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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第143話 生徒指導!?

 翌日。

 まだ地面は濡れていて湿度も高いが、太陽が街を照らしていた。

 台風は夜中の間に通り過ぎたらしい。


 そんな朝、俺は1人で学校に向かっている。


 なぜ1人か。

 それは……。


「やっっっと追いついた!!!まー君おはよ!!!」


 その聞き慣れた騒がしい声と共に背中が押された。


 一晩経って星力も体力もある程度は回復しているので、転けることはない。

 だが驚きはするので止めてほしい。


 由衣ゆいは今朝、寝坊したらしい。

 そのため、俺は1人で先に行くことにした。


 ……しかしこいつ、普通に追いついてきたな。


 とりあえず俺は挨拶を返す。

 そこに後ろから「ちょっと……」という声と共に、荒い呼吸が聞こえてきた。


「昨日の今日で、何で朝からそんなに走れるの……私を置いてく気……?」

「あはは……ごめんねひーちゃん……」


 日和ひよりは「本当に……もう……」と返してから、電柱に掴まって立ち止まってしまった。

 どうやら追いつくので体力を使い切ってしまったらしい。


 俺達は立ち止まって、由衣の話を聞きながら日和が息を整えるのを待つ。

 どうやら、今日から日和も一緒に登校することになったらしい。


 ……いや別に俺的には勝手に由衣が朝からついてきてるだけなんだが。


 そして日和が落ち着いたようなので、俺達はまた学校に向けて歩き出す。

 そして歩きながら俺は疑問をぶつける。


「そもそも2人は一緒に登校してなかったのか」

「最初はしてたんだけど……途中から私がまー君を迎えに行くようになったから……」

「私が『それなら1人で行く』って言って、そこからは一緒に行くことはなくなった」


 その言葉に由衣は、悲しそうな声で「その件はごめんよぉ……」と呟いた。


 なるほどな。

 なぜ由衣だけが迎えに来るのかと思ってたが……そういうことか。


 そう考えた俺の口から「つまり、俺のせい……と」と言葉が漏れる。


「まー君!?」

「そうね。真聡のせい」

「ひーちゃん!?」

「「冗談」だ」


 日和と声が重なる。

 すると由衣は「も~~!!焦るじゃん!!」と少し頬を膨らませて、左右にいる俺と日和の顔を交互に見る。


 それを日和が「冗談だから」と宥めている。

 だが普段は振り回されているため、たまにはこうしてからかいたくもなる。



 まぁ、俺は後ろめたさから出た言葉だが。



「まぁでも、こうして3人一緒に行けるからいっか!」

「うん。やっぱり由衣はそうじゃないと」

「やっぱり~?」


 そう言いながら由衣は照れ臭そうに笑ってる。

 朝から元気だな、本当に。


「そうだ!せっかくだし、ゆー君も誘おうよ!

 さっちゃんは居ないけど……あの頃みたいにさ!」

「由衣がそうしたいなら私は何でも。

 ……でもまぁ、確かに佑希ゆうきだけ仲間外れみたいなのは私も嫌かな」

「じゃあ、決まり!」


 そう言い切ると、由衣はまた走り出した。

 その後ろを日和が「だから走らないでって!」と言いながら追いかけていく。


 ……元気すぎるだろこいつら。


 ちなみに、由衣は登校してから佑希にこの話をしたが、()()()断られていた。


☆☆☆


 その日の放課後。

 日和を含めた俺達7人は各自担任からの呼び出しで1つの空き教室に集められた。


 多分この3日間の休んだ授業の補修についてだと思うんだが……。

 まぁ、誰が来るかは知らないが……先生が来るはずだ。


 とりあえず、各自思い思いの場所に座って時間を潰す。

 俺は窓際の席に座り、外を眺めている。


 するとすぐ近くで固まって座っている由衣の「……本当に補修なのかな」という呟きが聞こえてきた。

 すると「それ俺も思った!」と志郎しろうが言葉を返した。


「いや普通に補修でしょ」

「でもよ鈴保すずほ、由衣達のクラスと俺達のクラスと日和のクラス。休んでた間の授業全部一緒だったわけじゃないだろ?」

「まぁそれはそうだけど……被ってる授業もあるでしょ」

「でもいきなり全員呼び出されてるんだぜ?本当に補修か……?」


 俺は鈴保の考えがあってると思うんだが……なぜ志郎はそこまで食い下がる。

 そう考えていると、「……もしかして」と由衣が口を開いた。


「私達怒られる……生徒指導!?」

「うわそれだろ!

 そういや真聡まさと……あの生徒指導の御堂みどうと職員室で言い争いしてたよな……」


 流石に我慢が出来なくなり、俺は「なんだ、俺のせいか?」と言葉を投げ返す。


 だがそれはないだろ。

 いくら何でも由衣と志郎の想像は飛躍しすぎだ。


 そんな2人に鈴保が「いやないって。普通に補修だって」と言っている。


 ……あっちの2人は任せるか。


 まったく。静かに座って時間を潰している佑希、智陽ちはる、日和を見習ってほしいものだ。


 日和に至っては由衣が隣に座ったお陰で、会話に参加してないのにあの騒がしいのに巻き込まれている。


 ……少し可哀想だ。


 そんな事を考えていると、教室の扉が開いた。

 入ってきたのは俺のクラスの担任であるタムセン。

 手に結構な量のプリントを持って入ってきた。


 そしてその顔を見た瞬間、志郎と由衣は問答無用で口を開いた。

 手元を見ればわかるだろうに。


「説教すか!生徒指導すか!」

「私達覚悟はできてます!」


 そんな早とちり2人組を鈴保と日和がそれぞれ引っ張って座らせる。


 人数が増えたから俺がツッコまなくていいのは助かるな……。


 そして2人が座ったところで、タムセンが俺達が集められた理由を口にした。


「いや、普通に補修の件だぞ。

 お前達が怪物との戦いで授業を抜けるのは理事長から許可が下りてる」


 その言葉に由衣と志郎は「よかった~~!!」と安堵の声を上げる。


 いや、お前ら2人が勝手に勘違いしてだけだからな?


 心の中で突っ込みを入れていると、タムセンが持ってきたプリントを7つの山に分けた。

 それを見て、また由衣と志郎が食いついた。


「なんか2つだけ量少ないですか……?」

「というか何の授業するんすか?」

「今回の補修はこのプリントだ。本当は授業の予定だったんだが……もうすぐ文化祭だからな。

 先生達も文化祭準備で忙しいから今回はプリントになった。提出は文化祭前最後の授業までに各自提出だ。

 で、少ないのはこっちが華山はなやまでこっちが水崎みずさきの分な」

「なんでちーちゃんとひーちゃんの分だけ少ないの!?」

「私は昨日抜けたのは午後だけだから」

「あ……そっか……」


 智陽の指摘で由衣の言葉は勢いを失った。


 智陽には射守 聖也と矢持 満琉と共に街中に出た澱みを頼んでいた。

 そして出ていない場合は普通に学校に行くように言った。

 そのため、昨日の午前中の授業は出ていたらしい。


「え、じゃあなんでひーちゃんは……?」

「日和は初日は失踪扱いで普通の欠席になってるんじゃないか?」


 佑希の言葉に由衣は「そっか」と納得の声を上げる。


 ……由衣はただプリントをやりたくないだけだろこれ。


 そのやり取りの裏で、タムセンが1人ずつプリントの山を手渡してくれる。

 そして他のメンバーは受け取ったプリントの山の中身を確認している。


 由衣は夏休みの宿題を進めさせるのも大変だったからな……。

 もしかして、今回も監視がいるのか?


 プリントを受け取って確認しながらそんなことを考えていると、タムセンが「少しいいか?」と声をかけてきた。


「今日の朝、陰星いんせいから言われてから思ってたが……水崎も怪物と戦えるようになったのか?」

「えぇ……まぁ」

「人数増えたなぁ……最初は陰星と白上しらかみだけだったのになぁ」


 何故か感慨深そうなタムセンを気にせず、俺は「本当にその通りです」と言葉を返す。


「あと……射守いもり矢持やもちも早退していたらしいが……あの2人もなのか?」


 その質問を受け、俺は言い淀んでしまった。


 確かに同じことをしている。

 が、共闘することは手酷く拒否された。


 だから別に学校側に俺が言う必要はないが……。

 しかし、色々悩んだがやんわりと言うことにした。


「仲間……ではないですけど、同じように怪物と戦ってはいますね」

「やっぱりそうなのか……それならあの2人にも補修プリント渡さないとな……」

「それはあの2人に直接聞いてください。俺達は射守に嫌われているので」

「……大変だな、陰星も」

「本当ですよ、まったく」


 そんな話をしていると、「ねぇ」という声と共に両肩に手が置かれた。

 振り返ると由衣が俺の後ろに立っていた。


「まー君、何の話してるの?」

「こっちの話だ。お前には関係ない」

「……そう?

 それよりさ、早く教室戻って文化祭の準備手伝わないと!」

「確かに早く戻らないと雑用押し付けられるかもな」


 何故か佑希まで会話に参加してきた。


 文化祭準備……面倒だ。

 しかし、雑用を押し付けられるのはもっと面倒だ。


 そう考えていると今度は由衣をはじめ、同じクラス3人がタムセンと話している。


「あ、あと10分後ぐらいには様子を見に行くと言っておいてくれ」

「わかりました!任せてください!ほらまー君も戻るよ!」


 由衣がそう言いながら俺の身体を揺すってくる。

 多分戻らないとずっとこのままだろうな。


 そんな予感がしたので、俺は「わかった」と口を開く。


「わかったから離せ。プリントを鞄に入れさせろ」

「はぁ~い」


 由衣がようやく手を離したので、俺は移動する準備をする。

 どうやら他のメンバーも教室に戻るらしく、既に空き教室から出ようとしていた。


 そして志郎の「んじゃあ、俺達も戻るわ」という声が飛んできた。


「……めんど」

「そんなこと言うなって」


 そう言いながら、志郎と鈴保が去っていった。

 そして日和も出て行こうとしていた。


「私も自分の教室に戻るから。またね由衣」

「うん!また後でね!ひーちゃん!

 またね~!しろ君!すずちゃん!」


 由衣が入口まで行ってそう叫んでる。


 とりあえず、俺はプリントを入れたので鞄を手に取る。

 そして引き続き黒板前でタムセンと話している佑希と智陽に「戻るぞ」と声をかけてから空き教室から出る。


 すると「ちょっと!置いてかないでよ!」という由衣の声が背中に飛んできた。


 だが、どうせすぐに追いついてくる。他の2人と一緒に。

 なので俺は気にせず自分の教室に向けて廊下を歩く。




 こうして俺達はまた、普通の高校生活に戻っていった。

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