第013話 あれって何?
自販機の取り出し口から小さいペットボトルを2つ取り出す。
そして座っているまー君のところに戻る。
「まー君〜。どっちがいい?」
「どっちでもいい」
「じゃあ…こっち!はい!」
まー君にミルクティーを渡して、隣に座る。
そして私は手元に残ったレモンティーの蓋を開ける。
「なんでこのチョイスなんだ…」
「なんとなく。ミルクティーの方が甘いから疲れてるまー君にはいいかなって」
私達は今、駐車場にある公衆トイレの脇にあるベンチに座ってます。
2人とも疲れてるとはいえ、流石にずっと地面に直接座ってるのはちょっと……ね。
あ、怪物に襲われたときに置いてきてしまった私とまー君の荷物はもちろん回収しました。
飲み物を飲んで喉を潤して一息ついたところで、まー君が口を開いた。
「で、お前。あれをいつから持ってた?というかそれ返せ」
「あっ。忘れてた……。はい」
私はレモンティーを隣において、腰につけたまま忘れていたベルトのようなものに手をかける。
お腹から離すように引っ張ると、両側から出ているベルトのような物が消えた。
そして箱の部分だけになったものをまー君に手渡す。
まー君は受け取ると少し確認するようにぐるぐると回して見てる。
その後、少し光ったかと思うとベルトのようなものはまー君の手の中から消えていた。
「消えた!?」
「あぁ。普段は家に置いていて、戦うときにだけ喚び寄せてる」
うん、わかんない。どういう原理なんだろう?
でも聞いた所でわからないと思った。
それよりも聞かれたことに答えないと。
《《あれ》》というと……私がいつの間にかプレートのようなもののことだよね。
答えにならないと思うけど、私は自分がわかってることを口にする。
「実は……私もいつから持ってたかわからないんだよね」
「は?」
「いや……わからないというか……覚えてないって言ったほうがいいのかな……?」
「……何が基準なんだ?」
とだけ呟いて、まー君は口を閉じてしまった。
……いや、黙らないで欲しいんだけど!?
色々と話してくれるって事になったからここに座ってるのに。
まぁ、帰れないってのもあるけど……。
歩いて帰れないこともないと思うけど、何時間かかるかわからない。
それに多分まー君の体力が持たないと思う。
だから回復を待つついでに座って色々聞くことにしたというわけ。
私は「ねぇ…ちょっと〜?戻ってきて〜?」とまー君の顔の前で手を振って、自分の世界から戻ってきてもらう。
「『何が起きてるか話す』って話だったな。悪い。
と言っても、話すことが多すぎて何から話すか……」
「じゃあ、私から質問してもいい?」
「あぁ……そうするか。その方が楽だな」
「えっと、じゃあまず……私がいつの間にか持っていたあれ何?あとあのベルトのようなのも」
「やっぱりそうだよな……。よく使えたなお前」
まー君が何とも言えない表情でそう言った。
褒められているのかわからないので、私は疑問をそのまま言葉にする。
「……褒めてる?」
「褒めてない。いやある意味褒めてる」
「ある意味……?」
「話が逸れたな。お前がいつの間にか持っていたあれはプレートと呼んでる。星座の力の結晶だ」
「星座の力の……結晶?」
「そう。俺は星座と契約して星力を分けて貰って戦っている。だからあれは、俺自身の力ではない」
「そうなんだ……」
そうだよね。人間にあんな事できないよね。
私は謎の安心感を覚えた。
そして今になって、私がいつの間にか握っていたものが、いつの間にかどこにもないことに気づいた。
「あれ!?そういや私のプレートがないんだけど!?」
「プレートは俺達が貰った星力で作り出したものだ。ほっとくと消えるぞ。選ばれた証、星座紋章は……こっちだ」
そう言いながらまー君は自分の左手を私に見せてくれた。
確かに何かマークが刻まれている。
そして私も自分の左手を見ると、同じようにマークが刻まれていた。
「……え、いつの間に?」
「さぁな。でもそれがあるってことはやはりお前も選ばれたってことだな」
そう言ったまー君の顔は、少し嫌そうに見えた。
「……なんでそんな顔してるの?」
「いや別に。なんでもない。その星座紋章を見た感じ、お前は牡羊座のようだな」
「見ただけでわかるの?」
「逆に見覚えないのか……。あ~……ほら、星座占いとかで見たことないか?」
そう言われたらテレビとかで見たことがある気がする。
私は自分の左手のマークをもう一度見て、今度は触ってみる。
……あれ?
「ねぇこれ消えないんだけど!?私の左手このままなの!?」
「消えないぞ。選ばれた証なんだから。だからこうやって……」
そう言いながら、まー君は左手の甲のマークを右手でなぞって消した。
「消えたじゃん!どうなってるの……?」
「認識阻害の術だ。実際はあるものを認識できなくさせる。ほら」
またまー君の左手の甲にマークが現れた。
なるほど、普段はこうやって隠してるんだ。
隠してる……消える……。
何かが繋がったかのように、私の中に1つの疑問が浮かんだ。
「もしかしてこの1ヶ月、ときどきまー君が姿を消してたのって……?」
「あぁ。認識阻害の術でそこにいるのにいないように見せてた」
「なんでそんなこと……」
「星鎧を纏うときに周りの人に誰がしているのかバレないようにするためだ。もし周りに敵がいたら困るからな。」
「なるほど……」
「……また話が少し脱線したな。ベルトみたいなやつはConstellation Armor Generate Gearと呼んでる」
「コンスト…コン………コーンスープ?」
「違う。Constellation Armor Generate Gear。
日本語にすると星座の鎧を生成する装備。まぁ長いから普段はギアと呼んでるな。このギアにプレートを入れてあの鎧、星鎧を生成することで初めて俺達は戦える」
「なるほど……」
だから毎回、戦う前に何かしてたんだね。
そこまで聞いて、私の中にまた新たな質問が生まれた。
なので「……質問していい?」と聞いてみる。
「いいぞ」
「なんでわざわざ鎧を着て戦うの?特別な力があるんだから普通に戦えばいいんじゃないの?」
「それは無理だ。俺達の身体が弱すぎるからな」
「どういうこと?」
「今まで戦いを見てただろ?あんな人間やめてるやつの攻撃を生身で受けたらどうなると思う?」
「えっと……痛そう?」
「痛いで済んだら驚きだ。普通に大怪我、最悪死ぬぞ。だから星力で鎧を作って身を守るんだ」
「なるほど」
「で、星座の力を宿す鎧を身にまとった姿を星座騎士、Constellation Knightと呼ぶ」
「ほう」
まー君の言葉が止まったので、私は少し頭の中を整理する。
プレートとギアについてはだいたいわかった。
つまり、左手にあるこの星座紋章が星座に選ばれた証。
プレートは選ばれた人が与えられた星力で作るもの。
それとギアを使うことで星鎧を作ってあの怪物たちと戦う。
星鎧を纏った姿の人たちを星座騎士、Constellation Knightと呼ぶ。
……そういえば怪物についてまだ何も聞いてないよね?
私はすぐに「あの怪物ってなんなの?」と言葉を投げる。
「まず、怪物には2種類いる。1つ目が澱み。今日最初に俺達を囲んできたやつだ。あれは地球から出たゴミのようなものだ。人間じゃない。というか本来はあんな姿じゃないんだが……」
「地球の……ゴミ?」
「そう。生き物が生きていくのには、不必要なものを排泄する必要があるだろ?それと同じだ」
「いやそうじゃなくて、何で生まれるの?地球は食事取らないでしょ?」
「実はそこはまだちゃんとした原因はわかってない。今の最有力は人間の負の感情説らしいが」
「負の感情……」
怒ったり、悲しんだりするのが原因……ってこと?
それだけであんな怪物が生まれるの……?
私がそう考えている間にも、まー君の説明は続いている。
「で、もう1つが堕ち星。今日俺達を痛めつけたやつだな。あっちは残念ながら人間だ」
「え、あれ人間なの……!?」
「残念ながらな」
「……なんで、あんな姿に?」
「ちゃんとしたことはわからない。ただ澱みと星座の力が関係しているのは間違いないと考えていいだろう」
そう言った彼の顔は辛そうなの顔だった。理由はわからないけど。
澱み……堕ち星……。
……澱みってあの黒いモヤモヤでもあるんだよね。
「もしかして……私さっきその堕ち星ってやつにされかけてたの?」
「多分な。助かったのが不思議なくらいだ。なんともないんだろ?」
「うん。あ、でもギアを使ったときの体の痛さがまだ残ってる感じがするけど……。
まー君、あんな痛みをいつも我慢して戦ってるの?」
「いや、そんなことはないんだけどな……。なぜだ?」
まー君はまた黙ってしまった。
でも私も色々聞いて頭の中がぐちゃぐちゃになってたから休憩したかったしちょうど良かった。
澱み……堕ち星……。
……堕ち星になってしまった人は助からないのかな。
そのとき、横に置いてある私のスマホのバイブレーションの音が耳に入って来た。
……いつ置いたんだろ?座ったときかな。
そう思いながら手に取って確認するとひーちゃんから電話がかかってきていた。
通知の数も凄い量になってる。
……絶対心配されてるよね。
私は急いで電話に出る。
『やっと出た。由衣、今どこにいるの?』
「あ、えーと………まだ……駐車場にいます……」
『やっぱり……。無事?怪我してない?』
「うん!それは大丈夫!」
『良かった……。で、真聡は?』
「まー君?隣りにいるよ?」
私はスピーカーボタンを押して彼に代わろうとする。
まー君は少し嫌そうな顔をしている。
だけど、私が強引に渡そうとするので諦めて受け取ってくれた。
「何だ」
『「何だ」じゃないでしょ。……真聡も無事なの?』
「あぁ」
『良かった。で、ちゃんと帰ってこれるの?タムセンとか同じクラスの友達が心配してるよ?』
ひーちゃんのその言葉の後。
私のスマホから何人かの声が一気に聞こえてきた。
これは……麻優ちゃんと桜子と佳奈ちゃんの声かな?
あと乃々華ちゃんの声も聞こえたと思う。
「みんな!心配してくれてありがと〜!大丈夫!
でも……どうやって帰ろうか悩んでて……」
『タクシー呼ぶしかないんじゃない?』
「ここからだとかなりの運賃取られるだろ」
「でも歩いて帰るの嫌だよ!?」
「俺も嫌だわ」
来たときはバスだったから早かったけど、歩いて帰ると何時間かかるかわからないから嫌だ。
今からだと暗くなっても家につかないだろうし。
それに山道だから絶対に嫌だ。
私の家は車があるからお母さんに電話して迎えに来てもらうのは………流石に凄く怒られそうであまりしたくない。
……本当にどうしよう。やっぱりタクシーを呼ぶしかないのかな。
そのとき、まー君が「悪い。1回切る。また連絡する」と言って電話を切ってしまった。
え?何で?
というかそんなことしたら、またひーちゃんに怒られる気がするよ……?
だけど混乱する私を気にせず、まー君は荷物と私の手を掴んで引っ張って公衆トイレの裏に連れて行く。
その数分後。
駐車場にやってきたのは、警察だった。




