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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第141話 人間なのか

 へび座が吐き出す黒い靄の毒の息と、俺が発動している風魔術が押し合っている。


 このままではへび座を倒し切れない。

 何か、致命傷になるような一撃がいる。


 そう考えていたとき。



 俺は足元が、地下貯水空間が水浸しなことが目に止まった。



 ……この方法なら致命傷になるだろうか?



 やったことはない。

 だが、一か八かやるしかない。



 俺は風魔術を止めて右方向に走り出す。

 するとへび座は両手をまた蛇に変えて追いかけてくる。


 避けるのは大変だが、毒の霧を止めてくれて助かる。

 襲ってくる蛇を走って避けながら、俺は「水よ、凍てつけ!」と短く言葉を紡ぐ。


 そしてへび座に向け、氷魔術を撃ちまくる。

 だが予想通りへび座はそれを避ける。


 しかし、着弾地点に小さな氷の塊が出来上がった。



 これなら行けるかもしれない。



 そう思いながら、俺はへび座の攻撃を避けながら氷魔術を撃つ。

 一方へび座も俺の魔術を避けながら、相変わらず両手の蛇で攻撃してくる。


 両者共避けるため状況は変わらない。



 しかし、周囲には氷の塊が増えつつあった。



 そして、先に動いたのは俺だった。


 へび座が氷の塊に囲まれた場所に移動したタイミングで、動きを距離を詰める方向へと変える。


 もちろん、へび座も動いた。


 一直線に突っ込んでくる俺を仕留めようと考えたのだろう。へび座は両手を戻して、再び毒の息を吐き出してきた。


 俺は毒の息を避けながらへび座の懐に入らなければならない。

 そのため近づける距離は少しずつになるが、へび座の攻撃を斜めに前進する形で避ける。


 足に星力と魔力を集中させて、無詠唱の身体能力向上魔術を使う。

 そして、一撃を叩き込むために言葉を紡ぎながら。


「火よ。人類の文明の象徴たる火よ。今、その大いなる力を我に分け与え給え。今、我が右腕に宿りて、澱みに塗れ、堕ちた星と成りしへびの座を焼き尽くす炎と成れ」


 紡ぎ終わると同時に、こちらの拳が届く距離に入った。

 そしてへび座に燃え盛る右の拳を振るう。


 すると爆風が起き、へび座は後ろに勢いよく吹き飛んだ。

 同時に、俺もその衝撃で後ろへと吹き飛ばされる。



 氷で空気を冷やして火で空気を温め、膨張させて爆風を起こす。

 どこかで聞いた話を思い出して、ぶっつけ本番でやってみたが上手くいって安心した。


 ただこのやり方は時間も星力も使うので、このままだと簡単には使えなさそうだが。


 そんなことを考えながらも、俺はなんとか着地をする。

 そして、すぐに派手に吹き飛んでいったへび座を追いかける。



 追いつくとそこには、へび座の他に2体の蛇の概念体とからす座の堕ち星もいた。

 そしてそこから少し離れたところには鎧を纏った人影が3人見える。


 さらに俺の隣に橙色の鎧と深紅色の鎧がやってきた。


「やっぱり1人で概念体と戦うのキツイわ」

「堕ち星の方が強いんだから文句言わない」


 そんな志郎しろう鈴保すずほの言葉に、俺は「雑談するな。まだ終わってない」と返す。


 確かに2人には1人1体、蛇系の概念体を頼んでいた。

 堕ち星ではないとはいえ、キツイとは思う。


 だが、だからと言って終わってないのに雑談をするな。


 そんな考えを頭の隅にやりながら、俺は「終わらせるぞ」と呼びかける。

 再び、それぞれから返事が返ってくる。


 そのやり取りは向こう側にも聞こえていたらしい。


「終わるのはお前達だ!からす!」

「はいはい! しぶんぎ座流星群!」


 そんな叫び声と共に、3体の巨大な蛇と流星群が襲い来る。


 しかし、流星群は先の2回よりも目に見えて規模が小さい。


「そんな規模じゃもう怖くねぇよ!」


 志郎がそんな啖呵を切りながら鈴保と共に3体の巨大な蛇を迎え撃つ。


 ……お前は流星群の処理ではないだろ。


 流星群を迎え撃つのは佑希ゆうき日和ひより

 爆発するカードと水弾で流星群を打ち消す。


 2人の攻撃とぶつかった流星群は次々と消滅していく。


 どうやらあの流星群は澱みや魔力で作り出した物らしい。

 そしてこの場の澱みが減った今、大した威力はもう出ないようだ。


 今やもう、俺達の方が圧倒的に優勢だった。


 そのとき、隣に残った由衣ゆいが不安そうな声で「まー君……本当にできるのかな」と呟いた。


「さぁな。だがやらないとわからない」

「そう……だよね」

「やるぞ。合わせろ」


 この2体を本当に人間に戻せるのか。



 そもそも、本当に人間なのかすらも。



 俺だってわからない。



 だから由衣の羊を確実に当てるために、俺がエリダヌス座の力を借りた水魔術で援護する作戦を立てた。



 ようやくここまでこれたんだ。

 今はとりあえずやるしかない。



 俺はエリダヌス座のプレートをもう一度リードギアに入れる。

 そして俺達は杖を身体の正面に構えて詠唱に入る。


「エリダヌスの座よ。神秘を宿し、宙に輝くエリダヌスの座よ。今、その大いなる神秘の力と水の力を我に分け与え給え。今、この地に蔓延する澱みを、澱みに塗れ、堕ちた星と成りしへびの座、からすの座を洗い、清め給え」

「眠れ。眠れ。苦しみも、憎しみも、恨みも、その力さえも。いつかあなたの辛い出来事が、悪い夢だったと笑える日が来るそのときまで。導け、羊の群れ!」


 俺の杖の先に青い魔法陣が現れ、周囲の水が集まっていく。

 その水は、地下のコンクリートの空へと昇っていく。


 一方、由衣は詠唱が終わると杖を左手で持ち、両手を広げるように降ろした。

 すると周りに小型犬ほどの大きさの羊が20匹ほど現れた。



 そして、堕ち星と概念体を目がけて大量の水が降り注ぐ。



 それはまるで、滝の如く。



 それを察知した4人の仲間は自分の相手の体勢を崩してから撤退した。



 数秒も経たずに堕ち星と概念体は水柱の中へと消えた。



 同時に、羊の群れが水柱の中へ突っ込んでいった。

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