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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
?節 戻らぬ日々
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第197話 最悪の目覚め

 全身に衝撃を感じた。



 お腹や胸と言った、身体表面が凄く痛い。



 地面は固いが手触りは良い。



 眼が開けづらいが状況を把握しようと、両手であたりを探る。



 右手に布が触れた。



 叩いてみると手ごたえがない。



 これは……カーテンか?



 そう確認をしたとき、やっと目が開けれた。



 右にはカーテン、左には何かの足。



 これは……ベッドの足か。




 つまりここは、俺が家として使っているビルの一室だ。





 それなら、今まで見ていたのは……()か。



 そう認識すると、ようやく息をするのが楽になった気がした。

 俺は仰向けになって深呼吸をする。



 しばらく悪夢は見ていなかった。



 それなのに、久々に()()()()()()()を見た。



 何で今頃、中等部時代のダイジェストのような悪夢を……。



 そう思った瞬間、身体の中から何かが上がってくるのを感じた。



 急いで起き上がり、洗面所に向かう。

 慣れてはいるので、焦りはない。



 そして膝立ちのまま、洗面台に顔を突っ込む。



 だけど幸い、今回は口からは何も出なかった。

 それでも吐き気が強い。


 身体に力が入らない。



 しばらくは、洗面所ここから離れれそうにない。




 ……そうだ。

 俺は、友人《稀平》を殺した。


 俺が稀平きっぺい清子きよこなら話してもいいと思って、星座の力やギアについて話したからだ。

 話さなければ、きっとあんなことにはならなかったはずだ。



 人の手に余る神遺の力に魅入られるきっかけを、俺が作ってしまった。



 稀平は善人だと思っていた。

 あんな酷い環境の学校の中の数少ない良心だと思っていた。



 それでも、稀平は魅入られた。



 力に溺れた。



 結果、人を殺そうとした。



 相手は確かにどうしようもない救えない奴らだった。

 だけどそれは、人を傷つけて、殺していい理由にはならない。



 そして俺は。

 稀平を止めるためとはいえ、殺してしまった。




 俺は正義のヒーローなんかじゃない。





 ただの人殺しなんだ。





 もうこれ以上、大事な人を失いたくない。




 だから俺は、人と距離を取るようにした。

 もっと強くなって、俺が世界の危機とやらを救えばいいと思った。


 実際、あの日の前後から「澱みが人型に成って人を襲っている」という話が魔師社会でも話題になり始めたらしい。


 世界の危機が本格化してきたってことだろうか。


 俺もほむらさんと共に他の星座のプレート探しや澱み退治に学院の外に出ることが増えた。


 俺は食べることも寝ることも削り、ひたすら強くなろうとした。

 ギアや星鎧生成の際の術も改良した。



 まぁ、あの日以来食事は喉を通りづらく、眠ると悪夢を見るから仕方ないという点もあったが。




 結局、俺は稀平を殺したという事実から逃げたかった。



 戦っていることで忘れられると思った。



 でもそれは、出来なかった。



 あの日の出来事は。

 俺の心に、脳に、今もこびり付いている。



 そんなときに、星雲市で魔力の異常や澱みの異常発生の話を焔さんが持ってきた。

 俺は学院を出て、この街に戻ることに決めた。


 由衣ゆい日和ひよりと出会ってしまう危険性がある事は分かっていた。


 でも、俺は失踪同然に姿を消した。


 俺のことなんて忘れているか、嫌ってくれてればいいと思っていた。



 だけど、そんなことはなかった。

 幸か不幸か、由衣と同じ学校の同じクラスになった。


 そして、由衣はあのときと変わらず俺に着いてきて、日和はそんな由衣に着いてきた。



 今からでも嫌ってくれればいい。

 そう思って突き放した。



 でも、由衣はさらに手を伸ばしてきた。



 そして、牡羊座に選ばれた。

 


 結局、俺の方が折れてしまった。



 それから仲間が増えた。

 良いことではある。



 でも俺は、怖い。



 大事な仲間を、また失うんじゃないかと。



 堕ち星と化した友人を、また殺さないといけないんじゃないかと。




 怖くて、仕方ない。




 今になって()()()()を見たのは警告なのだろうか。



『人の手に余る力を人から切り離せ。

 早くしないと、またお前は同じ過ちを繰り返すことになるぞ』という。



「うるせぇよ……俺だってできるなら……最初からそうしてる……」


 そんなどうしようもない愚痴が、口から零れた。



 視界端に映っている洗面台にぶら下がっている自分の両手。



 その掌が、赤く染まって見えた。



「何で期末テスト最終日の朝がこんな目覚めなんだよ……」


 また口から愚痴が零れる。



 12月中旬。

 冷え込んだ平日の朝。



 悪夢を見た後、吐き気。

 久々に朝食が何も喉を通りそうにない。



 期末テスト最終日としては最悪の目覚めだった。




 だけどこの目覚めは、まだ始まりでしかなった。

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