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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
10節 親心、子心
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第170話 仲直り

 私達は、何とかとかげ座を元の人間に戻せた。

 正体は、眼鏡をかけたスーツ姿の男。


 ……まぁお父さんの同僚らしいし、納得の恰好。


 そんなことを考えていると、反対側の真聡まさと由衣ゆい日和ひよりが男に近づいていくのが見えた。


 志郎しろうもそれに気づいたのか、「俺達も行くか」と行って男の方へ歩いていく。

 もちろん佑希ゆうきも歩いて行く。


 そんな2人の後を追って、私も歩き出す。



 そして前へ1歩、踏み出したとき。




 突然、視界がまわった。




 同時に、紺色と深紅色の光と共に星鎧が消えた。




 そして私の身体は重力に負け、前へと倒れていく。




 力を入れて踏ん張ろうとするも、地面が近くなってくる。




 ヤバい。




 そう思った次の瞬間、私の身体が止まった。

 右側から身体の前を通って左肩を掴んでいる腕に支えられて。


 次の瞬間「鈴保すずほ!?大丈夫か!?」という声が飛んできた。



 その手と声の主は志郎だった。

 顔を見えないけど、このうるさい声でわかる。



 ……ちょっと張り切り過ぎたのかも。



 でも、大したことじゃない。



 私は「大丈夫、ありがと」と言って立とうとする。



 でも、上手く立てない。

 足に力が入らない。



 そのまま私は志郎の手をすり抜けて、しゃがみ込む。



 すると志郎が「あぁ~もう無理すんなって!」と言って来た。


「ほら、肩貸すぞ?何なら背負うぞ?」


 そう言いながら、志郎はまた私の目の前に手を出してくる。



 ……流石にそこまで手を借りたくない。背負われるとか絶対に嫌。



 でも、やっぱり身体に上手く力が入らない。

 1人で立てる自信がない。


 なので私は「そこまでしなくていい」と言葉を返す。


「でもちょっと、立つのに手を貸して」

「……遠慮しなくていいんだぞ?」

「してない」

「ならいいんだけど……」


 そう呟いてる志郎の手を取る。

 すると志郎は私の手を引っ張って、スッと立たせてくれた。


 私は「ありがと」と言いながら手を放して、もう一度みんなの方へ歩き出す。


 するとみんなはちょうど、星鎧を消滅させて高校生の姿に戻ったところだった。


 私は「ところで」と口を開いて、隣の志郎にさっきから気になってることを聞いてみる。


「何で志郎はもう戻ってるわけ?」

「いや、鈴保の星鎧が消えたからさ。俺も支えるなら星鎧ない方が良いかなって。

 ほら、あると痛かったら嫌じゃね?」


 ……何それ。

 志郎ってデリカシーないときあるのに、変なとこで気が利く。


 何か少し恥ずかしくなってきたので、私は「そ」と返す。


 そこで、もう1つ気になってることがあったのを思い出した。


「というかさ、何であんたが私が両親と揉めてるの知ってるの?

 私言ってないよね?」

「あ……いや、それは……」

「それは私が教えちゃったの……本当にごめん!」


 志郎が言い淀んでいると、由衣が会話に入ってきた。


 いつの間にか、みんなのすぐ近くまで来ていたみたい。


 いやそれより。


 「何で勝手に言ってるの」


 私はそんな言葉を投げようとする。

 しかし、それよりも早く志郎が「いやいや!」と口を開いた。


「俺が由衣に聞いたんだよ!悪い鈴保!勝手に聞いちまって!」

「いや、私が先に言ったの!

 もし何かあったら困るからさ!」


 そのまま志郎と由衣は「俺が」「私が」と言い合う。


 ……何でこの2人はお互いをかばいあってるの?


 そんなことを思いながらも「で」と口を開く。


「どっちが先に言ったの?怒らないから」

「「それ怒るやつ!」」


 由衣と志郎が声を重ねて返してきた。

 私はそれを気にせず「怒らないから早く」と急かす。



 すると、志郎が目を逸らしながら「……俺が先に聞いた」と呟いた。


「だってよ。鈴保……なんか様子がおかしい気がしたからさ……」


 やっぱり。

 何となくだけど、由衣は許可がないとこういうことは他の人に言わない気がしてた。


 だから「志郎が聞いたんだろうな」と思ってた。


 ……でもまぁ。


「ありがと、心配してくれて。

 志郎がさっき時間をくれたから、両親ともちゃんと話せたし」


 私のその言葉に「よかった~~!」と由衣が安堵の声を上げる。


 ……何で由衣が喜んでるわけ?


 そう思っていると、志郎が「鈴保……変わったな」と呟いた。

 だけど、理解が出来なかった私は「……は?何言ってるの?」と返してしまった。


「いや、前はもっと……こう……ツンツンしてただろ?

 あと何考えてるかわからなかったし。

 でも今は、全然そんなことねぇじゃん」

「前って……いつの話してるの。

 というか何。志郎、私のことそんなに見てたの」


 そこまで長い付き合いじゃないはずの志郎にそう言われた。

 その驚きから私は辛辣な返事をしてしまった。


 すると志郎は「いやほら!」と慌ててるような口調で言葉を続ける。


「体育委員一緒だっただろ!?そんときの話だよ!

 あのときの鈴保、何考えてる変わらなくて怖かったんだよな……」

「あぁ……そういえば……」

「私も最初にあったときのすずちゃん、ちょっと怖かったなぁ……」


 由衣までそんなことを呟く。


 でもよく考えれば、今は11月。

 由衣達とはもうすぐ知り合って4ヶ月、志郎に至っては7カ月になる。


 短いようで、もう長い付き合いになってる。



 そう思っていると「すずほちゃん!」と私の名前を大声で呼ぶのが聞こえた。



 この声と呼び方は間違いない。

 確信を持ちながら声がした方へ身体を向ける。



 その瞬間、私は抱きしめられた。


「すずほちゃん大丈夫!?怪我はして……あぁ!ここも!こっちにも擦り傷が!」


 そう言いながら、お母さんは少し離れて私の全身を確かめるように触る。

 私は我慢にできずに、後ろに下がってさらにお母さんから離れてから「だから!」と口を開く。


「そういうところが嫌なの!それにこのくらいの傷は普通だし!」

「まぁ!でもやっぱりママは可愛いすずほちゃんが怪我するのは嫌だわ……」

「だからこのくらいは……お父さんは?」


 いつもなら絶対2人一緒に心配してくる。

 なのに今はお母さんだけ。



 嫌な予感がした私は辺りを見回す。



 するとお父さんはすぐに見つかった。

 真聡と何か話してる。



 私はさらに嫌な予感がして思わず走り出す。


 色々話している間に星力も体力も少しは回復したらしい。

 普通に走れる。


「これからもどうか、うちの可愛い娘を頼む」

「……はい。必ず守ります」

「ところで……何かお礼がしたいんだけど……何がいい?」

「ちょっと!?何してるの!?」


 私はそう叫びながら2人の間に割り込む。

 そして真聡を押しやって、お父さんと向き合う。


「鈴保!!大丈夫か……ってあぁ……あっちもこっちも怪我して……」

「それはいいから!というか真聡を困らせないでくれる!?」

「いやでも鈴保。大事な娘をお願いするんだ。その相手が年下としてもパパは父親としてね」

「だから!!そういうのが嫌なんだって!!」


 私のその返しに、お父さんは「そ……そうか……」と少し寂しそうに呟いた。


 何か、気持ち小さくなった気がする。


 ……確かに、私にも悪いところがあるかもだけどさ。

 本当にお願いだからもうちょっと反省して欲しい。

 やられる身にもなって欲しい。


 なんかまた一気に疲れた気がしてきて私は、思わずため息をつく。


 一方、お父さんは追いついてきたお母さんに慰められている。


 ……恥ずかしい。


 そこで、真聡が「でもまぁ」と声をかけてきた。


「良かったな。仲直りが出来て」

「できたように見える!?」

「見えるよ?

 だってすずちゃんの顔、この前よりも明るいもん!」


 気が付くと置いてきた由衣が真聡のすぐ横まで来ていた。

 その由衣は真聡に「ね~!」と言っている。


 真聡はそんな由衣に「あぁ」と返す。


 ……でも、確かに。

 高校入学前の私はきっと想像できない。

 梨奈と颯馬、そして両親ともまたちゃんと話せることに。


 そして、新しい友達もできたことに。


 人って本当に短い期間で変わる。

 良い方向にも、悪い方向にも。


 少し感傷にふけっていると、真聡が「とりあえず」と口を開いた。


「ここから移動するぞ。現場検証が始まるし俺達も捜査協力しないといけないからな」

「ほらすずちゃん!行こ!」


 由衣に促されて、私は歩き出す。

 チラッとお父さんを見る。


 するといつの間にか来ていた警察から事情を聞かれていた。


 というか既に他にも警察官がいて、現場を調べ始めてる。

 これは確かにもう移動しないといけない。



 ……お父さんとお母さんとは、また後で。

 もうちょっと話そう。



 そう思いながらも、私は先に歩いている仲間たちの背中を追いかけた。

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