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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
15節 自分の力で

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第248話 息抜き

 住宅街をひたすら歩く。

 行き先はとりあえず、いつも特訓に使ってる研究所跡地に向けて。



 入海いりうみ先輩の尾行が、正体を見極める前に失敗に終わった。

 俺はそのことに対するイライラが、どうしても抑えられなかった。


「おい真聡まさと、止まれって」


 何度か無視していた声が後ろから聞こえてくる。

 しかし今回は、遂に佑希ゆうきが俺を追い抜いて前に立ちはだかった。


 俺は吐きたくなるため息を堪えて「……何だ」と返す。


「どこへ行くつもりだ?」

「どこでもいいだろ」


 俺はそう吐き捨てて、佑希を追い抜こうとする。

 そこに、今度は後ろから「そんなに怒らなくてもいいでしょ」という日和ひよりの声が飛んできた。


「確かに、入海先輩に見つかったのは私達のせいかもだけど。

 でもそこまで怒る必要ないでしょ。由衣ゆいだって反省してるし」

「……うん。反省してる。本当に……ごめんなさい」


 その言葉の後、誰も口を開かない。


 ただ住宅街で聞こえる日常の音。

 車が走る音や人の話し声が遠くに聞こえるだけ。



 ……何だよ、この空気。

 俺が悪いみたいじゃないか。



 耐えきれなくなった俺は、ため息をついてから「別に」と口を開く。


「お前らに怒ってるわけじゃない。

 ……3日間、尾行までしたのに何も掴めない自分に苛立ってるんだ」

「……でも逆じゃないか?

 あれから毎日見張ってたのに、何も掴めなかった。

 だから入海先輩の様子がおかしいと言われているのは、別の原因なんじゃないか?」


 ……佑希の言葉は一理ある。


 だが、あの噂を()()()()と片付けてしまっていいのだろうか。

 そんな疑問が俺の中でずっと燻っていた。


 しかし、そんな俺に佑希は「それに」と言葉を投げ続ける。


「さっき入海先輩と話したとき、俺には()()だと思ったけど」

「私も普通に見えた」


 日和の意見に続けて、佑希が「だから、もういいんじゃないか?」と言ってくる。


 ……確かに、さっきの会話では普通そうに見えた。

 むしろ、後ろを付けてきた俺達には優しすぎるくらいだ。


 それに気配は普通にあったし、魔力や澱み、星力も感じなかった。



 何より、認識阻害魔術を使っていた俺のことを()()()()()()()ようだった。



 ……やはり、入海先輩は普通の人間なんだろうか。



 ……まてよ。


 そこで別の疑問が頭をよぎった俺は、「おい」と言葉を発する。


「3人は何で俺が見えた。俺は教室出るときから認識阻害魔術を使ってたぞ」


 そう。

 なぜ由衣達が俺を見えたかだ。


 俺は終礼が終わると同時に無詠唱だが認識阻害魔術を使用して教室を出た。

 そして入海先輩を見つけた後、詠唱して出力を上げた。


 なのに、由衣は俺の肩をつついた。


 ……おかしい。


 そして俺の質問を受けて、「それは……」と口を開いたのは由衣だった。


「確かに最初は見つからなかったけど、学校出たところでまー君を見つけてさ。

 途中で見失いかけたけど、入海先輩を3人で探しながら歩いてたらまー君を見つけたの」


 ……つまり、3人には途中から効いてなかったってことか。


 そもそも認識阻害魔術は認識を阻害するだけの魔術だ。

 本当に見えなくなるわけでも、消えるわけでもないない。


 3人を始め、メンバーとは一緒にいる時間が多い。

 だから俺の認識を阻害されるのに抵抗が出来ているんだろう。


 それに、魔力の上の星力が使える星座神遺保持者だしな。


 ともかく……。


「見つかったのが、他の人間じゃなくて良かった」


 俺は気が付くと、そんな言葉を口にしていた。



 ……しかし、この先どうするか。



 考えていると、住宅街に軽く手を叩く音が響いた。

 その直後に聞こえたのは、佑希の「さて」という声。


「日和はこの後空いてるよな?」

「うん。部活がないから2人に着いてきたし」

「由衣は?」

「あ、空いてるよ?」


 ……急に何の話が始まった?


 着いて行けず、混乱していると「で、真聡は?」と話が俺に回って来た。


「……予定はさっき無くなったが」

「じゃあ決まりだな。このままどこか行くか」


 そんな佑希の言葉に、由衣の「え、いいの!?」という大きな声が飛んできた。

 ほぼ同時に俺を追い抜いて、佑希の隣へ行く。


 そんな由衣を追いかけて、日和も俺を追い抜いて行った。

 そして佑希「あぁ」と言葉を返す。


「そもそも、俺が3人とちょっと距離を取っていたから、4人で遊びに行くこともなかったからさ。

 それに由衣は行きたいだろ?」

「行きたい!

 ……あ、でも。まー君……」


 由衣がそう呟きながら、俺の方を向いた。

 まだ怯えてるような子犬の目をしている。


 ここで俺が断ると由衣は完全に落ち込むのは目に見える。


 ……佑希め。俺をハメたな。


 俺はため息を堪えて「好きに決めろ」と言葉を返す。


「やった~~!!ひーちゃん、どこ行く!?」

「由衣が行きたいとこでいいよ」

「え~~!?どうしよっかな~!?

 とりあえず……駅前の方!!」


 由衣と日和は、そんな会話をしながら歩き始めた。

 置いて行かれたらまた面倒なので、俺も歩き始める。


 そして、佑希に追いついたので「お前、俺をハメたな」と言葉を投げる。


「いやぁ……。一応『追いかけない方が良い』って言ったんだけどさ。

 俺に言う権利はなかったから……。

 でも、真聡も少しは息抜きした方が良いだろと思って」

「……お前が言うのか、それ」

「お互い言えないだろ、俺達」


 佑希は苦笑いを浮かべながらそう返してきた。


 ……確かにそれはそうだ。


 そこに「ねぇ2人共~!!早く~~!!」との由衣の声が飛んできた。


 由衣と日和は住宅地を抜けた先の信号の手前にいる。


「……ちょっと急ぐか」

「……だな」


 その会話の後、俺達は走り出す。



 こうして、俺はまた由衣に振り回されて遊びに行くことになった。

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