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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第137話 苦しんでる人達を

 時間は少し巻き戻り、戦闘開始直後。


☆☆☆


「そ。じゃあ、君たち2人もすぐに向こうへ送ってあげないとね!エリダヌス座!」


 へび座がエリダヌス座のプレートを持った右手を掲げた。

 船尾の周りで靄状の澱みが渦を巻き始める。


 もう隠す必要もないから初めから使ってくるか。


 そして、黒い波が俺達に向かって襲ってくる。

 ただ向こうも力の配分を考えているのか、2日前にやられた時ほどの規模ではない。


 俺はすぐに星鎧の一部を消滅させて、ズボンのポケットからわし座のプレートを取り出す。

 そのままリードギアに差し込み、翼を生成する。



 そして、地下貯水空間のコンクリートの空へと舞う。



 俺はそのまま船尾の方に向かって飛び、上に座っているからす座に向けて無詠唱の星力弾を飛ばす。

 するとからす座は狙い通りにそれを避けた後、船尾から飛び立った。


 そしてからす座はこちらに向かって飛んできながら、羽根を飛ばしてきた。


 俺はそれを避けて、さらにからす座に接近する。

 そのまま蹴りの予備動作に入る。


 しかし慣れない空中での攻撃、あっけなく避けられた。

 そして「甘い甘い!」という声の後、代わりに俺が蹴りをもらう。


 俺はそのまま地面に叩き落され、水飛沫が上がる。


 なんとか衝撃耐性魔術は発動できたが、身体は痛む。

 だが、まだこれぐらいなら全然戦える。


 立ち上がろうとしていると、からす座が俺を見下ろすように降りてきた。


「飛べるようになったからってさ。元から飛べる俺の方が慣れてる分、君の方が不利なんだよ?」

「……だろうな。だが、だからどうした」


 俺はそう返しながら立ち上がり、また星力弾を飛ばす。


 からす座は羽根を飛ばして、星力弾を消滅させて「懲りないなぁ」と呟いた。

 一方、俺はその隙にリードギアを再起動して翼を生成し、再び空を舞う。

 

 俺の目的はからす座ではない。

 そしてこの作戦に気が付かれると、作戦は破綻する。


 俺はあくまでからす座を狙っているように見せるために、再び星力弾を飛ばす。

 するとその返しのように羽根が飛んでくる。


 今は倒すのが目的じゃない。

 隙を見つけるのが目的なんだ。


 俺は羽根を避けながらも、星力を撃ち返す。



 両者とも、数多くそびえたつコンクリートの柱の間を飛び回る。

 時には壁に、時には死角として使いながら飛び道具の応酬が続く。



 しばらくそれが続いた後。



 突然、地下貯水空間に「すばしっこいなぁ!!」という叫びが耳に届いた。



 隙を見て声がした方を見ると、へび座が右手を掲げねている。



 その右手の上には水球があり、周りの水や澱みを吸い上げながら大きくなっていく。



 この時を待ってた。



 俺は急いでからす座との戦闘を離脱し、へび座の方へ向かおうとする。



 しかし、やはりそう簡単にもいかない。

 「よそ見とは余裕があるねぇ」と言いながら、からす座がまた羽根を飛ばしてきた。



 それを俺は左手を突き出し、無詠唱の風魔術で弾き返す。



 しかし、羽根を散らしたとき。

 からす座は俺のほぼ真上にいた。



 そして「俺の勝ちだ」と言いながら、からす座が右足を振り下ろしてきた。



 確かに、俺は今ピンチかもしれない。



 けど、むしろこの状態は都合がいい。


「確かに勝負はお前の勝ちだな。だが、これでいいんだよ」


 俺はその言葉と共に全身の力を抜いて、羽を消滅させる。

 すると当然のように、俺の身体はコンクリートの地面に向けて落下を始める。


 からす座の足が目標がいなくなったため、虚しく空を切っているのが見える。

 そしてからす座が「はぁ?」と呟いたのが聞こえた。



 これなら、何とか間に合う。



 俺は地面に激突する寸前に、再び背中に星力を集中させる。

 そして再び翼を生成して、全速力でへび座の元へ向かう。


 水の球は、すでにかなりの大きさになっているのが見える。

 日和ひよりは距離を取って逃げようとしている。


 だがあの大きさが放たれたら、逃げたところで意味がないだろう。



 本来こんな作戦はしたくなかった。



 だが勝つためにはやるしかなかった。




 日和も怖いはずなのに「やる」と言ってくれた。




 だから絶対に間に合わないといけない。



「さて、じゃあさようならだ」


 へび座のその声と同時に、水球の1点が膨らむ。



 そして日和を目掛けて、大量の水が放たれる。



 その直前、俺はへび座の右手を目掛けて突っ込む。



 そして握られているプレートを、無理やり引き剥がすかのように奪い取った。



 次の瞬間。

 大量の水が落ちる音が聞こえた。


 俺は速度を抑えながらも、少し離れた場所に着地する。


 へび座は、自分が作った水の球が制御できなくなり、そのすべての水を被っていた。その姿が見えなくなるくらいの水を。


 とりあえず、作戦第1段階はクリアだ。

 エリダヌス座が脅威なら、奪ってしまえばいい。


 どうせ堕ち星は碌な使い方をしないのは目に見えてる。


 ……ただ、予定より少し星力を使いすぎただろうか。


 一方、水を全て被ったへび座は水が全て落ち切った後、「やってくれたね………山羊座!!!」と俺への怒りの声を叫んだ。


「ずっと狙ってたからな。悪いがエリダヌス座は貰うぞ」


 すると、へび座は静かに「……もういい」と呟いた。


「これ以上待ってたら儀式そのものが出来なくなる。そうなったら僕の努力の水の泡だ。

 からす座!使っていいよ!」


 そう言い残したへび座は船尾の上へと戻っていく。

 代わりにからす座が「ようやく許可が下りたよ……」と言いながら、俺達と船尾の間に降りてきた。


 そして、プレートを持った右手を突き出した。


「じゃあ…遠慮なく。 しぶんぎ座流星群」


 すると地下貯水空間に、2日前にも聞いた轟音が響き始めた。


 本当はしぶんぎ座も回収してしまいたかったが、この状況では無理だ。

 だがこちらについても無策で来たわけではない。


 俺は急いで日和と合流して、「悪いが頼むぞ」と声をかける。


「頑張る。でもできるだけ早くして」


 その返事を聞きながら俺は左手を地面について、急いで言葉を紡ぐ。


「地脈よ。未だその力健在ならば、我が言葉に応え給え。

 我、星を繋ぎ、作られた座の力を分け与えられし者也。故に我、神遺の力に選ばし者也。

 我、その神遺を以てこの世界に害をなす存在と戦う者也。

 そして今、その存在を打ち倒すとき也。願わくばその秘めた力、魔力を与え給う!」


 唱え終わると同時に、地面に着いた左手から凄まじい量の魔力が流れ込んでくるのを感じる。


 そして上を見上げると、既に流星が降り始めている。


 一応、日和が直撃しそうな流星を水弾で撃ち落としてくれている。

 だがこの規模、いつまでも間に合う訳じゃない。


 次は、俺の番だ。


 杖を生成しながら立ち上がり、杖先を地面について言葉を紡ぐ。


「我に分け与えられし魔力よ、星力よ。今、我らの身をあらゆる悪意から守る壁と成れ。この壁、我が心折れぬ限り砕け散ること能わず!」


 すると、詠唱を聞いた日和が俺の後ろへと下がって来た。

 直後、俺と日和を囲うようにドーム型の壁が出来上がる。



 そして向かってくるものが無くなった流星は、轟音と共にコンクリートの地下空間に降り注ぐ。


 その流星群はあらゆるところに着弾し、辺りを黒い靄と煙で埋め尽くした。


☆☆☆


 何故しぶんぎ座流星群があそこまで強力に成っているか。


 俺はその答えをここにある澱みを使っているからだと考えた。

 今までの戦闘を踏まえて、堕ち星たちは澱みによってあの強大な力を振るっているのだろう。


 ならその強大な攻撃をどうやって防ぐか。


 その答えを出すために、俺は「何故、この地下貯水路に澱みが集まっているのか」を考えた。


 その答えを俺は「地下貯水路の今、戦闘をしているこの空間は地脈が集まる合流地点の中心である」と推測した。


 そもそも北側を山に囲まれたこの街、星雲市が地脈の合流地点を中心に作られたらしい。

 この情報は昨日、協会の上層部に確認が取れている。


 そしてその話の信憑性を補強するように、山際にある時代錯誤遺物研究所も地脈の上に建てられているそうだ。


 つまり、地脈が集まるところに澱みも集まっている。

 そしてその澱み……と魔力を堕ち星たちは利用している。


 ここが地脈の合流地点ならば、魔術師である俺だって地脈の魔力を利用できるはずだ。


 地脈から魔力を引き出す方法は中等部時代に習っている。

 あの学校は日本最大規模の地脈の合流地点上に建てられていた。

 そのため実際にやったこともある。


 つまり、地脈から魔力を引き出してそれを星力に変換する。

 それがあの2体の堕ち星をここで倒す鍵となるだろう。


 実際、しぶんぎ座流星群を防げているのが良い証拠だろう。


 ……詠唱でかなり定義や強度を底上げはしたが。


☆☆☆


 魔力の障壁の外には煙がまん延している。

 だが、轟音は止んだ。


 時間は……1分程だっただろうか。


 流星が止まったと判断した俺はとりあえず壁を消滅させる。

 そしてすぐに後ろに居る日和に「日和、無事か」と言葉を投げる。


真聡まさとのお陰で怪我無し。ありがと」

「あぁ」


 そして煙が晴れると同時に、からす座の「あれ、全然元気そうじゃん」という声が聞こえてきた。


「え、仕留めそこねたの?何してるのからす。

 でもまぁ……時間稼ぎにはなったからいいよ。

 山羊座、魚座。そこで見てると良い。へびつかい座が降臨するのを。

 僕が、苦しんでる人達を、救う!」


 そう宣言すると共に、へび座は船尾の上で巨大な蛇へと姿を変えた。

 そして地下貯水空間にある黒い靄状の澱みが、船尾を中心にして集まり始めた。


 完全に計算外だ。

 まさか流星群の後、すぐに行動を起こしてくるとは。


 しかし、へび座を止めるために動こうとすると、身体が澱みに持っていかれる予感がする。



 そのため俺は、日和が吹き飛ばされないように身体を支えながら、その場で踏ん張る事しかできなかった。



 それに俺は、へび座の言葉の方が気になってしまった。



 苦しんでる人を救う?

 人を異形の化け物にしてる疑いがあるやつが何を言ってるんだ?


 というか今へびつかい座と言ったか?


 ……本当に何をする気だよこいつは。


 混乱してる間も、へび座の声は響き続ける。


「2匹の蛇を従えて、蛇の力を使い僕自身も蛇になった!

 そしてここに、守り手の像を生贄に捧げる!

 さぁ。ここにその封印から復活し、僕に力を貸せ!へびつかい座!!!」



 周囲の黒い靄状の澱みが、さらに船尾の周りに集まっていく。



 そしてその船尾に3匹の巨大な蛇が絡みつく。



 辺りはより一層禍々しい空気に包まれ、へび座がより一層黒い靄を放ち始める。



 そして……。

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