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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
14節 3兄妹

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第239話 焦らない

 時間は少し戻り、真聡まさと達が佑希ゆうきと戦っている間。


☆☆☆


 飛んで来る黒い斬撃を避けながら、おおかみ座との距離を詰める。



 俺と鈴保すずほは真聡達と佑希が落ち着いて話せるようにするのが役目だ。

 だから俺達はおおかみ座を最初に戦っていた建物から、隣の少し天井が低い建物に連れ込んだ。


 だけど、やっぱりそう簡単に勝てる相手ではない。

 しかも、俺が使う飛ばせる斬撃を使ってくるようになっていた。



 間合いに入れたので、ガントレットを装備した右手でおおかみ座に拳を叩き込む。


 けど、やっぱり受け止められた。


 おおかみ座は口を開けて、右手に噛みつこうとしてくる。

 その頭を目掛けて左手を振り下ろす。


 今度は当たった。

 けど右手は離してくれねぇし、左手を頭で押し上げようとしてきている。


 そこに「志郎しろう!」と俺の名前を叫ぶ声が聞こえた。


 俺は咄嗟に右足でおおかみ座の脇腹に蹴りを入れながら、右側に寄る。

 そして深紅の槍がおおかみ座の左側の脇腹に刺さる。


 決まった。



 しかし。



「どいつも……こいつも……!!!!」



 その叫びと共に、俺の身体は宙を舞った。


 そして俺は廃工場の壁に激突して落下する。


 どうやらぶん投げられたらしい。


 ……マジでへび座とかてんびん座と同じレベルで強いなこいつ。


 そんなことを考えながらも、一緒に戦っていた鈴保がどうなったかを確認する。



 そのとき。

 何かがぶつかる音が建物の中に響いた。



 その音の原因は、天井にぶつかった鈴保だった。



 どうやら横に投げられた俺と違って、鈴保は真上に投げられたらしい。


 今は煙でその姿が見えない。


 そしてその真下では、おおかみ座が上向きに構えている。

 その右手には、黒い靄が集まっている。



 ……どう考えても落ちてきた鈴保に食らわせる気だろあれ。



 このままだと、鈴保が危ない。



 そう感じた俺は、慌てて斬撃を飛ばす。



 しかし、斬撃は左手を使って飛ばされた斬撃で消されてしまった。



 けど、そうなることぐらいわかっていた。



 だから本命は俺自身だ。

 おおかみ座に突っ込めば、鈴保が無事に降りるぐらいの隙は作れるだろ。


 そんな考えと共に、俺は走り出していた。


 で……するなら飛び蹴りか?

 それとも飛びついて押し倒せばいいか?



 次の手を考えながらも、間合いに入る。



 その直前。

 天井から数滴、液体が落ちてきた。



 それに気が付いた俺は、足を止めた。



 そしてすぐに液体は、雨のように降り注ぐ。



 その雨は、おおかみ座の皮膚に接触した場所に白い煙を発生させた。



 気が付いたおおかみ座は急いでその場から逃げ出した。



 すると、雨はすぐに止んだ。


「あ~……。

 ()()、疲れるわ……」


 そう呟きながら、鈴保が上から飛び降りてきた。


 ……つまり、さっきの雨みたいのは毒か。


 それで落ちてこなかったのは……。

 投げられた後、とかげ座の力で天井に張り付いていたってことか?


 確か、今日も鈴保はとかげ座のプレートを借りてたよな。



 ……いや、今はそれどころじゃねぇよな。

 鈴保だけに無理させられねぇ。


 俺はすぐにこじし座のプレートを取り出して、リードギアに挿し込む。

 そして、思いっきり地面を蹴る。


 こじし座の力を借りて、一気におおかみ座との間合いに入る。


 始めに右手の拳を叩き込む。

 次に右足で足払い、右手、左手、蹴り。


 最初は防がれていたけど、徐々に攻撃が入り始めた。

 そして連撃で体勢を崩したおおかみ座に、渾身の右ストレートを叩き込む。



 重い一撃が決まった。

 拳を受けたおおかみ座は建物の外まで吹き飛んでいく。


 俺はおおかみ座を追いかけて、建物の出入り口まで移動する。

 一方おおかみ座は、何とか立ち上がってるところだった。


 とどめは佑希が差したいだろうけど……押せるときに押し切っていた方が良いよな。


 そう考えながらも、俺は右手を一度突き出してから腰を落として右手を後ろに引く。

 そして、身体中の星力を右手に手中させる。



 ゆっくりと息を吐きながらイメージするのは、その星力が俺の周りに広がっていくこと。



 流星群がまた使えなくなったことを真聡に相談したとき。

 『程よい緊張感とやる気、あと焦らない方が良い。

  規模が大きい魔術や魔法ほど、咄嗟に使うのは大変だからな』と言われた。



 だから焦るな、俺。



 いや、焦らなくていい。

 俺はできる。


 実際に1回出来たんだからな。



 すると右手が青白い光を纏い始めたのが見えた。

 そして視界の端にも青白い光が生まれるのも見える。



 ……これなら、いける。



「しし座……流星群!!!!」


 確信した俺はそう叫ぶと同時に、右手を振りぬく。



 振りぬいた右手から青白い光が飛んでいく。

 その光は、何とか立ち上がったおおかみ座に直撃した。


 それに続いて、俺の周りで浮いている青白い光がおおかみ座を襲った。

 そして、おおかみ座の姿は青白い光の爆発に包まれた。


 そこに


「やったじゃん」

 

 そんな声と当時に、背中が叩かれた。


 振り返ると、鈴保がすぐ後ろに居た。

 とりあえず俺は「おう」と言葉を返す。


 ……この一撃で、戦闘不能まで追い込めてたらいいんだけどな。



 そのとき。

 何かが風を切るような音が耳に届いた。



 その直後。

 漂う青白い煙が引き裂かれた。



 すると、そこには。

 2本足で立つ、黒い体毛に覆われた怪物が。



 おおかみ座が堕ち星の姿で立っていた。



「僕の相手は佑希なんだ……。

 関係ない君達に、倒されるわけにはいかないんだよ……!!」


 その言葉の直後。

 おおかみ座の口から出た遠吠えのような音が辺りに響く。


 俺と鈴保は再び構える。

 おおかみ座が地面を踏み切った。


 さっきよりも早い。


 そこに。


「耳塞げ!」


 その声が飛んできた。

 そして同時に、俺と鈴保の間を通ってカードが飛んでいく。



 次の瞬間。

 何とも言えない甲高い、耳とか頭にくる音が響いた。



 その音をノーガードで聞いたおおかみ座は、その場に倒れた。


 ……俺も耳を手で塞いでなかったら()()なってたのかもな。



 そんなことを思いながら、耳から手を離す。


「志郎、鈴保。ありがとう。

 お陰で、冷静になれたよ」


 その声と共に。

 見慣れた姿の佑希が、俺達の前に出てきた。

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