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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
3節 戦えない誰かのために
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第038話 教えさせてくれ

「それで、あれから何かわかったか」

「恐らく、堕ち星になったのは深谷ふかや 勝二しょうじで間違いないかと。数日前から行方不明になっているそうです」

「やはりそうか……」


 翌日放課後。

 俺と由衣ゆいは今日も平原ひらはら道場にお邪魔していた。

 大牙たいがさんが今回の堕ち星を倒すまでは、道場が空いているときなら毎日稽古をつけてくれるらしいとのこと。


 やはり何事も、その道のプロに教われるなら教わった方が良い。

 という訳で、遠慮なくその言葉に甘えることにした。


 そして今回の墜ち星を丸岡刑事に話したところ、他に被害は出ていなかった。だが、本人の捜索願が数日前に出ていた。

 このことから、俺は今回の堕ち星の正体は深谷 勝二だと考えている。


 しかし、動機に関しては何もわからなかった。

 次の被害が想定できない以上、気を張って特訓し続けることぐらいしか今の俺にはできない。



 稽古をつけてもらう準備をしていると、由衣が大事な質問をしてきた。


「ところでさ、今回の相手は何座なの?」

「……まだ絞りきれていない。ネコ科ではあるんだろうが……」

「ネコ科の星座って複数あるの?」

「3つだ。やまねこ座、こじし座、そして獅子座だ」

「獅子座って……星座占いにもあるわよね?」


 そう聞いてきたのは平原ひらはら 志郎しろうの母親。

 何やら飲み物が入ってるであろう大きなタンクのようなものを持って、道場に入って来た。


「はい。星座占い使われる12の星座の1つです」

「ちなみに私が牡羊座でまー君が山羊座なんです!」


 俺に続いてそんなことを話す由衣。

 そして、そこから何故か星座占いの話になっている。



 12星座。

 古くから存在し、現代でも知名度の高い星座。

 天球上の太陽が通る黄道に存在することから黄道十二星座とも言われる。

 俺の山羊座や由衣の牡羊座もその十二星座だ。


 たださえ力の強い星座の堕ち星。

 できるならもう2度と相手にしたくはなかったんだが…。

 しかし、なってしまったものは仕方ない。最悪を想定して動くしかない。


 そんなことを考えながらストレッチをしていると、由衣が俺の方を見て「そういえば……」と呟いた。


「12星座なんだから他にもあと9つあるよね?」

「残り9つは牡牛、双子、蟹、乙女、天秤、蠍、射手、水瓶、魚だ」

「ほぅ……残りはまだ見つかってないんだよね」


 由衣がそう質問したとき、また道場の扉が開いた。


「ただいま〜……おぉ由衣!悪いな遅くなっ……ってあ、陰星いんせい」 

「お帰り〜!体育委員の用事は終わったの?」


 平原 志郎本人が帰ってきた。体育委員らしく、今の時期は体育祭が近いため忙しいらしい。

 そのため、俺達は先に道場にお邪魔していた。


「あ〜……あ~……陰星?」


 気まずそうな声を出しながら近づいてくる平原。

 俺は「なんだ」と言葉を投げる。


 すると、平原は「その……この前は悪かった」と頭を下げた。



 だが、謝られる心当たりがない。



 とはいえ、適当に流すのは悪い。

 仕方なく「何がだ」と聞き返す。


 すると、平原は頭を上げて口を開いた。


「ほら。この前俺、屋上でお前を怒らせちまっただろ。あのときはお前がなんで怒ったかわからなかったんだ。

 けど、今ならわかる。つまり、お前達の力って怪物と同じような力なんだろ?

 ……優しかった勝二兄をあんな風に、見た目も牙とか爪が生えた怪物の姿にも変えちまう力。

 簡単に手にしたいって言っていいもんじゃないよな。悪かった。この通りだ」


 平原 志郎はそう言い切った後、また頭を下げた。


 

 これは、平原に謝られることではない。



 あのとき、悪いのは俺だ。



 いくらなんでもあの言い方は言いすぎた。



 ……まさか謝る前に謝られるとは思ってなかったが。

 だが先に謝られた以上、俺も謝るべきだ。


「頭を下げるな。……俺も、もっと普通に言うべきだった。悪かったな」

「じゃあ……これで仲直りだね!」


 後ろから由衣が俺の背中を軽く押した。


 そして、俺の前にいる平原は右手を出している。

 それ見た由衣は「ほ〜ら!」と言いながら、俺の右手を無理やり握手させた。


「だけど、俺にもお前に教えさせてくれ。直接戦えなくても、お前たちの役に立ちたいんだ」


 そう言った平原の笑顔は眩しかった。

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