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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
5節 逃げるか、逃げないか
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第062話 誤解しているのかも

 7月中旬の日差しは暑い。特に昼間は最悪だ。

 こまめに休憩を入れる必要が出てくるため、効率が悪くなる。


 室内訓練場がある協会日本支部が羨ましい。

 俺だってこれでも、世の平和と秘密を守る為に戦っているんだ。もう少し優遇してくれても良いだろ。


 ……やはり、今の協会の上層部はケチだ。


 心の中でそんな悪態を付きながら俺はいつもの駐車場跡地の小さな日陰に仰向けに倒れ込む。


 蠍座をどうやって倒そうか。


 色々考えながら身体を動かしていたが、決め手になりそうな案が浮かんでいない。


 それにからす座も現れる可能性がある。

 ……どうしたものか。


 日差しの影響下少し目が痛いので、目を右手で覆いながら考える。


 そこに突然、額に冷たいものが乗ったのを感じた。

 俺は反射的に左手でそれを掴む。


 掴んだ左手の掌が冷やされていく。


 そしてこの形は……ペットボトルか?


 すると頭の上あたりから「勢い怖い」という声が聞こえた。

 華山(はなやま)の声だ。


 やっぱり華山の仕業だったか。


 右手をどけて、目を開ける。

 そこには、華山が俺の顔を覗き込む形でしゃがんでいた。


 俺は華山が俺の頭の上から動いたのを確認してから起き上がり、言葉を返す。


「周りが見えてないやつの額に無言で物を置くな。

 というか、帰ったんじゃなかったのか」


 自分の部屋からここに移動するときは一緒だった。

 しかし、気が付くといつの間にかいなくなっていたので、帰ったと思っていたんだが……。


「家から保冷バッグ持ってきて、それ買ってきたの。あげる」


 掴んだペットボトルをに目を向けると、スポーツドリンクだった。


 まぁ……ありがたく頂くか……。


 ……それにしても華山はこんなやつだったか?

 スポーツドリンクを見つめながら考えていると華山が口を開いた。


「もしかして、もっと甘い方が良かった?

 流石にこっちの方が良いと思ってそれにしたんだけど」

「いや、そうじゃない。……お前、こんなに気の利くやつだったか?」

「……陰星(いんせい)君は私をなんだと思ってるの?

 私は無闇に人と仲良くしないだけ」

「そうか。……悪い」

「別にいいけど」


 俺は華山を周りの人間に興味がないタイプだと認識していた。

 だが、もしかしたら誤解しているのかもしれない。


 俺は貰ったものを口にしながらそんな事を考えた。

 すると華山から、さらに言葉が飛んできた。


「私も質問して良い?3つほど」

「……答えるとは限らない」

「じゃあ1つ目。何でそこまでして戦うの?」


 定期的に聞かれるな、これ。

 というか華山には前に言った気がするんだが……。


 しかし聞かれた以上、秘匿に反にならない範囲なら答えるべきだ。


「やるべき事をやってるだけだ」

「それは陰星君じゃないと駄目なの?」

「……それもある」

「それ《《も》》?他に理由がるの?」


 俺は「それ以上は答えん」と返して会話を終わらせる。


 ……これ以上の話は、する必要は無い。


 質問者の華山は「そ」と返した後、持っているビニール袋からアイスを取り出した。

 そして外袋を開けて、棒アイスを口に入れた。


 ……こいつ実は自分のアイスのついでに俺に差し入れを買ってきたのか?

 そんな無粋な考えが浮かんだが、口の悪さが怒られたばかりなので流石に口に出すのはやめた。


 その後。口に入れた分のアイスを飲み込んだらしい、華山がまた口を開いた。


「2つ目。じゃあ普通の犯罪とか見かけたらどうするの?」

「どういう意味だ」

「助けるのか。無視するのか。どっち?」


 つまりさっきの質問の続きか?

 もしかして、角度を変えて俺の本性を探りたいのか?


 ……それは嫌だが、この質問はさっきと角度が違うから答えることにした。

 

「規模による。そういう方面では俺は普通の高校生と変わらない。ひったくりや泥棒なら犯人の妨害をする。規模が大きいものなら警察に連絡する。それだけだ」


 そう答えると華山は「ふぅ〜ん」と言いながら、また棒アイスを口に運んだ。


 ……凄く適当に聞かれている気がするが、まぁ気にしないでおこう。


 そしてまた呑み込んだらしい華山は「最後の質問」と口を開いた。


「星座の力って1人1つしか使えないの?」

「今のところはな」

「不便だとかは思わないの?他にも回収はしてるんでしょ?」

「……使えたらと思うことはある」


 「使えたら……と思う……ねぇ」と言いながら、華山は最後の一口を口に運んだ。

 そして食べ終わったアイスの棒をアイス袋に入れた。


 一方、俺は最後の質問だけ先の2つと方向性が違うことに違和感を覚えて、考えていた。

 しかし、答えても支障はない内容ではあるので、俺は気にしないことにした。


 その代わりに、俺も1つ質問をすることにした。

 華山から了承を取れたので、質問を口にする。


「お前、何でここまでついてきた」

「暇だから。それと、私がいたら陰星君がスマホ見てなくても、2人から連絡が来たら伝えれるでしょ?」


 ……確かにそうだ。

 魔術を調整している最中などにスマホが鳴ってても気づける自信がない。


 俺は「そうか」とだけ言い、立ち上がる。


 もう少し蠍座とからす座の対策を考えるか。

 だがその前に、もう1つ言い忘れてたことがあるのを思い出す。


「……スポーツドリンク。ありがとな」

「どーいたしまして」


 しかし、結局その日は澱みも堕ち星も星座概念体も現れなかった。

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