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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
11節 蠢く気配
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第182話 人の動きとは

 時間は陰星いんせい 真聡まさとと画架座の堕ち星の戦闘が、彩光さいこう 風色ふうしき美術館の中庭で始まった直後まで遡る。


☆☆☆


 画架座の拳を払って、俺は返しの拳を叩き込む。


 当たりはした。

 しかし、反対側の腕で受けられた。


 そして後ろに飛び下がる画架座。


 追撃はしてこないのか……。


 そう思ったとき。

 後ろから風を切る音が聞こえてきた。



 その直後、斬撃が俺の横を通り画架座に向けて飛んでいく。

 しかし、画架座はその斬撃を横に移動して避けた。


 すると今度は、そこに水弾が飛んでいく。


 流石に避けれなかったらしい。

 水弾は画架座に命中した。


 画架座の黒いが木製のような身体に、水弾がぶつかって弾ける。


 だが……今、絵に当たった一発が消えなかったか?


 そんなことを考えていたとき。

 今度は後ろから「だから!何で1人で始めるんだよ!」という苦情の叫びが聞こえた。


 だが、今回ばかりは俺が勝手に始めたわけじゃない。

 なので「避難誘導は必要だろ」と言い返す。


「そもそも、誰のせいでいきなり戦闘が始まったと思ってる」


 俺のその反論に、苦情を飛ばしてきた志郎しろうが「それは……」と言いながらも右側に並んだ。

 同時に反対側の俺の左側に、日和ひよりが並んだ。


 2人とも既に星鎧を身に纏い、それぞれの武器を手に持っている。


 さて……3人なら押し切れるだろうか。


 そこに、日和が「それより」と呟いた。


由衣ゆい達はあの堕ち星に倒されたってことなの」


 いつもより、真剣な声の日和。


 だが、画架座が居た部屋に戦闘の痕跡はなかった。

 なので俺は「……いや、それを違うと思う」と言葉を返す。


 すると。


「じゃあ3人はどこに消えたの!?」


 珍しく、声を荒げる日和。

 それに対して「俺だってわからねぇよ!」という反論が口から出そうになる。



 しかし、それよりも早く。

 志郎が「今は言い争ってる場合じゃねぇって!来るぞ!」と叫んだ。


 俺達は迫ってきている画架座を分かれて避ける。


 確かに、今言い争っても仕方ない。

 優先するべきは画架座の制圧だ。


「とりあえず、こいつを無力化するのが先だ。

 俺と志郎が前に、日和は後ろから援護をしてくれ」


 そう言い切って、俺は画架座との距離を詰める。

 右腕を引きながら。


 しかし、俺が拳を振るうよりも早く。

 画架座は後ろに下がった。


 下がった画架座を志郎が拳で追撃する。


 だが、画架座はその追撃すら避けた。

 そして飛んできた日和の水弾は腕で弾き飛ばした。


「何だよあいつ!襲ってきたと思ったら逃げてばっかじゃねぇか!」

「というか、由衣がいないと人間に戻せない」


 志郎の文句に続いて、日和の指摘が飛んでくる。


 確かに由衣が居ないと堕ち星を元の人間に戻して、プレートを回収することはできない。


 だが、こいつを今までと同じ堕ち星だとは思えない点があった。


「……こいつはいきなり堕ち星に成った。だから概念体の可能性もある。

 もし概念体ならば、由衣がいなくても無力化できる」

「んだけどこっちの攻撃全く当てられねぇって!どうすんだよ!」


 ……志郎の意見はもっともだ。

 画架座は襲ってはくるが、こちらの攻撃を悉く避ける。


 考えていると、また画架座が攻撃を仕掛けてきた。

 志郎が「また来たし!」と叫びながら応戦する。


 このままだと埒が明かない。



 俺は何か使えるものがないか庭園を見渡す。



 岩、石灯籠、松の木、橋、池……。



 ……池?

 それなら……これでいけるか?



 1つ策を思いついた俺は「志郎、日和。画架座を池に誘導してくれ」と2人に言葉を投げる。


「……どうするつもり?」

「池の水ごと画架座を凍らせる。

 あまりやりたくないが、それしか思いつかない」

「ならやるしかねぇな」


 そう言った後、志郎が「ほら、こっちだ!」と言いながら誘導を始めた。

 日和も水弾を撃って、逃げ道を絞っている。


 一方、俺は杖を生成しながらも美術館の屋根の上に移動する。


 屋外の庭園とはいえ、あまり建築物を破壊はしたくない。


 だが、今回ばかりは仕方ない。

 場所が狭すぎる。


 そう自分に言い聞かせながらも、位置に着いた俺は杖頭を池に向けて言葉を紡ぎ始める。


「氷よ。世界に永遠を与える氷よ。今、その大いなる力を我に分け与え給え。今、荒ぶり、人々に害を与える画架の座に」


 そこで、俺は言葉を止める。


 すると白色の魔法陣が杖頭に展開され、白色の光が杖先が行き先を求めて荒ぶる。


 あとは志郎と日和が画架座を池の中に落としたら撃つだけだ。


 池までは、あと少し。


 画架座は志郎の拳から逃げている。

 逃げた先に日和が水弾を撃ち、池の方向へ誘導する。



 そして、画架座がバックジャンプした。



 着地先は……この距離だと池の中だ。



 今だ。



「永遠なる眠りを与え給え」


 俺が最後の言葉を紡ぐと、杖頭から池に向かって氷魔術が放たれた。



 色鮮やかな葉が浮かぶ池の水が、みるみるうちに凍り付いていく。

 そして池に飛び込んだ画架座にも氷魔術は命中し、池の水と一緒に凍り付く。



 はずだった。




 画架座は落下中、空中で身体を捻った。




 画架座の落下が、一瞬だけ遅くなった。




 その影響で、氷魔術が凍らせたのは池の水だけだった。



 そして画架座は凍った水面を蹴り、池から離脱した。



 その後、画架座は土の上に無事着地した。

 だが、氷魔術が掠った部分を気にしているようだ。


 いや……。


「何だ今の!?」

「何が起きたの……?」


 俺の驚きを代弁する可能酔うな志郎と日和の声が聞こえてくる。


 いや、本当に何が起きた?


 そもそも、今のはどう見ても人の動きとは思えない。

 身体を捻った時に星力を放出して、タイミングをずらしたのか?


 とにかく、次の策を練らないといけない。

 今のが避けられた以上、不意打ち0距離でもない限り避けられるんじゃないのか?


 画架座はまだ動いていない。

 どう攻めればいいんだ?



 そう思ったとき。

 突然、画架座が苦しみだした。



 身体中央にある絵を抑えるように。



 俺達3人は状況がわからず、見ていることしかできない。




 その数秒後、画架座の両手の隙間から光が漏れ始めた。




 その直後、光と共に何かが日本庭園上空に飛び出した。




 それは2人の人影。

 



 その片方は。

 行方が分からなくなっていて、俺達探していた3人のうちの1人。




 白上しらかみ 由衣ゆいだった。

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