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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
4節 科学館での出会い
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第052話 星座オタク

「12星座の導き、どうだった?」

「各星座の神話がとてもわかりやすかったです!それと黄道って太陽が通る道のことなんですね!」


 上映が終わり、俺たちはプラネタリウムを後にする。


 由衣(ゆい)はすっかり見鏡(みかがみ)先輩と仲良くなっており、今も何か話している。


 相変わらず、人と仲良くなるのが早いやつだ。


 そんな由衣がこちらを向き、俺達3人に「ねぇみんな!」と話しかけてきた。


「ここ、星座についての展示もあるんだって!見ていかない?」


 俺達3人は顔を見合わせる。

 返事をしたのは志郎(しろう)だった。


「そうだな。せっかく来たんだから色々見て帰るか!」

「やった〜!というわけで望結(みゆ)先輩!案内よろしくお願いします!」


 由衣の言葉に、見鏡先輩は少し嬉しそうに「わかった」と言葉を返してきた。

 そして、俺達は再び移動を始める。


「それにしても、星座が好きって言ってくれる後輩に出会えるなんて思ってもなかったな。由衣ちゃん、良かったら今からでも天文部はいらない?」

「さ、誘ってもらえるのは嬉しいんですけど……」


 そう言いながら由衣はこちらを見る。

 その表情は『なんて言ったら良いかわからない』と言っているように見えた。


 なので俺は事実を伝える。


「別にお前、部活入ってないだろ」

「そうなの?」

「あ、えっと……入ってはないんですけどぉ……他に忙しいことがあってぇ……」

「……そっか。でも、気が向いたらいつでも言ってよ。体験入部もいつでも待ってるから。

 じゃあ、入場券買おっか」


 その言葉で前を見ると、俺達は科学館常設展示の入場列の最後尾にいた。


☆☆☆


「着いたよ。ここが星座関係の展示室だよ」

「す、すっご〜い!!」


 到着した展示室は円形の部屋で照明が落とされており、天井には天球儀が映し出されていた。

 そして床には12星座が描かれており、壁には12星座を始めとした、メジャー星座の話が書かれている。


 そして人は……そこそこいるな。

 うるさいとまでは言わないが、少しがやがやとしている。


 そして一通り見渡した由衣は、嬉しそうに「では望結先輩、星座についてもっと色々と教えてください!」とお願いをする。

 すると、見鏡先輩は嬉しそうに話し出した。


「まず星座にはね、比較的古くからある星座と比較的新しい星座があるの。

 古いのはプトレマイオス48星座って名前がつけられていて、別名でトレミー48星座とも言われているわ。この星座はヨーロッパから見える星空に存在するもので構成されているの。


 じゃあ、ヨーロッパ以外の星空はどうなのって話になると思うんだけど、それが今の88星座に繋がるの。

 ヨーロッパ以外の星空は大航海時代になって地球上のあちこちに行けるようになってからようやく認識された。そのためヨーロッパから見えない星空にもたくさんの星座が作られたの。


 そうして星空の空白を埋めるようにたくさんの星座が色んな人によって作られていった。でもあまりに増えすぎて使う星が被ったり、権力者が好き勝手に作った星座がなどたくさん出来てしまったの。

 そこで1922年の国際会議で今の88星座が世界共通として制定されたの。

 こうして星座は今の88個になったってわけ」


 ……流石天文部、凄い知識量だ。


 俺も中等部時代に色々星座については知識を叩き込んだが……いきなりパッとこれだけ話すのは無理だ。


 そして先ほどまでよりも早口で、呼吸も少なくあれだけ言うとは……よく噛まないな。


 そんな感想を抱いていると、由衣が「なるほどぉ……」と呟いた。


「あの、黄道12星座もその……プレミー?の48星座に入るんですか?」

「由衣ちゃん、混じってるわよ?トレミーもしくはプトレマイオスね。

 48星座の中でも3つに分類があるの。それが北の21星座、南の15星座、そして黄道12星座よ」

「ほうほう……その48星座について、もっと詳しく教えてもらっていいですか!」

「もちろん!こっちに一覧があるわ」


 そう言って2人は歩いていく。

 すると華山(はなやま)がボソッと呟いた。


「見鏡先輩ってさ、星座オタクだよね」


 俺はその言葉を「そうだな」と肯定する。


 ……来たからにはとりあえず、壁のキャプションでも読むか。

 何かの役に立つかもしれん。


 そう思ったとき、志郎が「なぁ真聡(まさと)」と話しかけてきた。


「12星座が最強って訳じゃねぇのか?」

「いや、そうでもない。

 というか、お前はあっちに行かなくて良いのか」

「いやぁ……俺は由衣のように初対面の先輩にガンガン絡みに行けねぇよ……」


 「お前も大概だと思うぞ」と言いたかったが、俺はその言葉を飲み込んで「そうか」とだけ返す。


 そして「少し壁側に寄るぞ、邪魔にならないようにな」と言って、少しだけ移動する。


 その間、華山がまたしてもボソッと「どの口が……」と言ったのを俺は聞き逃さなかった。

 幸い、志郎には聞こえてなかったようだが。


「で、違うのか?」

「あぁ。こういう神遺やつは古ければ古いほど、そして力を振るうときに知名度があればあるほど強い」

「じゃあやっぱ12星座が最強なんじゃねぇのか?俺でも知ってるし」


 言葉の途中で質問を投げてきた志郎。

 俺は少し呆れながら「最後まで話を聞け」と返して言葉を続ける。


「確かに星座としての力はそれで決まってくるが、俺達にはそこに色々なものが加わる。例えば、本人の力量や星座との相性だ。

 だから全部考慮すると最強の星座は断定できない」

「なるほどなぁ……。

 つまり、努力を怠るなってことだな?」

「まぁそういうことだ」


 志郎の質問に答え終わった俺は、今度こそ壁のキャプションを読もうとする。

 しかし、今度は華山が俺に質問をしてきた。


「ねぇ、12星座以外は変身できないの?」

「さぁな。星鎧が生成できた例は現在3件しかないから不明だ」

「真聡、由衣、俺ってことか?」

「つまり……1番最初の変身者って……」

「あぁ、俺だ。あと変身じゃない」


 さっきから気になってたが変身って。日曜の朝じゃないんだぞ。

 口うるさく訂正するべきかしないかべきか迷う。


 そこに「ねぇ〜!何話してんの!」と由衣が戻ってきた。


「こっちの話をしてたんだ。お前にも後で話してやる」

「そうなの?ありがと……って!そうじゃないでしょ!せっかく望結先輩が色々教えてくれてるのに!」


 由衣に文句を言われていると、見鏡先輩も「まだここにいたの?」と戻ってきた。

 

「あぁ〜……すみません!どんな感じにまとめるかって話をしてたら盛り上がっちまって……」

「もぉ〜……」

「何をまとめても自由なんでしょ?だったら強制はしないわ。私は星座について好きになってくれたら嬉しいけどね。だけど、あまり騒いだら駄目だから」


 それはそうだ。ここは公共の場所だからな。


 それに、秘匿原則的もある。

 周りはそこそこ人の声もあるし、一応小声でぼかしながら話したから問題はないだろう。

 だが本来は公共の場であまり話さない方が良い。


 ……そもそも、()()()()()をしてない俺が悪いんだが。


 俺がそう考えている一方、由衣は「望結先輩……!」と感動の声を上げている。


 ……どこに感動したんだ?


「あの!続きなんですけど、蛇座について教えてください!」

「もちろん。でも蛇座自体には神話はないの。それはないわけじゃなくて、蛇座が蛇遣い座の1部だったからよ。


 蛇遣い座はギリシャ神話に出てくる、蛇のおかげで薬草の効果を知ったアスクレピオスって人がモチーフなの。その人は名医として腕と名を挙げていって、ついには死者を蘇らせれるようになったの。

 でもそれが死の国の神であるハデスの怒りを買って、最高神であるゼウスの雷によってアスクレピオスは殺されてしまったの。


 その後、医師としての腕が認められたアスクレピオスは星座として認められて星座になった。だいたいこんな感じよ」


 星座の背景の神話の話までするすると話せるとは。

 見鏡先輩の知識量は恐ろしいな。


 そう思っていると、志郎が「なんか……可哀想な星座なんすね」と呟いた。


 そして智陽は「……何で蛇遣い座と蛇座に分けられたんですか?」と質問を投げた。


「それがねぇ……不明なのよ。プトレマイオス48星座が決められたときには既に分けられていたから……」


 そこで俺は1つの可能性が頭をよぎった。


「あれだろ。大きすぎるからだろ」

「大きすぎる?」

「アルゴ号座が1922年の国際会議のときに4つの星座に分けられている。それと同じ理由で分けられたんじゃないか」

「そうなの?」

「陰星君よく知ってるね!

 でもそれだったらアルゴ号座もプトレマイオス48星座にあるのよ。なのに分けられてないのは不思議じゃない?」


 ……そう言えばそうだった。完全に頭から抜け落ちていた。

 俺は少し恥ずかしい気持ちを抑えながら「……それも……そうですね」とだけ呟く。


 しかし、俺の失言を見鏡先輩は気にしていないようだった。


「でもアルゴ号座が分けられた話なんてよく知ってるね?本当にテストの点数悪かったの?」

「悪くなかったですよ、俺は」


 そう口にした瞬間。

 由衣に見鏡先輩から見えない角度で腰の上たりを突かれた。


 そして由衣は慌てながら口を開く。


「まー君は課題出てないんですけど、私が心配だって言ってついてきてくれたんですよ!」


 一言も言ってないが?

 というかお前に半分無理やり連れてこられたんだが?


 言い返したいが、ここで言い返すと確実に喧嘩になる。


 ……仕方ない、黙っておくか。


 そんな俺を置いて、見鏡先輩は「あら、仲良いのね」と言ってきた。


「はい!幼稚園の頃からの仲だもんね〜!」


 そう言いながら由衣は俺の顔を見ている。


 笑ってはいるが……珍しく怖い笑顔だ。

 俺は仕方なく「……そうだな」と返す。


 すると由衣は少し嬉しそうに笑ってる。いつもの笑顔だ。

 ……よくわからん。



 そのとき、「あぁ、望結。今日も来ていたのか」という声が聞こえた。



 振り返ると、そこには科学館の学芸員の男性が立っていた。

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