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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
3節 戦えない誰かのために
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第036話 庇い合う

「で、由衣ゆい。他にも俺に言うことがあるんじゃないのか?」

「え、えっと……」


 最近、由衣の様子が変だとは思っていた。

 具体的には用事があると言って、俺が特訓すると声をかけても断ってくる。


 いや、それはそれで別に構わない。


 しかし、クラスのやつと遊ぶ約束があっても、俺が予定を聞いたら俺との予定を優先しようとする由衣が断ってくる。

 そのため、何か隠し事をしているとは思っていたが……。


「何故俺が2度と顔を見せるなと言ったやつと一緒にいるんだ?」

「それは……その……ごめん!!」


 由衣が勢いよく顔の前で手を合わせる。

 「パチーン」と皮膚がぶつかる音が辺りに響く。


「いや、陰星いんせい!由衣を責めないでやってくれ!」


 大声で会話に割って入ってきたのは平原ひらはら 志郎しろう


 数日前、怪物と戦う力が欲しいと言って俺達に話をしに来た男子生徒。

 正体がバレている以上、そのまま追い返す理由にもいかないと思って話だけは聞いた。


 話を聞いた感想としては悪くはなかった。

 こいつもまた善良よりの人間だと感じた。



 しかし、だからこそ危険だと感じた。



 人間とは簡単に本性までわからない。



 抑圧された心の闇などは、特に。



 それに知り合ったばかりの人間を信用することを、今の俺にはできなかった。


「何だ。お前が誘ったのか」

「あぁ。俺が体の動かし方とかを教えるから、怪物について教えてくれって頼んだんだ。だから悪いのは俺だ。由衣を怒らないでやってくれ!」

「いやいやいや!私が悪いの!私が怪物のことに教えるから、空手の身体の動かし方とかを教えてって頼んだの!だから志郎君は悪くいないの!」


 同じだが真逆の内容を口にし、揃って自分の顔の前に両手を合わせる2人。


 ……なんだこいつら。なんで庇い合ってるんだ。


 しかし、ほぼ同じ内容を提案し合うってことはまずありえないだろう。

 俺はため息をつきながら、2人に問う。


「どっちが先に頼んだんだ?怒らないから言ってみろ」

「いやそれ怒ってるやつじゃない!?」


 別に、俺に黙って平原と会っていたことに怒ってはない。それは由衣の自由だからだ。

 俺が問題視しているのは別の点だ。


 とりあえず、どっちが先か聞かねばならない。

 俺は口から出そうなため息を飲み込んで「どっちだ」と聞きなおす。


 すると由衣が「えぇっと……」と呟きながら下を向いた。


「私が先にお願いしました……」


 そして申し訳無さそうに手を挙げる。


 まぁ、予想通りだ。

 しかし、一応平原 志郎にも確認をしておこう。


「お前の発言が嘘で由衣が先に言ったんだな?」

「……おう。だが、由衣を責めないでやってくれ!白上h」


 言い訳は聞きたくない。

 それが俺が問題視している話と違えば尚更。


 俺は平原の言葉を無視して「由衣、お前どこまで話した?」と質問を投げる。


「えっとぉ……澱みと堕ち星については話した」

「他は」

「まだ話してない」


 俺の口からついにため息が漏れてしまった。


 由衣のことだ。きっと「空手を教われば澱みとの戦いにも役に立つんじゃないか」とでも考えたんだろう。

 実際この前も身体の動かし方に違いがあったし、威力も上がっていた。


 ある程度強くはなって欲しい。

 だが、あまり積極的に戦いに関わって欲しくはない。


 ……今考えることではないな。


「……ならいい。今回はな」

「ほ、本当?」

「怪物のことだけなら危険性を伝えるという意味もある。それに今日はお前がいたから堕ち星にすぐ対応できただろ。だからこの話はこれで終わりだ」


 あまり引っ張って、由衣のやる気が下がったら困る。


 俺的には神遺しんいの力である星鎧関係をむやみに喋られないならそれでいい。

 そして堕ち星が現れた以上、堕ち星の対処が先だ。


 俺はそのまま話題を変える。


「で、平原 志郎。お前が狙われている原因……いや、あの堕ち星の正体に心当たりは?」

「あ〜……いや、悪い。わかんねぇ。」

「そうか」


 目が泳いでいるように見えたが……知らないというなら仕方がない。


 しかし、そうなると困ったな。

 いや、平原 志郎の性格だとこれは無意識に恨みを買っていたタイプか?


 もしそうなら……相手を特定するのに時間が掛かりそうだ。


 俺が今後の動き方について悩んでいると、女性の声が住宅地に響いた。


「志郎!無事で良かった!」


 その声がしたのは由衣の後ろから。

 そして平原が「お袋!?」と叫んだ。


 由衣の後ろに居るのは俺達の母親の年代と思われる女性。

 言葉の通り、平原の母親だろう。


 そして、平原の母親は少し興奮した声で言葉を続ける。


「怪物は志郎を追いかけていくし、なかなか帰ってこないし、連絡もなくて心配したんだから!」

「あぁ……悪い」

「由衣ちゃんも無事で良かった。……あれ?さっきまでいなかったわね?友達?」


 平原の母親の視線がその言葉と同時に俺を見た。

 そして、平原はその言葉に対して「あぁ〜……友達……あぁ、友達!」と返した。


 凄く面倒なことになりそうな予感がした。

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