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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
2節 一緒に戦うために
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第023話 甘い自分

「はえ座。今日こそ決着をつけるぞ」


 覚悟の言葉を口にしながら右手に杖に生成して、はえ座の様子を見る。


 すると、はえ座はいつものように突撃してきた。


 俺は杖先で地面を突き、はえ座が突っ込んでくるであろう直線の両脇から蔦を伸ばす。


 隠匿結界に星力を分けたので、流石に万全と呼べる状態ではない。

 できれば早く決着をつけたい。


 これではえ座を掴めたらいいんだが。



 しかし、そう簡単にはいかなかった。


 はえ座は蔦を避けて突っ込んでくる。


 俺は横に転がって、はえ座の突撃を避ける。

 同時に杖から反撃の追尾魔弾を撃つ。


 はえ座はそのまま魔弾を振り切ろうと飛び去った。



 今回の魔弾は前回よりも追尾性能を上げておいた。

 堕ち星を確実に追い続けるので、簡単に振り切れないようだ。



 痺れを切らしたのかこちらに突っ込んでくる。


 どうやら魔弾を撃った俺にぶつけて処理をするつもりのようだ。

 俺は杖を構え、言葉を紡ぐ。


「火よ。人に害を成す堕ち星と成りし、はえの座を焼き清めよ!」


 向かってくるはえ座を杖先から出る炎が飲み込む。そして魔弾も命中する。

 たまらずはえ座は横側に離脱して距離を取った。


 そして、また突っ込んでくる。


「そろそろそれも飽きたよな」


 俺は杖を手放し、それを正面から受け止める。

 そして、そのまま投げ飛ばす。


 地面を転がるはえ座に、俺は疑問を投げかける。


「お前、小野っていうんだろ。

 話は聞いたぞ。そんな姿になってまで自分を虐めたやつらに復讐したいのか?」

「誰も助けてくれなイ…。なら自分の手デ!あいつらニ!やり返ス!」


 地面から立ち上がりながら、そう答えたはえ座。


 そのまま少し浮き上がってこちらに突っ込んでくる。

 はえ座はその勢いのまま右の拳を振るってくる。


 俺はそれを避けて、右手で殴り返す。


「誰も助けてくれないなら自分でやる。その考えは嫌いじゃない。俺も似たような経験があるからな。

 だけどな。人の命を奪うこと。そして人以上の力で人に復讐するのはどうかと思うぞ」

「うるさイ!やっぱりお前は邪魔ダ!邪魔するやつハ…全部敵ダ!」


 その叫びが駐車場に響くのと同時に、澱みが地面から湧き出してきた。

 やはり堕ち星は澱みを操れると見て間違いなさそうだ。


 それにしてもかなりの量だ。

 病院などの人の感情が多く集まる場所では澱みの量が多くなりやすい。

 だけど、1人でこの量は厄介だ。


 だが、今は周りに人はいない。

 対応を間違えなければ問題ない。


 詠唱魔術で一掃したいが、落ち着いて詠唱している隙はなさそうだ。


 なので、俺ははえ座の攻撃に対処するその間に拳や蹴り、魔術を飛ばして徐々に澱みを消していく。



 澱みは魔力を帯びたもので攻撃することで消滅させることができる。

 つまり、星力で生成される星鎧を纏っている星座騎士の攻撃では、特に何かしなくてもダメージを与えることは可能である。


 しかし、一撃で倒せない事もある。

 なので俺は基本的に何かしらの魔術を発動させて倒すようにしている。



 先程湧き出た澱みが残り少しほどになったとき。

 俺の耳に聞き慣れた声が入って来た。



 俺は嫌な予感がして、その声の方向に視線を向ける。



 そこには裏口の方向にある駐車場からでてきたと思われる車が止まっていた。



 数体の澱みがその車に襲いかかっている。

 その車内には親子が乗っているのが見える。



 そして、その車を守るように由衣ゆいが生身で澱みと戦っていた。



 何故あいつが外にいる。


 その他、色々な疑問が頭に浮かぶが今はそれを考えている場合ではない。


 由衣は今は上手く攻撃を避けて、反撃している。


 だけど、魔術が使えない由衣が生身で澱みと戦うのは危険でしかない。

 早く助けに行かなければ。


「よそ見ヲ…するナ!!」


 その声で視線をはえ座に戻すと、はえ座は殴りかかってきていた。

 俺はその腕を掴んで止める。


 そして、反撃の拳をにみぞおち辺りに叩き込みながら言葉を紡ぐ。


「火よ、弾けろ!」


 腹部に叩き込まれた拳から炎が弾ける。

 その余波ではえ座は派手に吹き飛ぶ。



 簡易詠唱はちゃんとした詠唱よりは威力が下がる。

 しかし、詠唱無しよりは出力が上がる。

 緊急時の隙を作るためには助かる方法だ。


 そして隙が作れたので、俺は由衣がいる方向に走り出す。



 その瞬間。

 澱みの攻撃を避けるのに失敗した由衣が地面を転がった。


 俺は杖を生成して、言葉を紡いで地面を杖先で叩く。


「土よ、澱みを吹き飛ばせ!」


 澱みの足元が迫り上がり、澱みは吹き飛ばされて宙を舞う。


 そして地面に落下して消滅した。


 そして俺は地面に転がってる由衣に駆け寄る。

 「由衣!」と呼びかけながら、背中の下に手を入れて身体を起こさせる。


「ごめん……まー君。ちょっと失敗しちゃった」


 そう言いながら、「あはは……」と笑う由衣。

 そして、俺の肩を借りながら自分の足で立ち上がり。


 見た感じかすり傷はあるが、大きな怪我はなさそうだ。

 自分の足で立てているしな。


 俺は安心感を覚えながら立ち上がる。


「とりあえず、車内の親子と一緒に建物内に避難しろ」

「……わかった」

「余裕そうだナ!」


 その声で振り返ると、既にはえ座が間合いに入っていた。


 突撃してくる身体を何とか受け止める。



 しかし、やはり由衣達が気になる。

 俺はなんとかはえ座を押さえつけながらも、視界の隅で様子を窺う。


 由衣は親子を裏口の方から建物内に避難させようとしている。

 これなら安心だ。



 しかし、この確認が命取りだった。



「よそ見をするなト…言ってるだロ…!!」


 はえ座の蹴りが俺の鳩尾に綺麗に入った。


 俺の身体は吹き飛ばされ、宙を舞う。



 そして星鎧は消滅し、地面を転がる。



 やってしまった。



 何が全部捨てただ。何が平等だ。


 大切な友達が傷つくことに恐れて、また判断を誤った。

 天秤座を回収し損ねたときから、俺は何も変われていない。



 平等なら澱みを全て消した後。由衣を助けず、さっさとはえ座を倒すべきだった。



 結局俺は、あの頃と同じで甘い自分のままだ。



 このままだと今回の方が大惨事になる。

 なんとかしてあいつを倒さねば。



 俺は立ち上がろうとする。



 しかしダメージからか、それとも星力を使いすぎたのか立ち上がれない。



 そのとき何者かが後から歩いてきて俺に声をかけた。



「ギア、また借りるね」



 そしてその人物は俺を庇うように、はえ座の前に立ちはだかる。



 白上しらかみ 由衣ゆいが、そこにいた。

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