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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
2節 一緒に戦うために
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第024話 決意

 私は数十分前に正面玄関に向かって走った道を、今度は裏口に向かって走っている。

 もちろん助けた親子と一緒に。


 怪我したところがちょっとだけ痛いけど、今はそんなこと気にしてられない。

 早く逃げないと。



 また、まー君の足手まといになってしまう。



 そのとき。

 鈍い、痛そうな音と一緒に呻き声が聞こえた。



 振り返るとまー君が吹き飛ばされ、地面を転がっていた。

 はえ座はこっち向かって歩いてきている。



 こうなったのはきっと、私のせいだ。



 私が1人で戦えないから。



 私がまだ星鎧を生成できないから。



 だからまー君は結局1人で戦わないといけない。



 私はやっぱり、まー君と一緒にいない方がいいのかもしれない。




 そのとき。

 今度は泣いてる声が聞こえた。



 私は我に返って、その声が聞こえた方を見る。

 その声は、私の後ろでさっき助けた女の子のものだった。


 幼稚園ぐらいの女の子が、怖がって泣いている。

 お母さんに抱きしめられながら。

 


 今の私には何ができるだろう。

 星鎧が生成できず、戦えない私に。



 でも、考えるよりも先に私の身体は動いていた。



「大丈夫。お姉ちゃんがなんとかするから」


 私はしゃがんで女の子の頭をなでながら、笑顔で伝える。

 そして、また後ろを向いて歩き出す。



「ギア、また借りるね」


 倒れているまー君からギアを借りて、まー君の前に立つ。



 私は弱い。

 まー君と比べたらとっても弱い。比べることを悪いなって思うぐらい。



 でも、そんな私でも、やっぱり役に立ちたい。



 まー君はきっといろんなことを1人で背負ってる。



 それを少しでもいいから一緒に背負ってあげたい。



 それにあんな小さな子を怖がらせてまで、自分がやりたいことをしようとするのは許せない。



 私は関係ない人の笑顔を奪うはえ座が許せなかった。



「お前モ……邪魔するのカ……!」

「……邪魔する。小野君が受けた苦しみも辛さも、全部酷いと思う。あんなことをする人たちは許せない。

 でも今、小野君がやってることは、そんな人と変わらないよ。

 何だったら、関係ない人を巻き込んでる今のあなたの方が酷いよ。

 私はそんな、自分のわがままで誰かの笑顔を奪うのは……許せない」


 はえ座の言葉にそう返してから、ギアをお腹に当てて装着する。


 次に左手の星座紋章に集中して牡羊座のプレートを生成して、ギアに差し込む。

 そして左手を真上に掲げて時計回りに一周して、両手を握って左手を少し前で肩の高さで構える。



 今は、失敗したときなんて考えない。



 まー君を、あの女の子を。



 みんなを、守らなきゃ。



 私なら、できる。



「星鎧、生装!」



 そう唱えるのと一緒にギアの上側のボタンを押す。

 するとギア中心部から牡羊座が飛び出て、私の身体は光りに包まれていく。


 その光の中で鎧が生成されて、私の身体は紺色のアンダースーツと紺色と赤色の鎧に包まれていく。


 そして、光は晴れる。


「ここからは、私が相手をする」


 星鎧は生成できた。

 ここからは、私が戦う番。怖がってる場合じゃない。


 それに身体も前回ほど痛くない。

 むしろ今回は身体中が力で溢れて、最高に調子がいい気がする。


 これならいける。



 はえ座が突撃してくる。

 私はそれを真正面から受け止める。


 まったく痛くない。余裕で受け止めれる。


 私は押し返して、そのままはえ座を殴る。


 はえ座は衝撃で後ろに下がった。


 私はそのまま近づいて連続で殴る。

 受け止められてるけど、確実に手応えはある。


 そして、とどめに力を込めて思いっきり殴る。

 その一撃ではえ座はさらに後ろに下がった。


 気が付くと病院の正面まで戻ってきていた。


 私はもう一度距離を詰めて連続パンチをしようとする。


 しかし、はえ座は飛び上がってしまった。


 どうしよう。

 澱みとの戦い方は教えてもらっていたから、さっきまではそれで何とかなってた。

 でも、空を飛ぶ相手との戦い方なんてまだ教えてもらっていない。


 困っている私を気にせず、はえ座は上からぐっと降りてきて体当たりで攻撃してくる。

 私はそれを転がって避ける。


 どうしたらいいんだろう。

 考えるけどやっぱりわからない。


 でも転がってるだけじゃどうにもならない。


 悩んでるその時。

 病院の正面玄関に銃声が鳴り響いた。


「こっちだ化け物!」

「末松!刺激しすぎるな!」


 丸岡刑事や末松刑事。病院に駆けつけていた警察官のみなさんが正面玄関から出てきて、拳銃ではえ座を狙ってる。

 でもそんなことしたら狙われると思うんだけど……。


「虫けらガ……!」


 やっぱり!


 私が考えた通り、はえ座は警察官のみなさんを狙って私から離れていく。



 私は追いかけるけど間に合わない。

 思わず「ちょっと!」と叫ぶけど、そんなことをしても何も変わらない。



 初めての戦いがこんなの嫌だ。



 そのとき。

 地面から蔓が伸び、はえ座の体を縛った。


「はえ座の力を使ってるくせに他人を虫けらなんて言ってんじゃねぇよ」

「まー君!?」

「こっちは気にするな!お前ははえ座に集中しろ!」


 その蔓は、やっぱりまー君が操っていた。

 それって星鎧が無くてもできるんだ……。

 それにいつの間に正面玄関まで移動してたんだろう?


 でも、今考えることじゃないよね。

 集中しろって言われたし。


 はえ座が蔓によって、地面に叩きつけられた。


 蔓が消えて、はえ座が自由になった。

 すぐに距離を取ろうとするところを、私は近付いて殴る。


 はえ座が下がり、また距離が開く。

 でもパンチあるのみ!


 私はさらに距離を詰めようとする。


 そのとき。はえ座が私に話しかけてきた。


「なんデ……どいつもこいつも邪魔をすル……。俺のときハ、誰も助けてくれなかったのニ……俺はやっト……あいつらニ……やり返せるのニ……!」


 彼の言葉の悲痛さに、思わず足が止まった。


 躊躇ってる場合じゃないのはわかってる。


 私は決意したんだ。



 でも、彼が受けた苦しみを否定していい訳でもないとも思った。



 そんな私にはえ座が向かってくる。


 私はなんとか受け止めたけど、今回は少し押されている。

 そこにまー君の声が響いた。


「躊躇うな!澱みに染まって堕ち星になった時点で、そいつはまともじゃない!」


 そうだよね。

 こんな姿に成って、暴れるのは普通じゃない。今は考えるときじゃない。


 私は力を振り絞り、はえ座を突き飛ばす。


 はえ座は体勢を立て直し、また上昇していく。


 でもそれをまー君が蔓を生やして阻止する。


「もう飛ばせねぇよ。由衣ゆい!決めろ!」

「任せて!」


 私は蔓で縛られているはえ座に向かって走る。



 今出せる全力で。

 残ってる星力を全部、右手に込めて。



 私は腕を引く。



 辛いことが悪い夢だったと思えるように。



 小野君もまた、笑顔になれる日が来ることを願って。



 私の思いを込めた私の拳ははえ座に命中した。

 その衝撃ではえ座は吹き飛んでいく。



 そして辺りに土埃が舞って、周りが見えなくなった。

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