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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第132話 大事な親友

 真聡まさとに、私が思っていることを話した。


 真聡は怒らず、優しく肯定してくれた。



 そのとき。

 部屋の扉が勢いよく開いた。


 同時に「たっだいま〜!!」という元気な由衣ゆいの声が響く。

 そんな由衣に続いて、さっき送り出した人たちが戻って来た。


 「早かったな」という真聡の言葉に、佑希ゆうきが「まぁコンビニはすぐそこだからな」と返した。

 そして由衣がその会話に割り込むように「というかまー君!!」と叫んだ。


「何でメッセージしてくれないの!?」

「俺だって暇じゃないんだ」


 真聡の反論がそこで止まった。

 そして「智陽ちはる」と呟いた。


 そう。部屋に入ってきたのは5人。

 さっき「連絡が取れない」と話していた華山はなやまさんも一緒に戻ってきていた。


 華山さんは「ごめん。連絡しなくて」と真聡に言葉を投げる。

 それに続いて佑希が「外に出たらちょうど帰ってきてたんだ」と言った。


「でも、そこら辺はまず食べてからにしよう。な?」

「だな!腹減ったわ〜」

志郎しろうは買ったチキンを食べながら帰ってきてたでしょ」


 佑希の提案に続いて、平原ひらはら君と砂山さやまさんがそんなことを話してる。


 また、一気に賑やかになった。

 由衣は真聡に話を流されて文句言ってるし。


 ……さっきから佑希にも気を遣わせてばっかり。少し申し訳なくなってきた。


 私が色々と考えている間にも、みんなは既にテーブルに買ってきたものや自分のお弁当を並べ始めてる。

 いつの間にか真聡が同じソファーに戻ってきて、由衣が間に座ってる。


 ……やっぱり、流石にこの人数は少し狭い。



 ……それより、先に謝らなくちゃ。これからは、一緒に戦うんだから。


 私はそう決意して、隣に居る由衣の方を向いて口を開く。


「……食べる前に、私。由衣に謝らないと」


 「え、何?何の話?」と言いながら、由衣は首を傾げている。

 でも、私は由衣のペースにのまれないように言葉を続ける。


「……私、由衣を……3人を避けてた。

 私だけ戦えないから、戦う3人の邪魔になりたくなくて。だからいっそのこと、距離を置こうと思ってた。友達をやめる覚悟をしてた。

 ……でも、やっぱり寂しかった。私にとっても、あの頃の5人は大事なものだった。


 さっき、由衣が私のことを心配して助けに来てくれたのがとても嬉しかった。

 だから……由衣が許してくれるなら…………泣いてる?何で?」


 そう。由衣の顔には目から零れた涙が頬を伝っていた。


 私が混乱していると、由衣は鼻をすすりながら「だって……」と口を開いた。


「大事な大事な友達が、親友が悩んでたのに……私全然気づいてなかったなんて……なんか涙が……

 ごめんね、ひーちゃん……私『ずっっっと友達でいようよ』って言ったのにね……」


 私は驚いて、固まってしまった。


 私は、あのとき由衣が友だちになってくれたから。

 「ずっっっと友達でいようよ」って言ってくれたから、今があると思ってる。


 でも、もう由衣は忘れてると思ってた。


 私は気を取り直して「……覚えてるの?」と聞きなおす。


「忘れるわけないじゃん!だってひーちゃんは私の2番目の友達なんだから!

 あ、でも2番目って順番だから!!順位じゃないからね!?

 だからまー君もひーちゃんもゆー君も……」


 由衣はそのまま色んな人の名前を口にしていく。


 相変わらず、由衣の友達は多い。



 でも、由衣はあの日のことを覚えててくれてた。

 私はそれだけで嬉しかった。


 「言われた側は忘れないけど、言った方は忘れてる」って聞くぐらいなのに、それでも忘れないでいてくれた。

 

 それに、由衣は友達に順位をつけるタイプじゃない。

 ただ純粋に自分がやりたいと思うことをやるタイプ。


 ……ずっといっしょにいてわかってたはずなのに、何で忘れてたんだろ。

 何で、真聡に取られた気がしてたんだろ。


 全然そんな事ないのに。

 そんなことあるわけないのに。


 そう考えていると、由衣の名前の読み上げに「まぁ、つまり」と佑希が割って入った。


「由衣は少なくとも、ここにいる全員は大事な友達なんだな」

「当たり前じゃん!」


 由衣のその元気な返事に、真聡は「お前なぁ……」と呟いた。

 すると由衣が「……何」と言い返した。


 でも、もういい。

 私は、ちゃんと由衣の親友だってわかったから。


 ……私が勝手に、違うと思い込んでただけだけど。


 そして真聡と由衣の無言の睨み合いに、今度は平原君が「まぁまぁ」と割って入った。


「俺だって、ここにいる全員大事な友達で仲間だぜ〜」


 その言葉に砂山さんが「志郎は聞かれてないから」と呆れた声で言い返した。

 すると平原君は「え、そういう話じゃねぇの?」と返した。


 ……この2人、結構仲いいよね。


 そう思っていると、由衣が「ひーちゃん」と改まって声をかけてきた。


「これからは、何でも言ってね?」

「……でも、迷惑でしょ」

「そんな事ないよ!!だって大事な親友なんだから!

 だから、何でも言ってよ。1人で悩まないで?」


 その言葉は嬉しい。


 でも、もし私が凄く面倒な要求をしたらどうするつもりなんだろう。


 ……私はそんな事言わないってわかって言ってるのかな。


 いや、由衣はそこまで考えてないよね。


 だから少しだけ意地悪な返しをすることにした。


「……でも由衣、勝手にどっか行くじゃん」

「それは……それはぁ……それは!!」


 私と真聡以外が笑い出す。

 それに対して由衣が「笑わないでよ!!」と返す。

 でも、笑いは止まらない。


 そこに予想外な一言が飛んできた。


「いや、それはそうだな。忠告を聞かずに走るのはやめろ」

「まー君まで!!」


 ビルの一室に、高校生の笑い声がさらに大きく響く。


 真聡が便乗して責めるとは思わなかったので、私も思わず笑ってしまった。



 でもやっと。心の中の黒いものが、胸のつかえが取れた気がした。

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