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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
第1章 1年生  1節 再会
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第006話 堕ち星

 放課後。

 俺、陰星いんせい 真聡まさとはまだ学校周辺にいた。


 別に暇だからではない。

 今日は学校周辺のよどみが溜まりやすい場所を徹底的に潰していたからだ。


 この街にある特に大きな澱み溜まりは既に処理をした。

 しかし大きさに関わらず、澱みは存在するだけで《《あの人型の怪物》》を産む。


 もちろん、全て消してしまうとそれはそれで問題があるが。


 だが、学校周辺だけでも先に潰しておいたほうが楽だと考えた。

 もし授業中などに澱みの怪物が発生したら面倒なことになるのは目に見えている。


 学校周辺にある最後の地点を魔術で潰す。


 これで今日の予定は終了した。

 この後、何をするかを考えていたそのとき。



 感知魔術で空気の魔力の揺らぎを感じた。

 その直後、微かに悲鳴が聞こえる。



 俺は揺らぎを感じた方向へ走る。


 学校の外周に突き当ったので、壁に沿って走る。 

 そして外周の角を曲がり、校門がある道に出る。


 すると、生徒たちが逃げ出すように学校から出てきているのが見えた。


 どうやら今日は校内で出たらしい。

 俺は自分に認識阻害魔術をもう一度使って、敷地内に入る。


 揺らぎの原因はすぐに見つかった。


 はえ座のぼしが男子生徒を襲っている。

 どうやら感じた揺らぎははえ座のものだったようだ。


 この街に戻ってきてから、こいつとは既に何回か戦っている。

 そして、その度に逃げられた。



 だから、今日こそは倒す。



 その決意と共に俺は左手をお腹の上を右から左へなぞり、家に置いてあるギアを喚び出す。

 深い青色のギアが光と共に現れ、お腹に巻かれた。


 次に左手の甲に刻まれている山羊座の紋様に意識を集中し、星力せいりょくを結晶化させてプレートを生成する。


 そのプレートをギアに差し込み、左手を肩の高さに持ってくる。

 そこから時計回りに左手を回し、左手が一周した所で左に伸ばす。

 そして目を隠すように左腕を戻す。


星鎧せいがい 生装せいそう


 その言葉と共にギア上部にあるボタンを押す。

 するとギア中心部から山羊座が俺の眼の前に出現する。


 出現した山羊座は光を放ち、俺の全身を包み込む。


 光の中で俺の身体は、星力が結晶化した紺色のアンダースーツと黒色の鎧に纏われる。


 そして、光は晴れる。


 俺はこの星座の力が宿った鎧を身に纏うことで、澱みや堕ち星などの人に害を与える、人の力が及ばない存在と戦っている。



 はえ座がこちらに気付き、突っ込んでくる。

 俺はそれを横に転がることで避ける。


 やつの面倒なところは速度が速い点と空が飛べる点。

 どちらも今の俺には厳しい特性だ。

 こちらの攻撃も当てる事ができなければ、拘束することもできない。


 もう一度、突っ込んでくるはえ座。


 馬鹿の一つ覚えのような攻撃方法だが、今の俺には有効なのは事実だ。

 俺は杖を生成して、両手で持って地面を突く。


 すると眼の前の土が盛り上がって、土壁と成った。


 しかし、はえ座は壁の前で上に方向を変えて、壁をよりも高い位置から突っ込んできた。


 俺はそれをなんとかまた転がって避ける。


 この技も既に何度かやっているため、どうやら対処されてしまっていたらしい。

 そして、さっきから転がってばかりだ。突破口を開かなければ勝ち目はない。


 はえ座はまた飛び上がった。

 今ので味を占めたのか、また上から攻撃を仕掛けてくるつもりのようだ。


 上に逃げられると、射程的に魔術が届かないので勘弁して欲しい。

 しかし、相手が苦手な攻め方をするのが戦い。


 ではこちらはどうするべきか。

 はえ座の攻撃を避けながら俺は考える。



 そして、思いついた。



 相手が予想してないところから攻撃をすればいい。



 俺は向かってきたはえ座を直ぐには避けず、ギリギリまで引き付ける。

 そして相手の突撃が当たるよりも早く、魔術で火を纏わせた蹴りを叩き込む。


 今日はまだこの方法は使っていなかったからか綺麗に決まる。



 吹き飛ぶはえ座。



 隙ができた。



 俺は自分に脚力強化の魔術をかけ、2階の渡り廊下の屋根に飛び乗る。

 はえ座はまだ体制を立て直せていない。


 次に俺は校舎に向けて跳躍し、校舎の外壁を蹴りさらに高く飛ぶ。


 そして無詠唱の風魔術を使い、上空で体勢を整え言葉を紡ぐ。


「火よ。人類の文明の象徴たる火よ。今、その大いなる力を我に分け与え給え。今、この世に蔓延る澱みを焼き尽くす炎となり給え」


 杖先に赤の魔法陣が現れる。


 そして俺は杖をはえ座が居た方に向けて構える。これで焼き払う。



 しかし、肝心のはえ座の姿が見当たらなかった。

 ついさっきまでは、そこに居たのに。



 嫌な予感がして、後ろを振り返る。



 そのときにはもう、遅かった。



 既に後ろを取られており、はえ座は攻撃の体勢に入ってる。

 どうやら俺は、はえ座の移動速度を甘く見すぎていたらしい。


 この間合いだと、今から撃っても間に合わない。

 諦めて俺は星力を体中に巡らせて、攻撃を受ける用意をする。


 次の瞬間。

 お腹に強烈な痛みを感じると共に、俺の身体は凄まじい勢いで地面に落ちていく。


 次は地面に激突したときの痛みが来る。

 体の背面に星力を集中する。


 しかし感じたのは、地面には激突したものとは違う痛みだった。


 液体の中に落ちた感覚。



 目を開けると、視界は暗く、揺らいでいる。



 どうやら俺はプールに落とされたらしい。

 星鎧を纏ってはいるが、水中での長時間は活動できない。


 そのため急いで水から出ようとする。

 しかし水に落とされて、もう1つの手段を思いついた。


 俺は水から出るのをやめて、はえ座の様子を見る。

 相手もこちらの様子を窺っているようで、上空で飛んでいた。

 好都合だ。


 しかし、杖が手元にない。


 どうやら落とされたときに何処かに行ったようだ。

 そのため、俺はもう一度杖を生成し直す。


 そして杖先だけを水中から出して、星力を魔弾にして撃ち出す。


 魔弾は基礎的な魔術だが、俺が使える魔術では唯一相手を追尾をするという特性がある。


 はえ座は魔弾を振り切るために、どこかへ飛び去った。


 俺はその間にプールサイドに上がる。

 そして左手を地面に当て、杖を持った右手を後ろにして急いで詠唱始める。


「水よ。生命の源たる水よ。今、その大いなる力を我に分け与え給え。今、我が身を数多の外敵から守り給え」


 地面に魔法陣が現れ、プールの水が俺を包み込み始める。

 塩素が入っていても魔術で操れるようで一安心する。


 一方、はえ座はようやく魔弾を対処して戻ってきたところのようだ。

 今は校舎の3階ほどの高さで飛んでいる。


 今回は間に合った。


 はえ座は俺の始めて見る技にどう攻めるか考えているようだ。

 しかし、結局諦めたのか突っ込んできた。


 それを待っていた。


「水よ!捕らえよ!」


 俺がそう叫ぶと俺の周りの水が裏返えるようにはえ座を包み込む。

 水中でジタバタと動くはえ座。

 やはり、水中での動きは鈍るらしい。


 捕らえたのは簡易詠唱魔術だが、今度こそ隙はできた。

 これなら詠唱魔術を遠慮なく撃てる。


 俺は右手で持っている杖をはえ座に向けて構え、左手を添える。


「水よ。生命の源たる水よ。今、その大いなる力を我に分け与え給え。今、この世に蔓延る澱みを流し給え」


 杖先に青い魔法陣が現れ、そこにプールに残っていた水が集まっていく。

 そして少し遅れてはえ座を包みこんでいた水も集まり始める。


 はえ座はその隙に逃げようとするも、こちらの詠唱が終わるほうが早かった。


 杖先から放たれる水流。

 それを受けたはえ座は凄まじい勢いで弧を描くように空に向かって吹き飛ばされる。


 そして見えなくなった。


 倒せたかどうかは確認できない。

 しかし、詠唱魔術をあの距離で当てたから致命傷にはなっただろう。


 本来なら倒したかどうかを確認すべきところだが、今の俺は立っているだけで精一杯だった。


 鎧が消滅し、制服姿に戻ってしまった。


 常に感知魔術と認識阻害魔術を使用しながら澱み溜まりの処理したを後に戦闘。

 しかも詠唱魔術を不発したものを除いて2回。簡易詠唱魔術を1回。

 水はあったものを使ったとはいえ、今の俺の星力量だと星力を使いすぎたらしい。


 とりあえず、人目につかないところに移動しようと体に喝を入れる。



 しかし、残念ながら俺の意識はそこで途絶えた。

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