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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは

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第138話 何も起きない

「2匹の蛇を従えて、蛇の力を使い僕自身も蛇になった!

 そしてここに、守り手の像を生贄に捧げる!

 さぁ。ここにその封印から復活し、僕に力を貸せ!へびつかい座!!!」



 周囲の黒い靄状の澱みが、さらに船尾の周りに集まっていく。



 そしてその船尾に3匹の巨大な蛇が絡みつく。



 辺りはより一層禍々しい空気に包まれ、へび座がより一層黒い靄を放ち始める。



 そして……。




「何も起きない……よね」

「……だな」


 日和ひよりが呟いた通り、何も起きない。

 澱みは船尾付近に集まり、地下貯水空間は禍々しい空気で満たされている。


 俺達も星鎧を纏っていなければ、ただではすまないだろう。



 しかし、()()()()である。



 だが、この状況に混乱しているのは俺達だけではなかった。



 地下貯水空間に「な……なんで何も起きない……」というへび座の声が響き始めた。


「何も間違ってないだろ!?」

「いやぁ……俺は最初から無理な気はしてたよ」

「そういうことは聞いてない!理由を聞いてるんだ!」

「俺に聞かれてもなぁ……」


 へび座はいつの間にか船尾の方へ戻っていたからず座と言い合いを始めた。


 その光景を見て、日和が「……何これ」と呟いた。

 俺は「さぁな」と返す。


 ……だが日和の言う通り、俺たちは何を見せられてるんだ。


 へび座は驚きのあまり、蛇の姿から蛇人間に戻っている。

 というか、船尾からそこそこ離れてる俺達にまで喧嘩してる声が聞こえる。


 いや、今は戦ってるんだぞ。

 隙を晒してどうする。



 そして相手が戦闘中に隙をさらしているなら、今のうちに攻撃するべきだろう。



 それはわかってる。



 しかし、紛いなりにも3年間魔師として学んだからだろうか。

 今の儀式のような行動が失敗した理由の方が気になってしまった。


 俺はへび座が紡いだ言葉を思い出しながら、思考を巡らせる。



 そして、1つ思い当たる箇所があった。



 失敗した理由、それは恐らく……。


「それが船首じゃなくて船尾だからだろ」


 俺の声が聞こえたらしく、へび座が「……は?」と返してきた。


「船に像があるのは船首だ。それに、船首像は航海の安全を祈願するものだ。

 へびつかい座がどういう状況にあるか知らないが、そこが違っていたんじゃないか?」

「何だよ……僕は、間違ってたっていうの……?」


 へび座の本当に落ち込んでいるような声が聞こえる。

 だが、これ以上構ってる暇はない。


 俺は気を取り直して、さっき奪い取ったエリダヌス座をリードギアに差し込む。

 そして杖を生成して船尾に向けて構え、言葉を紡ぐ。


「エリダヌスの座よ。神秘を宿し、宙に輝くエリダヌスの座よ。今、その大いなる神秘の力と水の力を我に分け与え給え。

 そして今、この地に蔓延する澱みを、この地に澱みを留め置く楔を浄化し給え!」


 俺がそう紡ぎ終えると、言葉の途中から杖先に集まっていた水が一直線に放たれる。


 今まで使用した水魔術とは比にならない力と量。

 俺の力だけでは絶対に到達できない規模。


 川がモチーフの星座の力と地脈から借りている魔力、そして山羊座の力。

 その3つが合わさった水砲は船尾に直撃する。


 しかし、それを見たへび座が嘲笑うように「どこ狙ってるんだよ」と呟くのが微かに聞こえた。


 確かに水砲が直撃した場所はへび座とからす座がいる場所よりだいぶ下。

 みずへび座とうみへび座の概念体は避けるために離れていった。


 しかし、水砲は肝心のへび座とからす座、2体の堕ち星がいる船尾の上には絶対に届かない位置に当たり続けている。



 だがこれでいい。



 これで作戦通りだ。



 そのとき、地下貯水空間に「そもそも、お前ら狙ってないからなぁ!」という声が響いた。

 続いて「羊の………長!!!」という声も。


 その新しい声と共に、船尾が少しずつ浮き上がる。


 そして、船尾はだんだんと小さくなりながら傾いていく。


 危険を感じたのか、 2体の堕ち星と蛇の概念体が船尾から離れていくのが見えた。


 遂に船尾は地面を離れ、こちらに向かって吹き飛んでくる。


 飛んでくる間に船尾はどんどん小さくなって、プレートになった。

 俺はそれを左手で受け止める。


 そこに「まー君!!!やったね!!」という声が再び聞こえてきた。

 続いて「作戦大成功だな!」という声も。


 俺はその声がした方、船尾があったところの向こう側に視線を向ける。


 そこには4人の鎧を纏った人影が。

 由衣ゆい志郎しろう鈴保すずほ佑希ゆうきの姿があった。



 4人は河川事務所職員などが使う通路から地下貯水路に入って、この地下貯水空間近くで待機。

 そして俺がエリダヌス座のプレートをへび座から奪え次第、地面に刺さっている船尾に由衣の牡羊座の力、2日前に生成した角が生えた羊をぶつけるように頼んでいた。



 俺は地下貯水路がいくら地脈の合流地点とはいえ、澱みの量が異常すぎるとも考えていた。

 まだ別に何かあると考えていた。


 そして、辿り着いたのが「地下貯水空間に刺さっている船尾はとも座を概念体。それを楔として澱みをこの空間に留め置いている」という考えだった。


 そんな事が出来るのかという疑問はあった。

 だが実際、今船尾はとも座のプレートになって回収できた。


 そしてこの空間にある黒い靄の澱みの量が目に見えて減り始めているのが答えを教えてくれている。


 ……日和を始め、生物部の人達はよくこの量の澱みの空間に半日いて無事だったな。


 そして今、志郎が言った通り作戦は成功した。

 まだ第2段階だが。


 途中、想定外なこともあった。

 気になることもある。


 だが、今は後にするべきだ。



 一方、へび座はようやく俺の狙いがわかったらしい。


 からす座や2匹の概念体と共に、俺達と由衣達の間に戻ってきて「まさか山羊座……最初からこれを狙ってたのか」と言葉を投げてきた。

 俺はその言葉に「あぁ」と返す。


「この空間で真っ向から戦っても勝てないからな。だから、この空間のお前達が優位な状況を消させてもらった」

「……本っ当に君は、いつでもそうだ。自分の理屈を押し付けて、苦しんでる人達の声を聞かない。見て見ぬふりをする。

 ……あの時から何も変わってない」


 俺はその、()()()()()()()()に「何の話だ」と返す。

 すると、へび座はため息をついた後。「……いいよ別に」と呟いた。


「へびつかい座の力がなくても、今の僕は君より強い。

 ここで殺せば僕の勝ちには変わりない!からす!」

「はいはい。俺だけ逃げるわけにも行かないし、頑張りますか」


 2体の堕ち星と2種類のへびの概念体が戦闘態勢に入った。


 俺達6人もそれぞれ構える。



 作戦第3段階はシンプルだ。



 厄介な力は奪った。

 相手に有利な場は崩した。



 ならばすることはただ1つ。



 戦って勝つ。



 それだけだ。



 俺は深呼吸をした後、覚悟を決めた言葉を口に出す。



「みんな、やるぞ」

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