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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
4節 科学館での出会い
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第050話 一緒に行かない?

「今日も雨だね〜」

「……そうだな」


 そんな会話をしながら、雨が降る通学路を傘をさして歩く。


 体育祭も終わり6月下旬となった。

 この街にも梅雨前線がやってきたのか、ここ数日の天気はずっと雨だ。


 由衣ゆいとはいつの間にか、毎朝一緒に学校に行くようになった。

 拒否してもどうせ来るやり取りは再会したときにやったので、もう何も言うまい。


 俺は由衣が振ってくる雑談に、それなりに相槌を打ちながら通学路を歩いていく。


 いつも通り、20分ほどかけて学校に辿り着いた。

 大半の生徒が登校する時間なので、俺達と同じ制服姿が沢山目に入る。


 そんな人波にのまれながら、校門から学校の敷地内に入る。


 そして下駄箱についた俺達は傘を閉じ、靴を履き替えて教室へ向かう。

 しかし、ようやく着いた教室はいつもと違うところがあった。


「なんでお前が俺の席に座ってる」

「おはよう陰星いんせい君。借りてるよ」


 そう。華山はなやま 智陽ちはるが窓際の俺の席に座ってスマホを見ていたのだ。


 「いや、自分の席に座れよ」と俺は言葉を返す。

 すると「だって座られてるから」と言葉と共に、華山は自分の席を指さした。


 華山の席に視線を向けると、確かに男子生徒が座っていた。

 見ない顔なので恐らく他クラスの生徒だろうか。


 だが、この席は俺の席だ。

 俺が来たからには返して欲しいのだが。


 どう追い出そうか考えていると、鞄を自分の席に置いた由衣がやってきた。


「智陽ちゃんおはよ〜……何してるの?」

「席が座られてるから借りてるの」


 すかさず「いや返せよ」と言うが、華山は「もうすぐ朝礼なんだし、それまでは貸してよ」と立つ気配はない。


 そして由衣はそんな俺達を気にせず、自分が気になったことを口にする。


「ところで、智陽ちゃん。何見てるの?」

「プラネタリウムの上映スケジュール」

「プラネタリウム行くの!?私も見ても良い?」


 そう言って由衣は華山のスマホを覗き込み、楽しそうな声で色々と質問している。

 華山は以外にもきちんと話をしている。


 「由衣の席に行け」と言うが、残念ながらその声は2人には届いていないらしい。


 俺は諦めて自分の机の前に周り、何となく窓の外を見る。


 その数分後。

 由衣が「ねぇまー君」と話しかけてきた。


「プラネタリウム、一緒に行かない?」


☆☆☆


「プラネタリウムいつぶりだろ~!楽しみだな~!」

「その話何回するんだ」

「いいじゃん!それだけ楽しみなの!」


 そんな会話をしながら、俺は雨が降る大都会のロータリーを眺めている。


 プラネタリウムに誘われた週の休日。

 俺達は星雲市せいうんしから数駅離れた大都会の駅で待ち合わせをしていた。


 由衣が既にいるのは、何故か俺を家まで迎えに来たからだ。だから一緒に来た。

 そして今、「お待たせ」という声と共に華山が現れた。


 「全然待ってないよ!」と返す由衣。

 まぁ、2本前の電車で来たんだが。


 ようやくメンバーも揃ったので、俺は「行くぞ」と呟いて、傘の留め具を外す。

 そして、雨が降る街に足を踏み出す。


 しかし、由衣に肩を掴まれ止められた。


「ちょっと、まだ揃ってないって!」

「話をした時はこの3人だっただろ」

「もう1人来るんだって」

「いや聞いてないが」


 本当に聞いていない。

 俺は日時と待ち合わせ時間しか聞いていないぞ。


 だからこの3人だと思っていたが……。


 肝心の由衣は「あれ?」と首を傾げている。


「でもまぁ、まー君は知ってる人だから!問題なし!」


 何が「問題なし!」だまったく。


 残る1人……俺が知ってる人で由衣が誘うのなら……日和ひよりか?


 いや、日和は華山とあまり面識がない。

 そう考えると……遠足で同じ班だった長沢ながさわ 麻優まゆか?


 そう考えていると、由衣が「こっち〜!」と叫び出した。

 そして現れた最後の1人は予想外の人物だった。


「俺が最後か!悪い待たせて!」


 現れたのは平原ひらはら 志郎しろう

 ……いや、華山はこいつを知らないだろ。何故こいつを呼んだんだ?


 しかし、その間にも由衣は傘を開いて「しゅっぱ〜つ!!」と雨が降る街へ歩き始めている。


 置いて行かれる訳にも行かないので後を追いかける。

 すると華山が「ねぇ」と小声で話しかけてきた。


「聞きたかったんだけどさ、平原 志郎ってあの噂の……」

「同級生を一方的に殴ったってやつか」

「そう。あれ本当なの?」


 やっぱりかなり噂になってるんだな。

 だが、俺がすべてを説明していいものなのか。


 しかし、志郎の名誉的には否定した方が良いだろう。

 俺は言葉を選びながら「いや」と口を開く。


「あれはだいぶ誇張されたやつしい」

「そうなんだ」

「……あいつは理由なく相手を殴る人間じゃない。そこは俺が保証する」

「へぇ。陰星君がそこまで言うとは」


 そう呟いた華山は、少し含みがあるように感じた。


 「なんだ」と言葉を投げるも、「別に?」と返された。

 そこから華山は口を開かない。


 ……何が言いたいんだこいつ。


 だがこれは聞いても言わないやつだろう。

 諦めた俺は雨音に負けない声で、別の疑問を少し前を歩く2人に投げる。


「何で志郎を誘った」

「え、来たら駄目だったか?」


 ……また違う風に取られてしまった。

 俺はすぐに「違う」と否定の言葉を返す。


「華山と志郎はほぼ初対面だろ。由衣、気まずさとか考えなかったのか」

「確かにそうだけど……でも、これからは志郎君も戦うんだから、智陽ちゃんのことも知っていた方が良いかなと思って」

「……つまり平原君が3人目?」


 華山の言葉に、志郎は「3人目……」と呟きながら足を止めた。


 ……華山は既に3人目が現れていることを知ってるんだな。目撃情報とかを見たのだろうか。


 そして志郎は追いついた俺に小声で「華山さんはそのことを知ってるのか?」と聞いてきた。


 気を遣ってくれているようだが、華山は澱みや堕ち星については知っている。

 なので俺は普通の声量で言葉を返す。


「とあることから、澱みや堕ち星の出現情報を伝えてくれることになった。

 勝二しょうじさんのときも情報を伝えてくれたのが華山だ」


 その返事を聞いて、志郎は「あぁ~!そうだったのか!」と納得の声を上げる。

 そして、俺の隣にいる華山の前に移動した。


「あのときはありがとうな!そしてこれからよろしくな!」


 華山は戸惑いながら「よろしく。あと呼び捨てでいいから」と返す。


「おう!よろしくな、智陽!」


 そう言った後。

 志郎は再び由衣の隣に戻って、雑談をしながら歩き始めた。


 ……由衣はしっかり考えてこのメンバーにしてたんだな。


 楽しいこと最優先だった由衣では……流石にもうないか。高校生だしな。


 しかし、俺はその後「また陽キャが増えた……」と華山が小さく呟いたのを聞き逃さなかった。

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