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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
4節 科学館での出会い
52/218

第051話 失礼しました!

後ろの話の文字数の都合上、第050話の1番後ろの部分を第051話の頭に変更しました。

ご了承ください。

「結構並んでるなぁ〜」

「ね〜。やっぱり休みの日だからかなぁ?」

「雨が降ってるから、行く場所なくて来た人もいるんじゃない」


 科学館に着いた俺達は、プラネタリウムの入場券を購入するために列に並んでいた。


 そして3人が話している通り、購入列はかなりの人だ。

 数分は待つことになりそうなのが容易に想像できる。


 暇な俺は、なんとなくチケット売り場の上のモニターを見る。

 モニターには3種類の上映内容が表示されている。


 そこで俺は、もう1つ大事なことを教えてもらっていないことに気がついた。


「……今から何を見るんだ」

「12星座の導きってやつ。今後の参考になるかなと思って」

「そうそう!見たら勉強になるかなって!」

「俺も由衣に誘われて『ちょうどいいな』ってな」


 ……こいつら、向上心が凄いな。


 そして由衣(ゆい)志郎(しろう)はまた雑談に戻った。

 一方、俺と華山(はなやま)は会話をせず、順番が来るのを待つ。


 列は少しずつ動いて、俺達も少しずつ前へ進む。


 その途中、俺は足元に何か落ちていることに気がついた。

 拾い上げてそれが何か確認する。


「これは……」

「生徒手帳、だね。しかも星芒高校うちの」


 落ちていたのは深い青色に星芒せいぼう高校と書かれているパスケース。

 学校で生徒手帳と学生証を入れるために配布されたものだ。


 そのとき。俺たちが何か話していることに気がついたらしい。

 前で喋っている2人が振り向いてきた。


「どうした?」

「それ……生徒手帳?」


 そう聞いてくる2人に俺は「あぁ、今拾った」と返す。


「え……中を見て名前とか確認したほうが良いんじゃない?」

「個人情報だろ。こういうのは、受付に渡して任せれば良いだろ。俺たちがすることじゃない」


 そう返すと、由衣は「それはそうだけど……」と言ながら前を向いた。

 志郎が何やらフォローしている。


 チケットを買うときに「落とし物です」と届ければいいだろう。


 そんなことを考えながら、俺は順番が来るのを待つ。


 そしてようやく、もうすぐ俺たちの番というとき。

 何やら受付が少し騒がしくなった。


 少しだけ聞こえてくる声によると、どうやら購入しようとしてる人が何かを無くしたようだ。


 同時に由衣がこちらを向いた。

 しすて「もしかして……それじゃない?」と俺が持つ落とし物の生徒手帳を指差そた。


「さぁな」

「さぁな。じゃないでしょ!ちょっと貸して!私が行ってくるから!」


 そう言い切るやいなや。

 由衣は俺の手から生徒手帳を取り、列を抜け出していった。


☆☆☆


「やっと買えたね!」

「だな!けどあと少し時間あるよな……どうする?」

「どうしよっかぁ……」


 やっとプラネタリウムのチケットが買えた。

 由衣と志郎のそんな話を聞きながらも、とりあえず俺達は受付横の出口から出る。


 俺達は少し移動しながらどうするかを話し合う。

 俺は別にただ待ってるだけで良いと思うんだがな。


 しかし由衣は「ショップ見ない!?」と言ってる。


 ……お土産ショップを見るなら最後だろ。


 そこに、1人の女性が「あの……」と呟きながら近づいてきた。

 それに気が付いた由衣が「あ!さっきの!」と言葉を返す。


 ……あぁ、さっき受付で聞こえてきた話の人か。

 そういえば戻ってきた由衣が「学生証は返せたよ!」と言ってたな。

 この人が持ち主だったのか。


 そして由衣は続いて「どうしたんですか?」と尋ねる。


「お礼がちゃんと言えてなかったので。さっきはありがとうございました」


 そう言って頭を下げる女性。

 低い位置のツインテールでメガネを掛けていて、年齢は俺達と同じぐらいだろうか。


「いえいえ!私は届けただけで、拾ったのはこの人なんで!」


 俺は由衣に腕を引っ張られて女性の前に出さられる。

 「いっそのこと由衣が拾ったことにしとけよ……」と言いそうになる。


 一方、女性は気にせずもう一度お礼を言いながら頭を下げる。


「ところであの手帳……星芒高校のですよね?」

「えぇ。……もしかして皆さんも?」

「はい!1年の白上しらかみ 由衣ゆいです!」

「俺も同じく1年で、平原ひらはら 志郎しろうって言います!」


 何故自己紹介が始まっているんだ。

 別に渡すものは渡したからそれだけでいいだろ。


 心のなかで今の状況に文句を言っていると、由衣に肩を叩かれた。


「ほら!あとはまー君だけだよ?」

「……華山は」

「もうしたけど」


 ……完全に聞いていなかった。

 そしてあまり人との繋がりは増やしたくないが……ここで逃げるのは失礼だろう。


 退路はないと悟った俺は「同じく1年の陰星いんせい 真聡まさとです」と名乗る。


「私は2年生の見鏡みかがみ 望結みゆ。みんな後輩なんだ。よろしくね」

「あ……先輩だったんですね!失礼しました!」


 そう言いながら由衣は頭を下げると共に俺の背中を押す。


 俺は「やめろ」と言いながら由衣の手に抵抗する。

 しかし由衣は「流石に先輩にその態度は駄目だって!」と諦めず押してくる。


 そんな俺達を見て、見鏡先輩は少し笑いながら口を開いた。


「私は上下なんて気にしないから、そんなことしなくていいよ。

 ところで、みんな星座が好きで見に来たの?」


 見鏡先輩の言葉で、ようやく由衣は俺から手を離した。俺はすぐに姿勢を戻す。

 由衣も続いて頭を上げる。



 しかし、俺達4人は言葉に詰まった。



 星座が好きだからというよりは、戦うために必要だから来た。

 恐らく全員が同じ理由だろう。


 しかし、それを言うのは避けた方が良いというのもまた、全員が理解しているらしい。


 だが何も言わないのは失礼なことぐらいわかる。

 ……何と言葉を返すべきか。


 悩んでいると、由衣が「あ、それは」と口を開いた。


「好きってのもあるんですけど、私達理科の中間テストで点が悪くて……。

 それで『補習として何か調べて提出しろ』って言われたので、星座について調べて提出しようかなって思ったんです!」


 咄嗟に出た言い訳としては悪くないと思った。


 しかし、俺まで点数が悪かったような言い方をされたことは少し不満だが。

 だがまぁ、見鏡先輩は納得しているようなので良しとするか……。


 その時、館内放送のスピーカ音が聞こえてきた。


『只今より、プラネタリウム「12星座の導き」の入場を開始致します』

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