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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
11節 蠢く気配
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第175話 無人の街

 頭がぼーっとする。



 意識がどろんとして、すっきりしない。



 でも、身体が揺すられてる気がする。



 あと声も聞こえる気がする。



 気になるので、耳を傾けてみる。



 その声は、「由衣ゆい。ちょっと由衣。目を覚ましてってば」と言ってることが分かった。

 そして、この声はすずちゃんだ。



 私はなんとか目を開ける。



 すると、すずちゃんの顔がすぐ目の前にあった。



 頭はまだぼんやりする。

 でもとりあえず、返事しないと。


 私は「すずちゃん……おはよぉ……」と返す。

 欠伸と共に。


 すると。


「何寝ぼけてるの。

 ……もしかして、本当に寝てたの?状況分ってる?」


 すずちゃんが呆れたような声でそう言った。


 状況……?

 そもそもさっきまで何してたっけ?


 すぐに思い出せないので、頑張ってこうなる前の記憶を思い出す。


 今日は……美術館に行った。そして絵を見てたら受付のお姉さんが来て……。

 それで……なんか「絵を描く体験させてくれる」って言われたから着いて行った。


 そして、部屋に入ると絵に吸い込まれそうになって……。


「そうじゃん!!絵に吸い込まれたんだった!!」


 私寝てたわけじゃない!

 通りで寝た気がしないはず!


 私は慌てて身体を起こす。

 でもすずちゃんは既に避けていたので顔はぶつけなかった。


 そんな私を見て、すずちゃんが「危機感ないの……?」と呟いた。


 ……そう思われても、仕方ない。


 そんな自覚はあるので、「あはは…………」と笑って返す事しかできない。



 ……いや、だからそれどころじゃないじゃん。



 私は気を取り直して辺りを見回す。



 すると周りには、見覚えのある光景が広がっていた。



 ここは星雲市駅前近くのすり鉢状の広場。

 私はその広場の真ん中の低いところ、ステージにもなるところで目を覚ましたみたい。



 結構来るから、間違えるはずがない。



 本当に星雲市駅前の広場の光景。

 でも、最後の記憶が確かならここは……。


 私は一応、すずちゃんに「じゃあ、ここは絵の中ってこと?」と聞いてみる。

 すると、すずちゃんは「たぶんね」と答えてくれた。



 私はそこで、もう1つの疑問に気が付いた。


「……あれ?

 ゆー君は?」

「わかんない。私が気が付いたときには由衣ゆいしかいなかった。

 吸い込まれたときにはぐれたのか、それとも置いて行かれたのか」


 すずちゃんのその考えは分かる。

 目を覚ましていなかったら、私もその2つを考えると思う。


 でもゆー君は、私達を置いて行ったりしない。


 小学生の頃も、私やさっちゃん、まー君が遊び出したらひーちゃんと一緒に待っててくれた。


 だから。


「ゆー君が置いていくとは思えないから、はぐれたんだと思う」

「じゃあ探さないとね。あとここから出る手段も」


 すずちゃんは私の言葉にそう返しながら立ち上がった。

 私も立ち上がって、身体のあちこちを軽く払う。


 同時に「でもここ、本当にあの絵の中なの?」と聞いてみる。


「絵の中じゃなかったら、昼間の駅前広場に私達しかいないのおかしいでしょ。

 あとスマホも変だし」


 確かにさっきから人の姿が見えないどころか、気配すらしない。

 聞こえるのは、私達が出す音だけ。


 昼間の駅前が、こんなに静かなわけがない。



 ……待って?スマホが変?



 その言葉に驚いた私は、急いでポケットからスマホを取り出す。

 電源ボタンを押して、スリープモードを解除する。



 すると黒い液晶が明るくなって、見慣れたロック画面が表示された。



 画面はつく、充電もある。




 でも電波が圏外で、時計も表示されてない。




 理解が追いつかない私の口から、思わず「え……どうなってるの?」と言葉が漏れる。


「私もわからないわよ。

 ただ、電波がないってことは本当に絵の中ってことなんでしょ」


 その言葉の後、すずちゃんは「ここに居ても仕方ないし、とりあえず移動するよ」と言って広場の外へと歩き出した。

 私はその背中を追いかけて、隣に並ぶ。


 すると今頃、すずちゃんのお腹に巻かれているものに気が付いた。


「……あれ?

 ギア……消えてないの?」

「そう、なんか消えてない。

 ……由衣、自分のも消えてないのに気が付いてなかったの?」


 私はそう言われて自分のお腹に目を向ける。



 確かにギアが巻かれている。



 何で気が付かなかったんだろ……。



 いや、それよりもさ。


「何で消えてないの?」

「さぁ。私がわかるわけないでしょ。こういうのは真聡まさとに聞かないと」

「そうだよねぇ……」


 その言葉を最後に会話が途切れる。

 私達は無言で、駅に向かって歩く。


 私は無言が苦手。

 普段ならこの状況、絶対話しかけてる。



 でも今は異常事態。



 それに喋っててゆー君の声や脱出の手がかりを逃したら大変。


 だから我慢して周りを警戒しながら歩く。



 そして私達は高架下の歩道を通って、広場と反対側にある駅前ロータリーまで来た。

 辺りを見渡すために、改札に続く歩道橋を上る。



 ロータリーに車はある。

 バスも止まってる。



 だけど、人が誰もいない。




 ここに来るまでもすずちゃん以外、誰にも会ってない。




 まるで、模型の街に迷い込んだ気分。



 思わず私は、「……本当に誰もいないね」と呟く。

 すると、すずちゃんは「というか」と口を開いた。


「絵の中なのに広くない?」

「確かに……」


 確か外で見た絵は、駅の下から改札を見上げる形で描かれていた。

 でも私達が目を覚ましたのはその絵の外の広場。


 ……どうなってるの?



 そのとき。



 無音だった街に、何かの音が響いた。


「由衣、今の」

「うん。聞こえた!行こ!」



 どこから聞こえたのかわからない。



 でも、何かの手がかりが掴めるかもしれない。



 そう思った私達は、音の原因を探すために無人の街を走り出した。

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