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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
2節 一緒に戦うために
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第025話 正義のヒーローみたい

 由衣ゆいの拳がはえ座に決まった。


 その一撃で生じた凄まじい衝撃波が辺りを襲う。


 はえ座を縛っていた草木魔術はその衝撃で消滅した。

 俺は代わりに土魔術で土壁を生成して、自分の身と後ろの警察官の人たちを庇う。



 衝撃波が収まり、土壁が崩れ消えていく。

 急いで状況を確認する。



 星鎧は消えているが、由衣は立っていた。

 どうやら無事のようだ。



 しかし、はえ座の姿はそこにはなかった。



 代わりに、由衣から少し離れた場所に青年が倒れていた。

 傍らにはプレートのようなものが落ちている。



 俺は痛む身体を押して駆け寄る。


 すると俺に気づいた由衣が「まー君!やったよ!」と言いながら嬉しそうに手を振ってきた。


「……どうなった?」

「私のあのパンチが決まったあと、小野君は元の姿に戻って《《あれ》》が飛び出したの」


 由衣が指さしてるのはプレートのようなもの。

 真ん中にははえ座が描かれている。


 ……いやこれ、プレートだな。


 つまり、堕ち星は澱みの力と星座の力を取り込むことで墜ち星の姿となっている……ということか?

 というか、それ以上に大事な疑問がある。


「由衣、そもそもどうやって人の姿に戻せた」


 そう聞かれた由衣は「え?まー君できないの?」と言いながら首をかしげている。


「出来ないから俺は苦労してるんだ。どうやった?」

「う〜ん……私夢中で戦ってたから……」


 何も参考にならない。


 だが、俺が元に戻せるように戦いは格段に楽になる。

 何とかしてヒントだけでも得なければ。


 必死に考えて、由衣が答えれて理由がわかりそうな質問を探す。


「……じゃあ最後、どういう気持ちで攻撃した」

「えっと………辛いことが悪い夢だったといつか思えたらいいなって……」


 悪い夢……牡羊座……羊………眠り?

 つまり……。


「……牡羊座の固有能力か?」

「え?」


 思わず口から考えていたことが出てしまった。

 しかし、可能性としては十分にありえる。


 星鎧が生成できるようになった今、牡羊座の固有能力が使えるようになっていてもおかしくはない。



 だが、もし牡羊座の固有能力なら俺には使えない。

 これから由衣の力を借りて戦わないといけない。



 ……少し不本意ではあるが、それはまぁ仕方ない。

 不死身のような戦いをするよりは、人を助けれる方を優先しないといけない。


 考え込んでいると、小さな女の子の「お姉ちゃん!ありがとう!」という声が聞こえてきた。


 由衣は「ん?」と呟いた後、声の主と視線を合わせるためにしゃがんだ。


 声の主はどうやら、さっき由衣が助けた女の子のようだ。


「お姉ちゃん、正義のヒーローみたいでかっこよかった!だから怖くなかったの!

 だから、ありがとうって言いに来たの!」

「そっか〜!ありがと!怪我はしてない?」

「うん!大丈夫だよ!

 あ、ママが呼んでる!」


 女の子はそう言った後、自分の母親の元へ走り出す。


 由衣は小さな背中に「気をつけてね!」と声をかける。


「うん!バイバ〜イ!」


 女の子はそう言った後、母親と一緒に去っていった。

 由衣しばらく手を振りながら見送った後、立ち上がった。



 正義のヒーロー……か。


 こちらを向いた由衣は満面の笑みでとても嬉しそうだ。



 しかし、次の瞬間。由衣はバランスを崩した。


 俺は手を回してなんとかして身体を支える。

 そしてすぐに「おい。大丈夫か」と声をかける。


「あはは……やっぱりギアを使うと身体が痛くて……。

 今回は前より大丈夫だったし、我慢できてたんだけど……ちょっと目が回っちゃって……」

「そう言うのは先に言え」

「だって……まー君も無理してるでしょ?だから言いづらいなって……」


 ……確かに俺も無理はしている。


 星鎧が消滅した後、生身で魔術を使い由衣をサポートした。

 今の俺には少し厳しかったらしく、魔力回路は痛むし、魔力切れからか目も回っている。


 何も言い返せない。


 由衣は「もう大丈夫!」と言い、俺から離れて自分の足で立つ。

 そんな由衣に俺は自分の無理をごまかすように別の話題を投げる。


「というかお前。なんであそこにいた。建物内にいただろ」

「え、怒ってる!?」

「違う。行動理由を聞いているんだ」

「えっと……最初は中にいてガラス越しに見てたんだけど……途中で澱みが出たでしょ?そのときに違う方向に行く澱みがいるなって思ってたら、車の中にあの子とお母さんが見えて……」

「「気がついたら体が動いてた」か」


 声がハモった。

 由衣は「そう!そうなの!不思議だよね〜!」と笑ってる。


 いや、笑い事じゃないが。

 今回は何とかなったからいいが、もし俺が援護に回れなかったらどうなってたか……。


 やはり由衣は目が離せない。早くあれが完成して届いてくれればいいんだが……。


 ……だが、今日は褒めた方が良いだろう。頑張ってくれたんだからな。


「まぁ、お前のおかげであの親子は助かったんだ。よくやった」

「え?」

「よくやったと言ってるんだ。

 それに、お前じゃなければ小野は人間に戻れなかったかもしれない。星鎧も生成できたんだ。今回は本当によくやっ……泣いてる!?」


 さっきから静かだと思って、由衣を見ると思いっきり泣いていた。

 そして次の瞬間、思いっきり俺に抱きついてきた。


「私……まー君の役に立てて良かった!!

 私ずっと、星鎧が生成できないからさ。やっぱり、私じゃ駄目なのかなって……。でもやっと今日ちゃんと戦えて、まー君も褒めてくれて……嬉しくて……」

「わかった。わかったから、泣くな。そして離れてくれ……」


 そう言うと由衣は「あっ……ごめん」と言って俺から離れた。

 まったく。


 それにしても、由衣も由衣で悩んでいたとは。

 気を遣っていたんだが、もう少し気にしたほうが良さそうだと内心反省する。


「まー君。ありがとね」

「……いや、今日の俺は何もしてない。礼を言わないといけないのは俺の方だ。

 ……ありがとな」


 由衣は少し笑ってる。

 何か照れくさくなってきた。


 ちょうどそのとき、警察と話す必要がある事を思い出した。

 俺は「俺はまだ用がある」とだけ言って、病院の正面玄関に向かって歩き出す。


 そんな俺の背中を由衣が押した。



 こうして、はえ座との戦いは終わった。

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