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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
11節 蠢く気配
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第181話 元の世界に

 絵に吸い込まれた後、目を覚ました場所である無人の街で脱出手段を探す私、ゆー君、すずちゃん、一色いっしきさん。


 そんな私達の前に、身体の真ん中に一色さんの絵が埋まってる堕ち星が現れた。



 そして堕ち星に埋まってる一色さんの絵から、謎の水が飛び出してきた。

 その水は、凄くひーちゃんの武器の銃から発射される、水弾に似ていた。



 私達が、この人がいない変な街に来たのはあの絵に吸い込まれたから。


 

 ……もしかして。

 じゃあ逆に堕ち星の身体にある絵に飛び込めば、ここから出れる!?



 だったら、早くゆー君とすずちゃんに伝えて、試さないと!


「出る方法、見つかったかもしれません。

 私、ちょっと行ってきます」


 私は一色さんにそう言いながら、立ち上がる。

 同時に左手でプレートを生成してギアに挿し込む。


 そして左手を真上からぐるっと一周させて、ファイティングポーズを取る。


「星鎧生装!」


 その言葉と同時に、私は左手でギアの上側にあるボタンを押しながら両手を下ろす。

 すると、ギアの中心部から牡羊座が飛びだした。


 その牡羊座が放つ紺色の光に私の身体は包まれ、その光の中で紺色のアンダースーツと紺色と赤色の星鎧を身に纏う。



 そして、光は晴れる。



 私はすぐに歩道の柵を乗り越えて、車道に出る。


 そして杖を生成して、3匹の半透明の羊を突撃させる。

 その羊はゆー君とすずちゃんの間をすり抜けて、堕ち星に向かっていく。


 だけど1匹目は腕で叩き潰され、2匹目は足で蹴られて消滅した。



 でも、3匹目は後ろに回り込んでいた。



 堕ち星の背中に半透明の羊が激突する。

 その衝撃で、堕ち星は前へと押される。


 そこに、ゆー君とすずちゃんが武器で攻撃する。



 しかし、その攻撃を堕ち星は両腕で受け止めた。



 堕ち星はそこから、押し合いもせずに後ろに下がった。

 私はその隙に2人に合流する。


「それで、何かわかった?」


 そのすずちゃんの言葉に、私は「絶対って言い切れないけど」と言ってから、考えを口にする。


「さっきの水さ、私はひーちゃんの武器から発射されたやつだと思うの。

 もしそうならさ。こっちからあの絵を触れば、こっちの世界に来た時とは逆で元の世界に戻れるんじゃない?」

「……でも、あの絵が入口なら。何で私達が気が付いたときにはあの堕ち星が側にいなかったわけ?」

「それは……」


 すずちゃんからの返事に私は言葉を詰まらせる。



 そのとき。

 しかしの隅で堕ち星が迫ってくるのが見えた。



 だけど私達が構えるより先に、ゆー君が前に出ていた。



 ゆー君は堕ち星の拳を受け流して、右足で堕ち星の足を払う。


 堕ち星は体勢を崩した。


 でも堕ち星は片足と片手を使って飛び跳ねて、また距離を取られた。

 残されたゆー君がため息交じりに「それ以前に」と口を開いた。


「堕ち星の動きが止められないと、あの絵に入ることもできない」

「それはそう。由衣の羊も私の毒も効いてないみたいだからね」


 すずちゃんの言う通り。

 堕ち星は私の羊に背中から激突されたのに、全然平気そうに動いていた。


 今ままでの堕ち星は、みんなある程度は効果あったはずなのに。


 ……それってつまりさ。


「あの堕ち星って……偽物なんじゃないの?」

「あんなに頑丈な幻ってある?」


 すずちゃんがそう聞き返してきた。


 ……そう言われると、自身が無くなってくる。


 でもそこに、ゆー君が「……いや、ありえない話じゃない」と呟いた。


「本体は元の世界にあったあの絵。

 そして、俺達は堕ち星の中にいる……のかもしれない」

「嘘!?」「……マジ?」


 驚きのあまり、私とすずちゃんはほぼ同時に声を上げた。


「でも結局、あいつの動きを止めないと話が始まらない。来るぞ」


 そんなゆー君の冷静な言葉で、慌てて堕ち星の方を見る。



 すると、堕ち星はまた近づいてきていた。

 もう既に、地面を蹴って跳んでいる。


 でも今回はゆー君が事前に言ってくれたので、私達はそれぞれその場から離れる。


 でも……どうやって動きを止めよう?


 距離ができたので、堕ち星の動きを見ながらそう考える。


 そこにゆー君の「目を閉じろ!」という叫びが聞こえた。

 私は慌てて目を閉じる。


 するとすぐに、目を閉じていても眩しいほどの明るさを感じた。


 ゆー君がフラッシュのカードを使ったんだと思う。


 でも、こんなに眩しいと流石にあの堕ち星でも動きが止まるはず。

 流石ゆー君、頭がいい!



 心の中で感動した直後、何かがぶつかった音がまた聞こえた。



 もう眩しくないので急いで目を開ける。



 すると、ゆー君と堕ち星がもう戦っていた。



 もしかして……今のも効いてないの!?


 私は混乱しながらも、戦うためにゆー君のところへ向かって走り出す。

 そして杖を振りかぶって、堕ち星に向かって振るう。


 でもまた、受け止められてしまった。

 そして跳んで後ろに下がって、また距離を取られた。


 今回はそのまま、走って距離を詰めてくる。

 すると今度はすずちゃんが横から飛び込んできて、槍を突き刺した。


 だけど、やっぱり避けられた。

 もちろん私達も加勢に入る。



 私達ができることはほとんどやった。

 それなのに、この堕ち星を倒す方法が全然思いつかない。


 でも諦めるわけには行かない。

 だから堕ち星の攻撃に対処しながら「何かないかな」と考える。



 すると、ゆー君が「……一応、1つだけ考えはある」と呟いた。

 私は驚いてすぐに「あるの!?」と聞き返す。


「あぁ、俺があいつの動きを何とか止める。

 由衣ゆい鈴保すずほはその隙に絵に触れてくれ。戻れるならそのまま元の世界に戻れ」


 ……でもそれって、ゆー君はこの世界から帰れないってことだよね。


 そう思ってると、すずちゃんが「それ、佑希ゆうき()()()()()ってことでしょ」と言い返した。


「……そんなつもりはない」

「そう。でも、私も残るから」


 すずちゃんが堕ち星を蹴りながらそう言った。


 ……また避けられたけど。


 私は慌てて「でもそれって」と口を開く。


「2人がこの世界から帰れない……ってことになるよね!?」

「そうかもな。でもさっきの水が日和ひよりの攻撃なら、少なくとも向こうに日和がいるはずだ。

 それに向こうで本体を倒したら帰れる可能性はある」

「そうそう。それにもし由衣が帰れたのなら、私達も隙を見て試してみるから」


 すずちゃんがそう言い切ったとき、また堕ち星が襲って来た。

 私達はまた別れて攻撃を避ける。


 だけどすぐに、ゆー君が「俺と鈴保でこいつを取り押さえる。由衣、準備はいいな」と聞いてきた。


 でも……。


「待って!一色さんを連れて帰らないと!」

「放っておけ。俺達をここに吸い込んだ本人だぞ」


 冷たく、低い声でそう言い返してきたゆー君。


 でも。

 例え今この状況が一色さんのせいだとしても、放っておくなんて私にはできない。


 だぁら私は「それでも……さ」と言葉を絞り出す。


「一色さんだって騙されてたんだよ?」

「それでも、本人がやった罪は消えない」


 確かに一色さんを助けても、さっき見た色を失った女の子は戻らないかもしれない。


 でも……だからって……。


 悩んでいると、すずちゃんの「あ~も~!!」という声が聞こえた。


「由衣の好きにさせたらいいでしょ!由衣!一緒に試すなら急いで!」


 すずちゃんはそう言った後、堕ち星を狙ってまた槍を振るう。


 ……急がないと。


 私はすずちゃんに「ありがと!」と叫ぶ。

 そして歩道の柵に隠れている一色さんの元へ急ぐ。


 辿り着いた私は、柵を掴んで「一色さん!元の世界に戻りましょ!」と声をかける。


「由衣さん!?

 で……でも……私は、由衣さん達を……学生さんたちを……」


 そう呟きながら、柵の陰に沈んでいく一色さん。


 でも、ゆっくり話はしてられない。


 なので私は勢いのまま「悪いと思ってるなら、余計に戻りましょ!」と口にする。


「そしてあの怪物を倒して、この世界を消す。

 それに協力してくれることが、今一色さんにできることです!」


 私は少ししゃがんで、一色さんと視線を合わせる。


 ……星鎧で顔が隠れているから、一色さんからは私の目は見えないと思うけど。


 だけど。


「……わかりました。お願いします」


 私の気持ちは、伝わったみたい。


 私は一色さんの言葉に「うん!戻りましょ!」と返す。

 そしてゆー君とすずちゃんに「準備できたよ~!」と叫ぶ。


 そして一色さんが柵を超えるのを手伝って、2人で車道を歩く。


「2人が怪物を押さえつけてくれるので、その隙に絵に触ります。

 私の考えがあってたら、元の世界に戻れるはずです」

「は……はい……」


 作戦を伝えた私は「走ります!」と言って走りだす。


 ただ、私は星力と星鎧で普通の人より速く走れるから一色さんに合わせて。


 元の姿に戻ってもいいんだけど……もし、失敗して堕ち星が暴れたら、私は一色さんを守らないといけない。

 だから、あえて星鎧はこのまま。

 

 そして、ゆー君とすずちゃんが堕ち星の腕を掴んで押し倒したのが見えた。


「由衣!」

「うん!一色さん!一緒に!」

「はい!」


 そして私達は地面に押し付けられた堕ち星の身体の真ん中にある、一色さんの絵に手を伸ばす。



 色鮮やかな絵に、私と一色さんの手が触れる。




 その瞬間。

 私達の身体は強い力に引っ張られて絵の中に引きずり込まれた。

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