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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
第1章 1年生  1節 再会
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第005話 それでも

 私は今、目の前の状況が理解できない。凄く混乱している。

 答えは単純なはずなのに。


 ようやく再開できた幼馴染の陰星いんせい 真聡まさとことまー君は、昨日私達を襲ってきた泥人形をやっつけてくれた鎧人間の正体だった。


 うん。本当に単純。

 だけど私の頭は「わからない」と言っている。


 なんて話しかけたらいいのかわからない。言葉が出てこない。


 すると、まー君が先に言葉を発した。


「なんでお前がここにいる」


 さっきの言い争いのときよりも明らかに怒っている声。

 私はその圧に少し押されながらも言葉を返す。


「い、いや…別にまー君をずっとつけてたとかじゃないの!ただ、また泥人形達を見かけてどうしても気になっちゃって…」


 考えが纏まらないまま言い訳をしていると、ひーちゃんが私のことを呼びながら追いついて来た。


「大丈夫……え、な、なんで真聡がここにいるの」

「また日和ひよりも一緒かよ」

 

 まー君はため息をついた後、黙ってしまった。


 私達2人も言葉が出ない。状況がまだ理解しきれてない。

 なんて言葉をかければいいかわからない。



 だけど、1つだけ。絶対に言いたいことがあった。



「え、えっと…昨日は…その…助けてくれてありがとう」

「別にお前達だから助けたわけじゃない。」


 冷たい。

 私が覚えているまー君なら「困ってる人を助けるのは当たり前」とか「お礼を言われることはしてない」って言ってくれる人だった。



 それも、笑顔で。



 ひーちゃんの言う通り、もうあの頃のまー君じゃないのかもしれない。



 考え込んでいる私の横で、ひーちゃんがまー君の態度や言動に怒って言い合いになってる。

 でも、そんなことしている場合じゃない。



 私はただ、昔みたいに仲良くしたいだけなのに。



 言い合いなんてしていたらどんどん遠ざかっていく。



 まー君の本心を知りたい。拒絶されててもいい。

 でも今、私の中の疑問をぶつけないと、もう2度と話せない気がした。



 私は「ねぇ!」と大きな声を出し、2人の言い合いを止める。



 2人が私を見る。私は言葉を続ける。


「まー君が私達を拒絶するのってさ、さっきのことが関係あるの?あの泥人形はなんなの?それにあの鎧の姿も!」

「お前達は知らなくていい」

「そう言うってことは私達を遠ざけることと関係あるってことだよね!?」

「お前達には関係ないって言ってるだろ!」


 彼のその叫びには悲痛さを感じた。


 私は「鈍感」とか「マイペース」ってよく言われる。


 でも、今のは彼が触れて欲しくない傷に私達が触ろうとしている。

 それを拒否する叫びだと私でも思った。


 私はまた言葉に困ってしまった。

 人には触れて欲しくないことがある。それに触ってはいけないことはわかる。



 でも、目の前で辛そうに見える友達をほっておいていいのかな。



 私が悩んでいるとまー君が口を開いた。


「お前達は、普通の世界で生きてればいいんだよ」


 絞り出すようにそう言った後、まー君は去っていってしまった。

 私は結局、なんと声をかければいいかがわからなかった。


☆☆☆


 空の色がどんどん暗くなっていく中、私達は家への道を歩いてる。


 私の足取りは重かった。


 その理由はショックからなのか。まだ頭が混乱しているからなのか。

 そんな私に合わせて、ひーちゃんもゆっくり歩いてくれていた。


 またポツリと、私の口から本音が漏れる。


「なんて言ったら良かったのかな…」


 少しだけ前を歩いていたひーちゃんが振り返って、私を見る。


由衣ゆい、まだそんなこと……」

「でもさ、まー君はあの何かと戦ってるんだよ?それをほっといていいのかな……」

「……でも、私達には何もできないよ。あいつの関わるなって言葉も間違いじゃない」


 確かにそう。私達は何も知らないし、あの泥人形と戦う手段もない。



 きっと足手まといにしかならない。



 まー君の言う通りこのまま関わらない方が正しいのかもしれない。



 だけど、このまままー君と関わらないことが正しいとは、私には思えない。


「……それでも、私達にできることがあるかもしれないじゃん」

「人を襲う何もわからないやつら相手に私達に何ができるの。下手したら死ぬかもしれないことに首を突っ込むの?」

「それでも、私はまー君をほってはおけない。せっかく再会できたのに、このままだなんて私は嫌だ。それに、戦えなくても助けれることがあるかもしれないじゃん!」


 ひーちゃんと目が合う。


 お互い言葉を発さず、目もそらさない。



 春の夜風が、頬を撫でる。



 そして、先に口を開いたのはひーちゃんだった。


「……わかった。でも危ないことはしないでね」

「えっと……なんか……ごめんね?」

「別に。私だって真聡に文句言ってやりたいし」


 私はその言葉にくすっと笑ってしまった。

 するとひーちゃんも笑ってた。


 少し笑って、スッキリした私達はまた家への道を歩き出す。


「あ、でも私部活に入るつもりだから、毎回は付き合えないから」

「うん。流石に毎回付き合ってもらうのは悪いから……大丈夫!」

「そう。でも私が居なくて大丈夫?ちょっと心配」

「ねぇそれどういう意味〜!?」


 私はひーちゃんを後ろから軽く押す。

 そして私達はまた笑い出す。


 もう私達の足取りは重くなかった。


☆☆☆


 あれから数日。


 ああは言ったけど結局私になにができるかのか。

 そもそも、なんて話しかければいいかわからない。


 だからまー君とは話せずにいた。


 というか、休み時間とか放課後とかに話しかけようかなと思って見るたびにまー君は見当たらない。


 そして今日も今日とて、まー君はホームルームが終わるとすぐに消えてしまって見つからない。

 なので私は諦めて、仲良くしている田渕たぶち 桜子ようこちゃんと他に2人の同じクラスの子と部活見学をしていた。


 一通り見終わって、廊下を4人で歩く。

 すると、桜子ちゃんが口を開いた。


「だいたいは見て回ったけどさぁ〜。結局みんな何部に入る?」

「私……やっぱり水泳部に入ろうと思う」

「私は帰宅部一筋~~」

「2人とも連れないなぁ……

 あ、由衣はどうする?私と一緒にダンス部はいらない?」

「あ、え、えーっとぉ……まだちょっと決めきれないかなぁ……?」


 水泳部に入ろうとしているのは永川えがわ 佳奈かなちゃん。

 なんでも、県大会に出た入海いりうみ 瑠夏るか先輩に憧れているとか。


 そして帰宅部一筋なのは荻野おぎの 乃々ののかちゃん。

 中学も部活に入ってなかったらしい。

 それなのに、一緒に見て回るのは桜子ちゃんに掴まってしまったから。


 あ、桜子ちゃんはダンス部一筋らしい。

 「中学もしてたからその延長」とのこと。


 もう1人良く喋る、長沢ながさわ 麻優まゆちゃんって子もいるんだけど……。

 「私、部活に入らないつもりなんだよね。家の手伝いもあるし」と言って帰ってしまった。


 で、私。折角だし何かに入るつもりではある。

 でも結局、部活見学の間も色々考えてしまって、あんまり話を聞いていなかった。

 桜子ちゃんの誘いで部活見学をしてるけど……やっぱりまー君のことが気になって仕方がない。



 3人はこの後どうするかを話している。


 ……私はこの後どうしよう。

 もう1回部活を見て回るか。それとも今日はもう帰ろうかな。



 そのとき、校内で悲鳴が聞こえた。



 私達は何が起きたかわからず、少し固まる。



 でもすぐに我に返った私は、とりあえず窓の外を見てみる。



 すると、虫人間が誰かを襲っているのが見えた。


 ……でも今の私には何もできない。

 まー君のアカウントを知らないから、メッセージでこの状況を知らせることすらも。



 ……でも、ここで待っていたらまー君がまた戻ってくるかもしれない。



 だとしても、まー君になんて声をかけよう?


「ちょっと、由衣?何してるの?逃げようよ!」


 私はやっと桜子ちゃんが声をかけてくれていることに気づいた。

 考えていて気づいてなかったみたい。


「何……あれ?」

「わからない……けどみんなは帰った方がいいと思う。」

「由衣ちゃんは帰らないの?」

「私は……そう!用事思い出したの!ごめんねみんな!また明日!」


 そう言い残して私は走り出す。

 考えていても仕方ない。行動しないと何も始まらない。


 私に何ができるかわからないけど、まー君に会わないと何もわからない。

 だって、まだ何も教えてもらってない。

 だからもう一度まー君と話したい。

 それが今の私が辿り着いた答え。


 

 今いるのは2階。



 ここだと戦いの影響とかで危ないかもしれない。

 とりあえず私は階段を駆け上がって、校舎の上の階に行くことにした。

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