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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
第1章 1年生  1節 再会
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第002話 泥人形と鎧人間

 4月最初の月曜日。

 私、白上しらかみ 由衣ゆいは自分の部屋で、深い青が綺麗なブレザー制服に袖を通す。


 私は今日から高校生で今から入学式に出席する。

 春といえば色々あるけど、やっぱり今年は出会いの春。これから始まる高校生活に私は胸を高鳴らせていた。


 支度を済ませて、お父さんとお母さんと一緒に家を出る。

 空を見上げると、青く晴れ渡っていた。


 それはまるで「高校生活はいいことしか起こらない」と言っているかのように。


☆☆☆


 すっかり忘れていた。入学式は楽しくないことを。

 高校生活は本当に楽しみにしていたけど、入学式はちょっと……いやかなり退屈だった。

 座っていろんな人の話を聞いてるのを、楽しいか楽しくないかで聞かれたら楽しくは……ないよね。


 体育館での入学式が終わるとこれから1年間過ごすことになるクラスに移動するように言われた。

 そして今は隣の席の田渕たぶち 桜子ようこちゃんと喋りながら、担任の先生が来るのを待ってる。


「というかさ入学式長くなかった?座ってただけなのにめっちゃ疲れちゃったんだけどさぁ〜」

「確かに長かったけど……入学式ってそういうものじゃない?」

「いやぁ……間違いなくうちの卒業式よりも長かった。ところで、やっぱ私立だから体育館綺麗じゃない?うちの中学はさぁ〜」

「はい、みんな席につけ〜。このクラス初めてのホームルームをするぞ〜」


 ようやく担任の田村先生が入ってきたので、私達は会話を終えて前を向く。

 そして、席から移動していたクラスの子たちが自分の席に戻っていく。


 みんなが席につくといろんな紙が最前席から配られ始めた。

 配られた紙はクラス分け表や行事予定表、学校生活の注意事項とか色々。


 私は先生の話を聞きながら、なんとなくクラス表を見始めた。



 そして、私は自分のクラスに「陰星いんせい 真聡まさと」という名前を見つけた。


 その衝撃に思わず「えっ!?」という声が漏れる。



 陰星 真聡。まー君。

 小学生まで同じ学校で家も近くて、小さい頃は毎日遊んでいた幼馴染の1人。

 あのときはきっと中学校も同じだと思っていた。


 だけど、実際は中学校の入学式にその姿はなかった。

 学年の名簿にはどのクラスにも名前はなかった。

 後日、家に行ってみると彼の家は「買い手募集中」という紙が貼られていた。



 それ以来、連絡も取れずどこにいるのかわからなかった。



 そんな彼の名前がこの表によると私と同じクラスになっている。



 私は今すぐこの名前が私の知っている彼なのかどうかを確かめに行きたいのをぐっと我慢する。

 流石にホームルーム中の今行ったら、初日から変な人だと思われそう。

 それは流石に困るし嫌だ。

 実際、桜子ちゃんがチラッと私を見たし。


 悩んでいると、どうやら今から一人一人自己紹介をしていくらしい。

 それで確かめたらいい。目立つ行動をせずに本当にまー君かどうかを確かめることができる。

 私にしてはいい考えだと思う。



 私の記憶の中のまー君はは明るく、いつも人の輪の中心にいた。

 そんなまー君に私は着いてまわって、ほとんど一緒に行動していた。



 あと、幼馴染には他にも3人いる。まー君と私を入れて5人。

 2人は小学校の途中で転校しちゃったけど、あの5人で遊んでいた時間は今でも楽しかった大事な思い出。



 だからきっと、まー君も私のことを覚えてくれてるはず。



 私はそんな期待を胸に自己紹介の彼の番を待っていた。


☆☆☆


 結論から言うと、彼はまー君ではあったけどまるで別人のようだった。

 昔の明るさはまったくないどころか、凄く暗くこう…「誰とも関わりたくない」ってオーラが凄かった。


 でも外見の特徴は私の記憶の中のまー君とあまり変わりはなかった。

 「きっと本人だ。私が話しかけたら思い出してくれるはず」と思って、ホームルームが終わってからすぐにまー君の席に向かう。


 だけどもう既にまー君は居なかった。


 嘘のような話だけど、本当に透明になったかのようにまー君の姿はどこにも見当たらなかった。


 その後、お母さんからから『帰るよ』とメッセージが来たのでとりあえず今日は帰ることにした。

 まー君については…まぁ「同じクラスになったんだし、これから喋る機会はたくさんあるはず」と今日は諦めることにした。


 そして今、私は私の両親と唯一中学校も一緒だった、ひーちゃんこと水崎みずさき 日和ひよりとその家族と一緒に家に帰っているところ。

 もちろん、まー君と一緒にいた友達でもあるので、私は相談してみることにした。


「ねぇ。ひーちゃんはさ。陰星 真聡って…覚えてる?」

「もちろん覚えてる」

「実はさ…多分まーくん。私と同じクラスなの」

 

 私がそう言うと彼女は「え?」っと声を出して足が止まる。

 普段はあんまり感情がわからないひーちゃんですらとても驚いてる。


 そうだよね、普通は動揺するよね。

 「あのときの自分の考えはおかしくなかった」と思いながら、私は話を続ける。


「でもなんかさ、雰囲気?が全然違うくて……なんか話しかけにくかったんだよね……。それに話しかける前に見失っちゃったし。

 だから明日さ、一緒に来て欲しいんだけど……いい?」

「いいよ。行くなら放課後?」

「うん、そのつもり!やった〜~!!ありがと、ひーちゃん!」


 そんな話していると、いつも別れる家の近くの路地まで来たいた。


 私は「じゃあ、また明日!」とひーちゃんに言って、彼女の両親にもペコっと頭を下げる。



 そして、家の方向へ向きを変えたとき。

 言葉にできない嫌な空気を感じた。



 何かが沼の中から這い上がってくるような音が住宅地に響く。


 あたりを見回すと、ちょうど私の家を挟んで反対側にある路地の地面に黒い染みのようなものがあるのが見えた。


 すると、そこから黒い泥人形のような何かがたくさん湧き出てくる。


 私は怖くなり後ろに下がろうとして、尻餅をつく。

 そこに私の両親ととひーちゃん一家が私を心配して走ってきてくれた。


 私はみんなの手を借りて立ち上がり、みんなで泥人形から離れようと後ろに下がる。


 泥人形はこちらに気づいたのか近付いてくる。

 動きは早くないけど確実にこちらに向かってきている。



 そして、その後ろではさらに泥人形が地面から湧き出していた。



 私達はとりあえず逃げようと少しずつ、後ずさりをする。

 でも、泥人形も同じ速度で近付いてくる。


 走って逃げるべきか、このまま一定の距離を取り続けるべきか。


 そう考え始めていたそのとき、路地の奥から光が飛んできた。


 その光は目がついているかのように、私達に近い泥人形に当たる。

 そして、光が当たったいくつかの泥人形は崩れて消えていった。


 光が飛んできた方向を見ると、そこには人型で全身に黒い鎧のようなものを着たものが路地から現れた。

 こっちに来ていた泥人形は一斉にその鎧人間の方に向きを変え、襲いかかる。


 鎧人間は慣れているかのように、襲ってくる泥人形を殴って蹴って消していく。


 そうして、私達があっけにとられている間に鎧人間は泥人形をすべて消してしまった。



 鎧人間はあたりを見回した後、こちらを見る。



 私はなぜか鎧人間の目は見えていないのに、目があった気がした。



 私はお礼を言おうとしたけど、それよりも早く鎧人間は歩き出した。



 そして現れた路地裏へ入っていく。



 私は走ってその後ろを追いかける。



 危険なのはわかってる。

 だけど、なぜか走り出していた。



 しかし、私がその路地に辿り着いたときには鎧人間の姿はなかった。





 このときの私は、この日が全ての始まりだということに気づいていなかった。

 この先私が、何に巻き込まれて、私達に待ち受ける結末を知る由もなかった。

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