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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
15節 自分の力で

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第245話 有名な先輩

「怪物と戦ってる皆さんに、相談したいことがあるんです」


 ずっと口籠っていた永川えがわ 佳奈かなが、ようやく切り出した。


 ……いや待て。


「私達は……怪物と戦ってない……よ?」


 ついに俺が口を開くよりも先に、由衣ゆいが否定の言葉を口にした。


 それにしても久々に言われたな。

 やはり普通の高校生として生活している以上、身近な相手にバレてしまうのは仕方ないか。


 ……いや、認識阻害魔術を使っているんだが。


 そんなことを考えていると、田渕たぶち 桜子ようこの「いやいやいや」という声が聞こえてきた。


「由衣、流石に私達は誤魔化せないからね?

 部活見学のときとか、遠足とか、突っ込まなかっただけでずっと怪しいとは思ってたからね?」


 「えぇ!?」と由衣の少し間抜けな声が屋上に響く。

 そんな由衣の声に、荻野おぎの 乃々ののかが「結構噂広まってるよ~~?」と言葉を返した。


「『あの鎧の中身が星芒高校《この学校》にいる』って~。

 でも、何でかみんな正体はわからないみた~い。

 というか~、何で学校は学校に怪物が出ても~、保護者会とか開かないんだろ~ね~」


 緩い声で鋭い指摘をしてきた荻野。


 一応、大勢に正体がバレてないらしいので……良しとするか。


 ちなみに保護者会は協会からの禁止命令が出ているため開かれない。


 そのため表向きは今も「この街での怪物騒ぎは事実が存在しない」ということになっている。

 中途半端に説明すると、社会に混乱が出かねないからだ。


 本来、怪異や魔師犯罪などは世に出る前に片づけられるのが基本。

 現状がおかしいんだ。


 ……そろそろ隠すのも限界な気がするが。


 それよりも、問題は「俺達が怪物退治をしている」ということがバレ始めていることだ。

 メンバー全員が使えるようになったとはいえ、ただの認識阻害だと限界があるか。


 それに人数も人数だ。

 そろそろ正体を隠すのも何か別の方法が必要だ。



 ……いや、今気にすることはそこじゃない。

 それにこの3人は由衣がよく遊んでる相手だ。隠し通すのは無理だろう。


 あと悩みがあると相談されて、それを無視するのは……後味が良くない。


 そう結論付けた俺は、息を大きく吐いてから「……どんな相談だ」と質問を投げる。

 すると永川が「えっと……」と口を開いた。


「同じ部活の1つ上の先輩の話なんですけど。

 私が入部した時はとても優しい人だったんです。

 でも、年末ぐらいからちょっとピリピリし始めて……」

「何かあったの?」

「他の先輩とかは『引退が迫ってきてるのに、記録が伸びないからじゃないか』って言ってて……。

 でも最近、急に前みたいにまた優しくなって……」

「それは……良いことじゃない?」


 由衣は首を傾げながら言葉を返す。


 確かにまだおかしなところはない。


 だが相談をするということは、()()()だと思うところがあるのだろう。

 だから由衣、話をスムーズに聞かせろ。


「それはそうなんだけど……。

 先輩、いきなり『そんなことで?』ということで凄く怒るの。

 あとそうなってから、記録が良くなり始めてて……。何か、変な感じがして……」

「だから俺達に相談……ってことか。真聡まさと、どう思う?」


 佑希ゆうきが俺にパスを投げてきた。


 性格が変わってしまうのも、感情が不安定になるのも。

 それ自体は()()()()()でもあることだろう。


 だが「記録が良くなり始めてて」という言葉がどうも気になる。


 俺は水泳について詳しいことは分からない。

 だが、水泳部の人間が気にするんだ。普通じゃない可能性はかなり高いだろう。


 それに記録が良くなるということは、身体能力が上がってるとも取れる。


 ……無視はできないな。


 そう感じた俺は「永川、その先輩の名前は?」と質問を投げる。


「あ、えっと。入海いりうみ 瑠夏るか先輩です……」

「え、あの入海先輩!?」


 由衣の驚く声が屋上に響く。

 いつもながら、いちいちオーバーな奴だ。


 だが、聞き覚えないの無い名前になぜそこまで驚いたのかは気になった。


 なので、隣にいる佑希に小声で「誰だ」と聞いてみる。


「真聡……知らないのか?」

「え、まー君知らないの!?有名な先輩だよ!?」


 佑希の返事に続いて、由衣の驚きの声が飛んできた。

 そして智陽ちはると田渕の口から何とも言えない声が聞こえる。


 ……悪かったな、知らなくて。


 そんな言葉が口から出るよりも先に、永川が「入海先輩は」と口を開いた。


「水泳部の部長で、1年生のときには県大会に出たこともあって……」

「佳奈ちゃんは入海先輩に憧れて、水泳部に入ったんだよね~!」

「ちょ、ちょっと由衣ちゃん!」


 由衣の言葉に、何故か永川は恥ずかしそうにしている。


 ……何で恥ずかしそうにするんだ?

 別に、誰かに憧れて部活を決めるのは何もおかしなことではないだろ。


 ……いや、そこじゃないな。

 脱線してる場合ではない。話を進めないと。


「とりあえず、その先輩と……放課後で良い。会えるか?」

「えっと……会って話すのはわからないですけど、遠くから見るぐらいなら……」


 まぁ、いきなり知らない後輩が目的を隠して会いに来たら怪しまれるよな。

 これで堕ち星や澱みが関係なければ、後の人間関係に響くかもしれない。


 そう考えた俺は「わかった」と言葉を返す。


「じゃあ放課後、ここにいる奴で……」


 つい、いつもの勢いでそこまで口にしたとき。

 今日はいつもと違うことを思い出した。


 ……永川は話を持ってきた本人だから一緒に行くだろう。

 だが、付き添いの田渕と荻野はどうするんだ?


 そう考えていると、田渕が両手を合わせながら「ごめ~ん!」と口を開いた。


「私今日部活!だから放課後は……由衣、お願い!」

「私もパス~。怪物は怖いし~、私も水泳部じゃないから~」


 田渕に続いて、荻野まで辞退らしい。


 ……まぁ、戦えない人間は少ない方が良い。

 人数が少ない方が動きやすいしな。


 しかし、永川は「ふ、2人とも!?」と残念そうな声を上げている。


「ほんとごめん!

 でもほら、由衣いるし!」

「そうそう~。

 由衣ちゃん、佳奈ちゃんのこと、お願いね~」

「うん!任せて!」


 こうして、今日の放課後の予定が決まった。

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