをしていると黙っていた由衣が後ろから話しかけてきた。


「まー君は何も話してくれないけどさ。きっと私達には想像もできないぐらい辛いことがあったんだよね。

 だから、全部話してとは言わない。また仲良くしようとも、もう言わない。でも私はまー君が話したくなるまで待ってるから!」

「由衣……」


 今の由衣の言葉を日和は想像していなかったのだろう。

 日和の抵抗する力が弱くなったので、俺は押し退けて保健室を出る。


 立ち去る俺の背中に向けて由衣が言葉を投げ続ける。


「でも1つだけ約束して!絶対に、死なないでね。それだけは……嫌だよ」


 俺は止まることなく保健室から立ち去る。

 やはりここには居られない。


 今の俺は、由衣の眩しさから目を逸らしたかった。

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