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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第144話 よくあること

 生徒達の楽しそうな声が校舎内に響き、楽しそうな空気が漂っている。

 こういう空気は苦手だ。


 しかし、平和な証拠であるとして気にしないことにする。


 そんな空気の中。椅子に座って暇を持て余す俺の頭は、逃げるように考え事を始める。


 今日は10月の第1土曜。

 地下貯水路での戦いから約2週間が経った。


 あれからへび座もからす座も。

 それどころか堕ち星すら現れていない。


 1学期終業式前後から大量に出現していた澱みですら、あの日を境にいきなり出現回数が一気に減った。


 あの日以来、戦闘した回数は……2回ぐらいだろうか。



 やはり、2体の堕ち星は死んだのだろうか。



 そもそも身元すらわかっていない。

 へび座に至っては人間の姿すら見たことがなかった。


 それにこの世には、人ならざるモノが人に化けることもある。


 そのため俺の中には「あの2体は本当に人間だったのか」という疑問すら生まれていた。


 というのを含めて協会に報告してみた。



 だが、あまりいい返事は帰ってこなかった。



 しかし、俺が当初この街に来た理由である「星雲市で観測されていた魔力の異常」は解消されたと言われた。


 あの地下貯水路での戦いの直後にそう言われたことから、俺はその異常の原因を「へび座のあの儀式だった」と考えることにした。


 そして当初の目的を果たしたとなると、俺はもうこの街にいる必要はない。

 神遺保持者である以上、この街を離れる指示が出ることを覚悟した。


 しかし、出た指示は現状維持。

 つまり待機だった。


 ……協会上層部はいい加減だ。


 だがその指示は「由衣ゆいを始めとした他5人の神遺保持者も、このまま普通の生活をしていていい」ということになる。


 そう考えると凄く複雑な気分だ。


 そして1つの考えがここ数日、俺の頭の中で渦巻いている。



 俺の帰還指示が出るまでに、由衣達を星座の力から切り離した方がいいのではないか。

 


 まぁ、そもそもどうやって切り離すのかが問題なのだが……。



 そのとき。

 俺は左の爪先に鈍い痛みを感じた。


 俺は反射的にその元凶に「智陽ちはる。お前」と言葉を投げる。


「いや、お客さん来たから。ほら」


 そう言われて、自分の目の前に意識を移す。

 そこには、同じ星芒高校の制服を着た女子生徒2人が立っていた。


 そう。俺はただ座って暇を持て余していたのではない。


 今日は文化祭で、今はその出し物の店番をしている。


 俺は智陽と2人でブラックボックスの担当。

 「箱の中に手を入れ、手の感覚だけで入っているものを当てる」といった内容だ。


 客の前で口論は出来ないので、俺は口を閉じて智陽と共に箱の中身を準備する。

 中身は店番がクラスで用意した候補が入った入れ物の中から選ぶ。


 そして俺はガチャガチャの景品の根付の小さなぬいぐるみを、智陽はこっちもガチャガチャの景品の仏像の模型にした。


 ……チョイスどうなってるんだ、うちのクラス。


 用意ができたので女子生徒に声をかける。


 そして、挑戦が始まった。

 仏像の模型が中身になってしまった不幸な女子生徒はとても混乱している。


 ……いや、仏像の模型なんて触っただけでわからないだろ。



 しかしその女子生徒は、きっちり仏像の種類まで言い当てていた。

 正直、少し恐怖を覚えた。


☆☆☆


 約1時間後。

 次の店番役のクラスメイトが来たので俺達はようやく店番から解放された。

 しかし教室は出店になっているので出ていく必要がある。


 というか由衣に連れまわされることになっている。「せっかく文化祭なんだからみんなで楽しもうよ!」と。

 なので一緒に行動するために、俺達7人は全員店番の時間を合わせてある。


 そして校内を歩き回るために荷物を用意していると、智陽が「……1時間半店番はめんどい」と呟いた。


「だな。……というか、踏むことはないだろ」

「声かけても気づかない真聡が悪いと思うんだけど?」


 ……それは確かに俺が悪いか。 


 そう思ったとき、後ろから「2人ともお疲れ~!」という元気な声と共に由衣がやってきた。

 ちょうど準備ができた俺達は返事をしながら立ち上がる。


「じゃあ、行くか」

「まずひーちゃんとしろ君と合流だからね!」

「そうだな。連絡は来てるか?」

「えっとねぇ……」


 そんな会話をしている由衣と佑希ゆうきに続いて教室を出る。


 するとまた後ろから、今度は「ちょっと……いい?」と声を掛けられた。

 その声の主は……。


「麻優ちゃん!?どうしたの?」

「私も混ぜて欲しいなぁ~なんて……」


 振り返ると、同じクラスの長沢ながさわ 麻優まゆがいた。


 どうやら一緒に行動したいらしい。

 そういえば役は違うが、同じ時間帯に店番だったな。


 ただそう言われると恐らく由衣は……。


「もちろんいいよ!!」

「本当に?ありがと~!」


 ……だろうな。


 だが今日はメンバーだけで行動する話だっただろ……。

 まぁ、鈴保は星鎖祭りのときと同じで別行動だが。


 だがそこに無関係の長沢か……。


 一応言うが、長沢が嫌いなわけではない。

 ……面倒だと思うときはあるが。


 俺が気にしているのは面識がない日和ひより志郎しろうがどう言うかだ。


 だが俺が考えているうちに、由衣は長沢と話しながら人が行きかう廊下を進んでいく。


 そのとき。

 肩が軽くたたかれた。


 そして「お前の言いたいことは分かるが行くぞ」という声が飛んできた。

 続いて「見失ったら探すの面倒だし」という声も


 そして佑希と智陽が俺を追い越して、2人を追いかけていく。

 俺もとりあえず先頭2人を追いかける。


 そして俺が追いついたときには既に、2人は集合場所である渡り廊下の窓際で他クラスの2人と合流していた。


「でも本当にいいの?いきなり私が入って……」

「俺は全然問題ないぞ!由衣の友達なんだろ?

 だから俺は全然いいけど……日和は大丈夫なのか?」

「私は何回か話したことあるから」

「なんか……ごめんね?」


 どうやら目立った問題はなさそうだ。

 そしてそのまま由衣、志郎、長沢の陽キャ3人組による「どこから行く会議」が始まった。


 それと同時に俺達が後ろにいることに気が付いたらしい日和がこちら側に来た。

 ちょうどいいので俺は日和に疑問をぶつける。


「本当にいいのか」

「何が?」

「長沢 麻優だ。いきなり増えて嫌じゃないのか」

「ちょっと驚いたけど、遠足とか体育祭で話したこと。覚えててくれたし。初対面ってわけじゃないから。

 あと私だけ嫌がるのもあれだし。それに、()()()()()()だし」


 肩をすくめるような感じでそう言った日和。

 俺は「……そうか」とだけ返す。


 だが今の発言から俺は、日和はもう必要以上に心配しなくて良いと感じた。


「まー君とひーちゃんはどこか行きたいとこある~?」


 その発言で由衣達の方を見ると、佑希と智陽まで混ざって話が進んでいた。


 ……いや別に俺は面倒だからどこにも行きたくないんだが。


 だがそう言うとまた由衣にいろいろ言われる。

 そう思っていたとき。



 言い争う声が耳に入ってきた。



 その声がした方向を見ると、渡り廊下を渡った先。

 反対側の校舎で星芒高校の制服を着た4人の女子生徒が、手前側にいるいかにもガラの悪い2人の男に絡まれている。

 そしてその2人は見慣れない学校制服を着ている。


 ……いくら文化祭で入校自由とはいえ、問題起こしそうなやつ入れるなよ。

 実際起こしてるし。受付は何してるんだ。


 心の中で文句を言っていると、由衣がとんでもない言葉を口にした。



「……あれ、助けた方がいいよね?」

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