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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第131話 でも、話そう

 私、水崎みずさき 日和ひよりは魚座に選ばれた。

 でもその衝撃を呑み込む間もなく、事態は進んでいく。


 ……確かにいつまでも住宅街に緊急車両が沢山止まってるわけにもいかないし。


 桐生さんと先輩達、大捕先生は病院へ行った。

 約1日地下放水路を彷徨って、怪物との戦いに巻き込まれた。警察や救急隊の人は念の為に病院の検査を受けて欲しいみたい。



 でも私は、断った。



 私も特殊な力を手に入れた。


 そんな今、由衣ゆい達と別行動になりたくなかった。

 ちゃんと話を聞きたいと思った。


 だけど、警察や救急隊の人は私にも検査を受けて欲しいらしい。

 迷い込んだときは、私は力なんて持ってなかったから。


 そこに真聡まさとが「私に何かあった場合、もしくは他の人に異常が見つかった場合はすぐに私を病院に連れて行く」と言ってくれた。

 そしてそのお陰で私の検査を受けなくてよくなった。


 ……いつの間にそんなに警察の人と仲良くなってたの?


 だけど、問題はそれだけではなかった。

 どうやら華山はなやま 智陽ちはるって人がいないらしい。


 確か、体育祭や星鎖祭りで会ったはず。

 あと由衣と同じクラスだっけ。


 警察の人によると「実は真聡達が地下貯水路に入っていった後、泥のような怪物が襲われた。そこを助けてくれた弓を使う男と一緒にどこかへ行った」らしい。


 ……何を話してるかわからない。


 それを聞いて真聡達は複雑そうな顔をしてた。

 由衣だけは何やら嬉しそうだったけど。


 でもとりあえず。私達は今後についてと私についてを話すために、真聡の家に移動することにした。


 私の自己紹介をしながら、学校に置いてきた荷物も回収しに行って。


☆☆☆


 真聡はビルの5階の1フロア丸ごとを家にしていた。

 由衣に話は聞いていたけど実際に来るのは初めてだった。


 そして私達6人はとりあえず汚れた服を着替えることにした。

 私は高校のジャージから制服に、他の5人は制服からジャージに着替えた。


 その後、それぞれ思い通りのところに座る。

 テーブルを挟んで向かいのソファーに平原ひらはら君と佑希ゆうき砂山さやまさん、そして反対側に私、由衣、真聡が座った。


 そして、真聡が「智陽から連絡は?」と口を開いた。

 すると「ない……」と由衣が残念そうに答えた。


「スマホは使えるようになったんだけど……連絡来てない。

 というか、何でスマホ使えなかったの?」

「……恐らく、澱みのせいだろう。異常な量だったからな。現代機器に不具合を起こすんだろう」


 部屋の中は「そうなんだ……」という空気。


 移動中の会話も含んでずっと話を聞いてる感じ、真聡は4月のときから変わらず言ってないことが多いみたい。


 そんな中、また由衣が口を開いた。

 今度は「あの……言いにくいんだけど……」と小さな声で。


 すると真聡が「何だ」と返した。


「お腹が……空きました……」


 由衣のその一言で、部屋の空気が緩んだ。

 実際さっきの話との温度差が凄い。


 まぁ……いつもの由衣らしいんだけど。


 そして平原君が「確かに腹減ったなぁ……」と同意の言葉を口にした。


「もう3時過ぎてるもんなぁ……」

「でも先に智陽を探さないと。射守いもりと一緒なら、大丈夫だと思うけど」

「なら先に飯食おうぜ。腹が減っては……なんだっけ?」

「『戦はできぬ』ね。しかも戦じゃないし。人探しだから」


 何故か平原君と砂山さんが言い合いを始めた。

 それを「まぁまぁ」と2人の間に座っている佑希が止めに入った。


「とりあえずコンビニ行こう。俺、今日購買行くつもりだったから、何も持ってないんだよな」


 その言葉に由衣が「でも私お弁当ある……」と返した。

 そして続くように平原君と砂山さんが「俺も」「私も」と返す。


「でも体育会系2人は、この時間だと持ってきた分だと足りないんじゃないか?」

「あぁ〜〜…まぁ確かにな……」

「私は別に足りるけど……」


 なんか、どんどんコンビニに行く話になってる。

 そして由衣は「私……どうしよう」と呟いてる。


 すると、そこにまた佑希が口を開いた。


「あと昨日からずっと、地下貯水路にいた日和は食べるもの持ってないだろ。

 それにたぶんこの部屋の主はこのままだと何も食べずに作戦会議に入ると思うぞ」

「コンビニ着いていきます!」

「というわけで、3人連れてとりあえずコンビニ行ってくるから。あと頼むな」


 佑希がそう言いながら立ち上がって、私と真聡以外の3人に出かける準備を促し始めた。

 すると由衣は立ち上がった後、「え、まー君とひーちゃんは?」と言いながら左右に居る私と真聡を交互に見ている。


「俺はこれでも星力切れでふらふらだ。勝手に行け」


 真聡の言葉に続いて、私も「ちょっと疲れたから座ってたい」と言葉を返す。

 すると由衣は「わかった!」と元気よく返事した。


「じゃあ何食べたいものあったらメッセージしてね〜〜!!」


 そして、4人が出て行って扉が閉まった。

 部屋は嵐が去ったかのように静かになった。


 でも何か、砂山さん何か文句言いながら連れて行かれなかった?由衣も上手く乗せられてた感じだし……。


 私はその疑問を素直に真聡にぶつける。


「何か……強制的じゃなかった?」

「……多分、佑希は気を遣ったんだよ」


 胸が、ズキッと痛んだ。


 でも私は、誤魔化すように「……誰に」と返す。

 すると真聡は「……薄々わかってるだろ」と言いながら立ち上がった。


 そして、テーブルを回って反対側のソファーに移動して「お前にだよ、日和」と言ってから座った。


「……お前は、俺達を避けてただろ。それなのに魚座に選ばれた。

 それに全員いる中だと話しづらいだろ。……特に由衣の前では」


 ……隠してるつもりだったのに、見抜かれてた。


 やっぱり、真聡は鋭い。



 鋭すぎて、真聡のことが見れない。



 ……話すべきなのはわかってる。逃げたくなんてないし。



 でも私、自分のこと話すの苦手。

 何て言ったらいいかが、わからない。


 悩んでいると、先に真聡が口を開いた。


「……無理に戦えとは言わない。戦いたくないなら戦わなくて良い。

 他の奴らには俺から話しておく。その左手の甲は隠すことが」

「違う」


 私は反射的に、そう呟いてしまった。

 真聡が話してる途中なのに。



 でも違うのは本当。



 怪物とは関わりたくなかったのは、皆と距離を置こうと思ったのは。怪物が怖いからじゃない。


 ……怖いのは確かだけど。


 真聡は何も言わず、私を見てる。



 視線が、痛い。




 ………でも、話そう。



 私も、やっぱり幼馴染5人で(みんなと)いたい。



 私は深呼吸をしてから、口を開く。



「……私は自分のことが話すのが苦手。でも、頑張って話すから聞いて欲しい」

「……あぁ」

「……私が、皆を避けてたのは、私だけが戦えないから。

 でも真聡や由衣だけのときは、まだ一緒にいようと思ってた。

 だけど他の人が増えて、特別な力を持つ人が増えてきて。それを見てると、私がいない方がいい気がしてきた。由衣も元に戻ったから、すぐに誰とでも友達になれるし」


 そこで真聡は「……でもあいつは」と呟いた。



 わかってる。

 わかってるからこそ、嫌な部分もある。



 私は素直に「わかってる」と言葉を発して、真聡の言葉をまた遮る。


「6月のあの日。真聡がああ言ってくれたから、まだ友達でいていいんだって思った。由衣に振り回されはしたけど、夏祭りは楽しかったし。

 ……でも、佑希が戻ってきて。佑希まで特別な力を持ってて。あの頃の5人のうち、3人が怪物と戦える。選ばれてない私は、戦いの邪魔になる。

 だから、本当にもう私の居場所はないって思った。

 そう思ったから。私はみんなと、距離を置こうとした。


 でも地下貯水路に迷い込んで、どうしようもないと思ったとき。由衣が、みんなが来てくれて凄く嬉しかった。私はまだ友達なんだって。

 それで魚座に選ばれたって言われて、私も皆と同じように特別な力が手に入って……とても嬉しかった。

 これで皆と一緒にいれる。皆と一緒に戦えるって。


 ……間違ってるのはわかってる。怪物と戦うための力をみんなと一緒にいるための理由にするのはおかしいって。

 でも私は……嬉しかったの」


 少し荒くなった呼吸を、深呼吸をして整える。


 でも思ってることはだいぶ話せた。

 だけど、最後に言ったことには真聡は怒ると思う。


 そう思っていると、真聡は静かに口を開いた。


「友達と一緒にいたい。それ自体は間違いではないだろ。

 『自分が唯一無二の友達でいるために、力を使って周りの人間を消す』とか言うなら、俺は日和から無理にでも力を奪う。

 でも日和は、ただ一緒にいるための理由が、自信が欲しい。だから一緒に戦いたい……だろ」


 私が思ってること、そのままの言葉が返ってきた。


 怒られると思っていたから本当にびっくりした。

 私は安心しながら「そう」と言葉を返す。


「あとそんな怖いこと考えない……」

「なら俺は止めない。というか、怪物は怖くないのか」

「……怖い。でも私がみんなと距離を置いてたのは、さっきも言ったけど怪物が怖いからじゃない。私がみんなの邪魔になりたくなかったから。

 でも、私は選ばれた。だったら私も戦う。選ばれたのに私だけ戦わないなんて嫌だし」


 真聡はまた「そうか」と静かに言葉を返してきた。


「……別に由衣のことが嫌いになったとか、嫌になったとかじゃないんだな」

「……うん」

「それなら良かった。もしお前に嫌われてたら、由衣は大泣きするだろうからな」


 「真聡がいるから別に大丈夫でしょ」と思ったけど、言えなかった。


 「口は災いの元」とも言うし、どうせ言ったところで否定されるだろうから言わないことにした。


 私は話題をそらすのも兼ねて思ったことを口にする。


「やっぱり、真聡は変わってないね」

「だからどういう意味だ」

「わかってないなら良いよ」


 前と同じ返し。

 やっぱり無自覚みたい。


 真聡が自分のことをどう思ってるかはわからない。

 でも私は、変わってないと思う。


 自分のことは後回しで、誰かのことを先に気にするところ。



 そのとき。

 部屋の扉が勢いよく開いた。

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