表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
11節 蠢く気配
176/213

第174話 厄介ごと

 せっかく1人で過ごせると思い、出かけようとしていた休日。

 そこに日和ひより志郎しろう智陽ちはるの3人が押し掛けてきた。


 それからしばらく、4人で雑談をしていた。


 今は日和と智陽が日和の買った雑誌の話で盛り上がっている。

 話の外にいる俺はソファーから移動して、作業スペースの椅子からそんな2人をぼんやりと眺める。


 すると、会話に入れていない志郎が近くまで来て「そういやさぁ」と話しかけてきた。


「相談したいことがあるんだけど聞いてくれるか?」

「なんだ」

「いやぁ……流星群が上手くできなくってさぁ……」


 流星群。

 星力を流星群のように撃ちだす技。


 ペルセウス座との模擬戦以降、メンバーは定期的に使うための特訓をしている。

 だが使えるのは流星群が存在するとして有名な星座だけだろう。


 実際、ペルセウス座が撃った流星群と同じ青白い光を出せているのは志郎と佑希ゆうきだけだ。

 そして2人を獅子座と双子座、実際に有名な流星群が存在する星座だ。


 だから、山羊座の俺は使えないはずだ。


 そう思ってはいるが、由衣や智陽に「諦めないでよ!」などと色々言われる。

 そのため一応、一緒に練習はしている。



 ……この話は前にしたはずなんだがな。


 そう思いながら俺は「俺に聞いてどうする」と返す。


「でもよ!ペルセウス座の他には真聡しか聞く相手いねぇんだよ!な!」


 志郎は、わりと由衣ゆいと似ている。

 押しが強く、なかなか引かない所が。


 ……まだ志郎は引き際はわかってるし、突拍子もない言動はしないが。


 だが、これは多分乗らないと引かないやつだ。


 そう感じた俺は「……当てにならなくても文句言うなよ」と返す。


「言わねぇって!

 んで……どうすればいいと思う?」


 丸投げかよ。

 何が聞きたいかもう少し考えてから聞いてくれ。


 そうは言っても話にならないので、俺は志郎に「何で困ってるんだ」と聞いてみる。


「ん~~~。あ、ほら。からす座やペルセウス座が流星群を撃つときはさ、周りに……星力?を集めてから撃ってただろ?

 俺、あれがまずできないんだよなぁ……」


 確かに、からす座が使ってたしぶんぎ座流星群や見せてもらったペルセウス座流星群は周囲に魔力や星力の塊を展開していた。

 しぶんぎ座は黒、ペルセウス座は青白い光を。


 だがそもそも周囲に魔力の塊を展開するのは、確か高等部で素質がある魔師だけが学ぶ難しい技術のはずだ。

 それを適正もわからない、数カ月前まで一般人だった人間がいきなり使えるわけがない。



 神遺保持者と成ろうとも、そういう問題点は魔師と同じはずだ。



 じゃあどうすればいいか。



 まずは……志郎の適正や得意なことは何だ?



 そこで、俺は1つの打開策が浮かんだため口を開く。


「志郎はガントレットから斬撃を飛ばせたよな」

「できるけど……それは流星群に関係あるか?」

「さぁな。だが、星力を飛ばすことはできるんだ。そっちから考えたらどうだ?」

「そっちから……どうしたらいいんだ……?」


 思わず出そうになるため息を堪える。


 でもまぁ……そうだよな。


 これは魔術の基礎などをすっ飛ばして戦わせてる俺が悪い。



 だが、知りすぎたら戻れなくなる。



 しかし、ここで話を逸らすと不自然だ。



 なので俺は仕方なく、必要そうな情報だけを選んで口にする。


「周囲に星力を展開できなくても、飛ばすことはできるんだろ。

 だったらまずは、拳から青白い光を飛ばす方向でやってみたらどうだ」

「それで……流星群になるのか?」

「それはわからん。そもそも『俺は使えないはず』だと言ってるだろ」

「あ~……。

 ま、まぁとにかく参考にしてやってみるわ!ありがとな!」


 そう言って志郎は俺の背中を思いっきり叩いてきた。


 ……地味に痛い。


 なので「叩くな」と言おうとしたとき。

 サイドテーブルの上に置いてある、俺のスマホが震え始めた。


 そして、スリープモードの黒い画面が光を放つ。


 あの画面はメッセージアプリの通知ではなく電話だ。


 俺は「悪い」と言ってから、志郎の手を払らってスマホに手を伸ばす。

 予想通り、電話がかかってきている。



 そして相手の名前は「丸岡刑事」と表示されている。



 ……厄介ごとの予感がする。



 とりあえず、俺は今いる3人に「ちょっと電話に出てくる」と言ってから部屋の外に出る。



 そして受話ボタンを押す。



「お待たせしました。陰星いんせいです」

『丸岡だ。悪いな休みの日に』

「いえ。事件ですか?」

『まぁ……事件と言えば事件だな。

 とある施設で従業員が客と物置に入ってから出てこない。そして物置の扉が開かないって通報があってだな。警察官が行ったところ本当に扉が開かないらしい。

 扉を壊そうとも、扉には傷もつかないそうだ』


 ……何で扉が開かないだけで俺にまで連絡が来るんだ。


 だが確かに、傷がつかないのは変だ。


 俺がそんな疑問を抱いているとスマホから『何か気になることがあったか?』と丸岡刑事の声がした。

 聞かれたので素直に疑問を言葉にする。


「扉が開かないだけで、何で俺にまで連絡が来るんですか」

『怪物事件が続いている以上、警察としても警戒しないといけないからな。

 だから少しでも変な事件なら超常事件捜査班うちに話が来るようになっててな。

 それに、傷が1つもつかないのは変だと思わないか?

 今回は従業員以外にも、客の巻き込まれてるらしくて人数が多い。だから連絡したんだ』


 ……確かに妙な話だ。


 そして警察ならある程度は手を尽くしているのだろう。

 それなのに開かない。


 そうなると、何か神遺や魔術が絡んでる可能性が出てくる。

 現場に行ってみる価値はあるかもしれない。


 そう感じた俺は「現場はどこですか」と尋ねる。


『現場は星雲市の邸宅街にある小さな美術館だ。名前は……』

彩光さいこう 風色ふうしき美術館」


 星雲市邸宅街にある小さな美術館。


 聞き覚えしかない立地を聞いた瞬間、全身が冷たくなった気がした。

 そして、気が付けば丸岡刑事よりも早く口が動いていた。


 一方、スマホからは『よくわかったな』と丸岡刑事の少し驚いた声が聞こえてくる。


『行ったことがあるのか?』

「……今日、3人の友人がそこに行ってるんです」

『まさか……』


 恐らく、丸岡刑事も同じ可能性が浮かんだのだろう。


 こうなると、話が変わってくる。


 深呼吸して、自分を落ち着かせる。

 そして頭を切り替えながらも、会話を続ける。


「今日は連絡を取ってないので可能性としてはあります。

 急いで現場に向かいます」

『俺も今から現場に向かうから乗せて行こう』

「……わかりました。準備して警察署に行きます」

『おう。待ってるぞ』


 その言葉に対し、「失礼します」と断ってから電話を切る。

 そして、急いで扉を開けて部屋に戻る。


 中に戻ると、志郎と智陽が「誰からだ?」「何だったの?」と口々に聞いてきた。 

 俺は「ちょっと用事が出来たから出てくる」と返す。


 「念のため、いくつかプレートを持って行こう」と思い棚に視線を向ける。



 そこで、重要なことに気が付いた。



 俺は思わず自分が気づいていないことに驚いてしまい、動きが止まる。



 丸岡刑事の話を聞いたときはまだ「由衣達は関係ない。どこかで楽しく休日を過ごしているだろう」と思っていた。




 だがこうなった以上、その可能性は限りなく低くなった。




 確実に、由衣達は厄介ごとに巻き込まれている。



 そこに「今度はどうしたの?」という日和の声が聞こえた。

 驚きと焦りが渦巻く俺は思わず反射的に、動きを止めてしまった原因を口にする。


「レプリギアがない。

 ……ちょうど3人分」


 そう。棚からはレプリギアが3つなくなっていた。

 置いてある順番的に由衣、鈴保すずほ、佑希の分だろう。


 そして日和も棚を見て「……本当だ」と同意の言葉を発した。


「待って。何が起きてるの?」

「そうだぞ。説明してくれないとわかんねぇぞ」


 後ろから智陽と志郎の言葉が飛んでくる。


 連れて行く気はなかったが、状況は変わった。


 だが、急がないといけない。

 なので俺は仕方なく重要な情報だけを選んで伝える。



 そしてざっくり聞き終わった後、日和が「つまり」と口を開いた。


「由衣達が行った美術館で従業員とお客さんが部屋から出てこない」

「んでその部屋の扉が開かない……まさか立て籠もりか!?」


 日和に続いて志郎が俺の説明を復唱する。

 そしてとんでもない志郎の推測に智陽が「でも」と口を開いた。


「要求とか何も出てないなら、そうとは限らないんじゃない?」

「あぁ。そういう方向ではないだろう」


 すると、智陽の視線が俺を捉えた。

 そしてそのまま「で」と口を開いた。


「3人のレプリギアが無くなったのに、何で気が付かなかったの?」

「お前だって鈴保に説明した時にいたから、レプリギアの転送見てるだろ。

 あれは結構気が付かないものだ」

「でも真聡まさと、午前中は1人でいたんでしょ?

 それなら気が付きそうなものだけど」


 智陽が鋭く切り込んでくる。


 ……誤魔化せないな。


 そう感じた俺は渋々、何をしていたか口にする。


「課題をしていて気が付かなかった」

「どれだけ集中してたの……?」


 智陽が凄く呆れた声でそう呟いた。


 ……途中、集中できないので以前に由衣から送られてきた「お気に入りのAus(アス)のカバーリスト」を聞いていた時だったんだろうか。



 ……もっと気を引き締めないといけない。



 人の命を預かっているんだ、俺は。



 そう思っていると、日和がスマホを出しながら「とりあえず、3人に連絡取らないと」と呟いた。


「だな!俺は鈴保にしてみるわ」

「私は由衣に」


 志郎と日和が順番にそう言って来た。

 俺は続いて「佑希は俺がする」と口を開く。


「智陽は堕ち星や澱みの出現情報を念のため探ってくれ。

 それと、現場まで丸岡刑事に車に乗せてもらうことになってる。だからとりあえずここ出るぞ。荷物は最低限にしろよ」


 3人にそんな指示を出して、俺は部屋を出る準備をする。

 同時に3人も自分の荷物を片付け始める。




 こうして。休日の平和な時間は、不安感と共に幕を下ろしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ