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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
3節 戦えない誰かのために
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第043話 俺も2人みたいに

「もう駄目……動けない……」


 そう呟きながら由衣ゆいは靴も脱がずに道場の玄関で倒れ込んだ。

 「もう少し人目を気にしろ」と言いたいところだが、靴を履いたままの足は土間部分に出されているので今は何も言うまい。


 むしろ戦いが終わってから平原道場まで、よく頑張って歩いて戻ってきた。

 労いたいが、俺も俺で限界だ。


 俺は口を開かず壁に体重を預けて座り込む。


 そんな俺たちを心配して、奥から平原ひらはら 志郎しろうの母が気にかけてく。

 とりあえず俺達は差し出された飲み物を受け取り、口にする。


 疲れているからか、いつもよりも身体中に水分が染み渡る気がする。


 そして、ようやく頭がはっきりしてきた。


 以前ほどではないが、今日も魔術を使いすぎて疲労感が凄い。

 帰って休みたいのが本当のところだ。


 だが、休んでいる暇はない。


 戦いの現場の後始末は超常事件調査班の人に任せれるからいいが、こっちは俺にしかできないことだ。

 俺は疲労感を振り払って立ち上がる。


 そして靴を脱いで道場に上がり、先に中に入った平原 志郎に声をかける。


「ん?なんだ?」

「お前、左手の甲を見せてみろ」

「お?おぉ……ってなんだこれ!?」


 自分の左手の甲を見て驚きの声を上げる志郎。


 驚いた理由は、左手の甲に突然普通の人間にはない模様。星座紋章が刻まれていたからだ。


 そして刻まれている文様を見て、先程の戦いの違和感も解決した。

 思わず「この形……やっぱりそういうことか……」と言葉が口から漏れた。


 そこに「なになに、どうしたの?」と由衣が話に入って来た。


「あ!志郎君も選ばれたんだ!」

「え、なんだ?どういうことだ?」


 そしてそのまま会話をしている。

 由衣は説明に困っていると言った方が正しいかもだが。


 ……というか復活が早くないか?

 いや、ちょうどいいかもしれない。


 俺は由衣にも言って、混乱している志郎に俺達2人の左手の甲を見せる。


「これは……同じ……なのか?」

「そう!……で、まー君。これは何座何でしょうか……?」


 首を傾げる2人。


 ……既に色々教えている由衣は、黄道12星座ぐらいすぐに分かって欲しいのだが。

 行っても仕方ないことを考えながらも、俺は「これは獅子座だ」と答えを口にする。


「え、獅子座って勝二しょうじさんじゃなかったの!?」

「どうやら違ったらしい。へび座の堕ち星が帰る前に『こじし』と呼んでいたからな。恐らくこじし座で間違いないだろう。

 それならあの速さも、術を耐えられたのも納得がいく」

  

 詠唱で威力を上げた火魔術を喰らわせた。


 なのに、堕ち星は倒せなかった。


 星座を絞り、対象を指定したはずなのに耐えられていたのがずっと不思議だった。


 それも相手が獅子ではなく、こじし子だったら納得がいく。

 あの速さもだ。恐らく固有能力だろう。


 こじし座は黄道12星座でも、トレミー48星座でもないため星座の自力はそこまでないだろう。


 しかし、そこに本人のパワーや空手の技術が乗ってくる。

 獅子座ではなかったが、厄介な相手であることには変わりなさそうだ。



 得られた情報を整理していると、平原が「え、つまりどういうことだ?」と呟いた。


 ……さっき言ったはずだが、わかってないのか?


「お前も選ばれたってことだよ。俺達と同じくな」

「それって……」

「そう!志郎君も私達と同じように戦えるってこと!良かったじゃん!」


 ……本当に良かったんだろうか。


 いや、今はそこはどうでもいい。

 それは俺が決めれることでも、関与できるでもない。


 それにしても、魔術の対象を絞ると対象以外には威力が下がる。

 これはどうにかせねばならない。


「それで志郎、どうだった」


 俺達の帰りを待っていたらしい大牙たいがさんが、ようやく口を開いた。

 志郎は大牙さんと向き合い、口を開く。


「……やっぱ、勝二(にい)があの怪物だった」

「やっぱりな。それで?」

「それで……俺も戦う力に選ばれたらしい。

 だから、俺も2人みたいに戦う。俺が、自分の手で勝二兄を止めたい」

「……そうか」


 大牙さんは口を開かない。

 志郎は俺達の方を向き、言葉を続ける。


「だから、俺も勝二兄と戦わせてくれ!この通りだ!」

「頭下げないで!?」


 頭を下げる志郎に由衣が駆け寄り、頭を上げさせようとしてる。

 しかし、志郎は動かずに俺の方に頭を下げ続けている。


 ……屋上で話したときに俺が怒ったことを気にしているのだろうか。

 だが、答えは《《さっき》》の叫びを聞いたときから決めていた。


 俺は志郎に近づき、右手で左肩を叩く。


「次がいつかわからない以上、急いでお前を戦えるようにする。休んでる暇はないからな、志郎」

「真聡……!あぁ!よろしく頼む!」

「やったね!これでちゃんと志郎君も一緒に戦えるね!」


 志郎はようやく顔を上げた。

 そして由衣とハイタッチしている。


 ……なぜ由衣がそこまで喜ぶ。


 そこに大牙さんが「志郎」と口を開いた。


「な、なんだよ」

「やるからにはしっかりやれよ」

「……わかってるよ」

「それと勉強の手を抜く理由にはするなよ」

「あぁ~〜〜!!!わかってるって!!!」


 その言葉に、志郎を除くこの場にいる4人は笑いだす。

 本人としては笑い事ではないだろうが、俺もなぜか笑ってしまった。


 由衣が志郎に「私も勉強苦手だけど頑張るから一緒に頑張ろ?」とフォローを入れている。


 ただ、笑いながらなので説得力はない。

 そんな2人のやりとりを見ていると、大牙さんが近づいてきた。


「真聡君。息子を、よろしく頼む」

「はい。任せてください」

「それと、君もまだ学生なんだ。あまりで無理をするなよ」


 その気持ちはありがたいが、どう返事をしたらいいか困る。

 俺はなんとか捻りだして、「……俺は、できることをするだけです」と返す。


 そこに今度は元気な2人が話に割り込んできた。


「なんだ?何の話をしてるんだ?」

「というかまー君!大変だよ!?」

「何がだよ」

「だって、志郎君に色々教えてないいけないでしょ?そして私たちも空手教わらないといけないでしょ?

 それに学校もあるし、何より体育祭の練習も始まるじゃん!つまり、これから凄く忙しくなるよ……?」


 元気2人組は何故か焦ってる。

 別に焦ることではないと思うのだが……。



 とにかく、こうして星座に選ばれた神遺しんい保持者が3人になった。

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