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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
11節 蠢く気配
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第177話 何を隠してるの

「そのときの……いえ、私はずっとどうかしていたんです」


 一色いっしきさんがそんな言葉で、話を締めくくった。



 そんな一色さんの頬には、涙が伝っていた。



 一方私は、凄い情報量に少し混乱していた。



 だって。

 こんな苦しくて悲しい理由を聞いて、怒る事なんてできないよ。



 だけど、そこに。


「お前は吸い込まれた人がどうなったのか知ってるのか」


 ゆー君のそんな声が聞こえた。



 その言葉に、一色さんは怯えながらも「……知りません」と呟いた。


「じゃあその目で見てみろ」


 そう言って、ゆー君は手を伸ばしてきた。


 きっと無理やり、一色さんを連れて行くつもりだ。


 そう感じた私は、その手を手首を掴んで止める。

 同時に「だから!怖がらせちゃ駄目だって!」と言葉を投げる。


 すると、ゆー君がため息をついた。

 そしてその後、「それでも」と口を開いた。


「これはそいつが被害者を絵に吸い込んだから起きた。

 自分がやったことの重大性を知るべきだ」

「それは……そうかもしれない……けど……」


 ゆー君が言ってることは間違ってないことは分かる。


 だけど自分のしたことを後悔して、こんなに怯えてしまってる一色さんに、今見せるべきなのかな。


 そう考えていると。

 今度はすずちゃんの「でも由衣」という声が聞こえた。


「私達は見た方が良いと思う。

 ……もしかしたら、本当に出られないかもしれない」


 ……確かに、私は見ておくべきかも。


 そう思った私は、一色さんに「ちょっと行ってきます。すぐ戻ってきます」と言って立ち上がる。

 そして、ゆー君とすずちゃんの背中を追って歩き出す。



 その直前、腕を掴まれた。



 振り返ると、一色さんが私の腕を掴んでいた。



 同時に一色さんは「……私も、行きます」と呟いた。


「あの人の、言う通りです。

 私は、自分のしたことの重さを、知るべきです」


 一色さん本人がそう言うなら……止める必要は無いよね。


「じゃあ、一緒に行きましょ」


 そう言った後、私は一色さんが立つのを手伝う。


 そして、私達4人は歩き出す。

 私とすずちゃんは、ゆー君と一色さんの間に入って。


 向かう方向は、私達が路地に入ってきた方とは反対側に。


 その途中、私はすずちゃんに「ねぇ」と話しかけて気になったことを質問してみる。


「いつの間に吸い込まれた人を見つけたの?」

由衣ゆいが一色さんと話してる間に佑希ゆうきが教えてくれた。

 先に見つけてたらしい」

「そうなんだ」


 確かに、ゆー君は私達と別々の場所で目を覚ましていたみたい。

 一色さんを先に見つけていたぐらいだし、他にも何か見つけていても不思議じゃないよね。


 そう考えてる間に、私達は路地を抜けた。

 そして、先に歩いていたゆー君の「ここだ」という声が飛んできた。



 場所は路地裏から出たところすぐ。

 街路樹の根元。




 そこには、可愛い服を着た女の子が横たわっていた。




 服は普通。

 血も出てないし、怪我をしている感じもない。




 でもその子は、どう見ても普通じゃなかった。





 手足や顔、髪の毛は一切色がなくて、全身真っ白。





 その女の子は、色を失っていた。




 あまりの衝撃に、私の口から「何……これ……」と言葉が漏れる。



 同時に私の頭に最悪の可能性がよぎる。



「ね、ねぇ。これ……まさか……」

「いや、死んではいない。これでも生きている」


 ゆー君の言葉にすずちゃんが「私も確かめた。少しだけだけど脈はある」と呟いた。


「つまりは仮死状態みたいな状態だと思う。

 だけど、いつまで持つかはわからない。

 早く元の世界に連れて出した方が良いだろう」


 とりあえずまだ死んでないみたいでよかった。


 ひゅってなってた気持ちが緩んで、息がしやすくなった気がした。


 でも、どうやってこの世界から……。



 その次の瞬間。

 ゆー君が私達をとすれ違って、一色さんに近づいて行った。



 考えていた私は反応が遅れて、ゆー君を止められなかった。


「これがあんたのやったことだ。

 あんたは自分の身勝手な欲望で他人を命の危険にさらしている」


 音がしない静かな街に、ゆー君の怒りの声が響く。


 少し遅れたけど私は、「ゆー君駄目だって!!」と叫びながら間に割り込む。


 私の後ろからは一色さんの「ごめんなさい……ごめんなさい……こんなことになるなんて……知らなかったんです……」という声が聞こえる。



 その声は、もう完全に涙と嗚咽が混じっていた。



 だけど、ゆー君の言葉は終わらない。



「知らなかった……?

 それだけで済む話じゃない!お前ははあの子を、4人の学生の一生を狂わせたんだぞ!!

 ()()()()に手を出して『知りませんでした、ごめんないさい』で済むわけないだろ!!!」

「ゆー君!!」「佑希!!」


 ゆー君の声より大きな、私とすずちゃんの叫び声が辺りに響く。



 するとようやく、ゆー君は止まった。



 ゆー君を止めるなら、今しかない。



 そう感じた私は「……一色さんは許されないことをした。それは私でもわかるよ」と言葉を返す。


「でも、何でそこまで怒るの?

 私達が今、一色さんを責めたって仕方ないじゃん……」


 また、ゆー君は口を開かない。



 すると代わりに、すずちゃんが「佑希も話さないよね。真聡まさとと同じくらいに」と口を開いた。



「文化祭の後だってそう。真聡が智陽ちはるに澱みが出たのを口止めをしてたことを気づいたのに、私達に黙ってた。

 あと、自分のことも全然話さないし。


 それに、このおかしな空間に吸い込まれたら。普通は脱出優先じゃない?

 なのに佑希は調べるよりも先に一色さんにずっと怒ってる。


 あんたは、何でそんなに怒ってるの?


 ……それは澱みや堕ち星、あと星座の(この)力について。私達が知らないことを知ってるから出る余裕なの?

 あんたは何を隠してるの?何を知ってるの?」


 一呼吸で言い切ったすずちゃん。


 凄い勢いで私はちょっとびっくりしてしまった。



 でも、確かにそうかも。

 私とすずちゃんはずっと脱出するために動いてる。


 だけどゆー君は、合流出来てからずっと一色さんに怒ってる。



 ゆー君もまー君も。



 ときどき様子がおかしい。



 ……ゆー君は、まー君が隠してる何かを知ってるのかな。



 私がそう考えてると、ようやくゆー君は「俺からは……何も言えない」と呟いた。

 それに対して、すずちゃんは「……知ってるんだ」と言い返した。


「やっぱり、私達に隠し事をしてるんだ。

 ……私達、そんなに信用ならない?」

「……そういう訳じゃない。

 ……今、俺が言えるのは。俺達は『そう遠くないうちに、決断しないといけない』ということ。

 だから今のうちにどうするか、覚悟を決めた方が良い。それだけしか言えない」



 ゆー君のその言葉に、私は返す言葉が見つからない。



 というか、意味が全然分からなかった。



 なので素直に「ねぇそれ……どういう意味?」と聞き返す。


「……悪いけど、これ以上は言えない」


 ゆー君はそう言った後、目線を逸らした。



 やっぱり、なにも意味が分からない。



 そのとき。

 辺りに木を叩くような音が響き始めた。




 その音は、どこか足音のようにも聞こえる。




 そして、どんどん音は大きくなってくる。




 どう考えても、おかしい。




 そう思った私は、辺りを見回す。




 すると、別の路地から。

 黒い身体の真ん中に私達を吸い込んだ絵が埋められた異形が。




 堕ち星が現れた。

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