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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
3節 戦えない誰かのために
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第046話 強さの証明

「いや、俺が勝二兄(しょうじにい)と戦う」

「え、大丈夫!?」

「あぁ。ずっと一緒に親父の稽古受けてきたんだ。動きぐらいわかる。

 だから真聡(まさと)、澱みの方を頼むわ」

「……無理はするな」

「おう」

 

 俺の返事を合図に俺達は3人は飛び出す。


 俺は邪魔する澱みは吹き飛ばしながら、勝二兄目掛けて一直線に突っ込む。

 そして間合いに入ると同時に拳を叩き込む。


 けど、弾かれてしまった。

 そのお返しのように拳が飛んでくる。


 俺はそれを何とか叩いて弾く。


 そして、そこから打ち合いが始まった。

 拳を入れようとすると止められ、拳が飛んでくるので止める。蹴りも同じく。



 俺が勝二兄の動きを見慣れている。


 つまりそれは、勝二兄も俺の動きを見慣れているということだ。

 お互いに一撃も入らない打ち合いが続く。



 そんな状況で、先に動いたのは勝二兄だった。


 少し距離を取ってから、またあの足癖で距離を詰めてきた。


 あの足癖は勝二兄に相手してもらってるときに「俺みたいな悪い癖は付けるなよ」と言われてきた。

 だから俺はとっくに見切ってる。


 飛んでくる拳を避け、反撃の拳を叩き込む。



 しかし、その一撃は止められた。



 突き出した腕が、掴まれていた。



「誘ッタンダヨォ!!!」


 その叫びと共に、俺はそのまま投げられる。


 身体が宙を舞って、地面に叩きつけられる。

 そこに、追撃の爪の斬撃が飛んできた。


 俺はなんとか地面を転がって、斬撃を避ける。



 勝二兄とは、何度もお互いを練習相手にした仲だ。



 だけど、今は全然違う。



 こんなに殺意を感じるような攻撃は、受けたことがない。



 なんで、勝二兄がこんな風になってしまったのか。



 「一緒に警察官になるか?」と言ってくれた勝二兄が、人を傷つけるようなことをするのか。



 なんで勝二兄は空手をしているのか。



 怪物の正体を確かめた日から、俺はずっと考えていた。



 だけど、どんなに考えてもわからなかった。


「なぁ。勝二兄にとって、空手ってなんだよ。この力ってなんだよ」

「俺ニトッテ空手ハ……強サノ証明……コノ力モ……。

 俺ハオ前ヲ超エテ……俺ガ1番強イト証明スル!!!!」

「証明して何になるんだよ!勝二兄にとって空手が強さの証明するためのものなら、何で空手始めたんだよ!!何で強くなろうと思ったんだよ!!!」

「空手ヲ…始メタ理由……?アァ…?アアアアアア!!!!」


 勝二兄は突然頭を抱えて叫びだした。

 そして、俺めがけて突っ込んでくる。


 だけど、勝二兄からは攻撃する意思は感じられなかった。


 今なら、止められるかもしれねぇ。


 俺は両肩を掴んで勝二兄を止める。

 名前を呼びながら揺すってみるが、叫び続けている。


 それどころか、俺を振り払って誰もいないところに向かって攻撃をし始めた。



 俺に何ができる?



 どうしたら良いんだ?



 考えてもわからない。

 こういうとき、自分の頭の悪さが嫌になる。



 ……いや。

 だったら、俺らしく突き進むだけだ。



 俺は地面を蹴って、勝二兄と距離を詰める。

 そして、腕を引く。


「勝二兄!!!!目ぇ覚ませ!!!!」


 俺は気合を入れて、思いっきり叫びながら右手で勝二兄をぶん殴る。


 拳は、綺麗に勝二兄の頬に入った。

 勝二兄は吹き飛び、地面を転がっていく。


 勢いが止まったとき、勝二兄から黒い煙が抜けて元の姿に戻った。


 俺は走って駆け寄ろうとする。


 そこに「待て。まだだ」という声が飛んできた。

 そして、横から真聡が俺の前に出てきた。


 澱みは片付いたみたいだ。


「まだってなんだよ!?」

「最後の仕上げが残ってる。まだ近づくな」


 前に説明されたが、いまいちわかっていない。

 だが、今は真聡を信じて見守るしかなかった。


 そんな真聡はしゃがんで、左手を地面に付けた。

 すすると勝二兄は地面から生えてきた無数の草に縛られ、地面に固定された。


「おい!?何すんだよ!」

「黙って見てろ」


 信じると思ったけど、生身の勝二兄を縛り付けるのはどうなんだよ。


 ……だけど、今言い争っても無駄なことぐらいはわかる。


 次に真聡は由衣(ゆい)に「やってみてくれ」と言った。

 そんな由衣は頷いた後、杖を両手で持ち言葉を紡ぎ始める。


「眠れ。眠れ。苦しみも、憎しみも、恨みも、その力さえも。

 いつかあなたの辛い出来事が、悪い夢だったと笑える日が来る、そのときまで」


 そして由衣は杖を掲げ、下ろす。

 すると、由衣の上で大きくなっていた羊のようなものが、勝二兄の上に落ちた。


 俺は遂に疑問と驚きと心配の混ざった気持ちが我慢できなくなった。


「いやいやいや!!!おいおいおいおい!!!!どうなってんだよ!?」

「俺にも詳しい原理はわからん。だか、これで勝二さんはもう堕ち星になれなくなるはずだ」

「はぁ……?」


 理解ができないが「ほら行くぞ」と言われ、俺は真聡と一緒に勝二兄の元へ行く。


 俺達よりも先に由衣が勝二兄に近づいていて、しゃがんでいた。

 そして何かを拾い上げ、真聡に渡した。


 それは、石板みたいな四角形のモノだった。


「それって……」

「こじし座の力の結晶、プレートだ。どうやら上手くいったようだ」

「うん!これで勝二さんはもう大丈夫……だよね?」

「多分な」

「なんでそんな曖昧なんだよ……」


 けど、勝二兄の顔を見るとこの前見た時よりは顔色がマシになっていた。



 本当に元に戻った……ってことことか?



 そのとき。

 サイレンの音が聞こえ始めた。


 同時に真聡が「警察と救急車が入ってくる」と口を開いた。


「休んでる暇はないぞ。

 とりあえず、星鎧を消滅させて元の姿に戻れ」


 気が付くと、真聡は高校のジャージ姿に戻っていた。

 隣にいる由衣も。


 俺もギアからプレートを抜き取って、星鎧を消滅させる。



 こうして、俺の初めての戦いが終わった。

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