表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
129/215

第127話 鍛えてるんだ

 地下貯水路から辿り着いた広い空間に、凄い衝撃音が響いた。


 その方向を見ると真聡まさとが壁まで吹き飛ばされていた。

 そして、力なく地面に落ちていく。


 どう考えてもヤバい。


 すると、隣にいる由衣ゆいが真聡の名前を叫びながら走り出した。

 けど俺は咄嗟に由衣の肩を掴んで止めた。


「なんで止めるの!?」

「……俺が行く。由衣は蟹座のプレートを回収して、鈴保すずほを助けてやってくれ」


 由衣からの返事はない。

 星鎧を纏っているから表情もわかんねぇ。


 でもきっと驚いた顔をしてると思う。

 そして、「私が行きたい」って言うと思う。


 俺だって由衣に行かせてやりたい。

 何なら2人で行った方が確実に助けられると思う。


 でもここは、俺が行くべきだと思った。


 いくら俺より先に真聡と戦っていたとはいえ、由衣は喧嘩や戦いなんて慣れてないはずだ。

 それに武器も能力も、戦いに向いてるとは言いにくい。


 だから、俺が行くべきだと思った。

 俺の武器は爪も出るガントレットで攻撃的だしな。


 そして数十秒経って、由衣は絞り出すように「…………わかった」と呟いた。


「まー君を、お願い」

「おう。任された」


 そして由衣に蟹座を任せて、真聡を助けるのを託された俺は走り出す。


 もちろん堕ち星を元の人間に戻すには由衣の力が必要だ。


 けど、それは今じゃない。


 それに羊で動きを止めれるなら、飛んで動き回る魚座を何とかできるかもしれないしな。



 そして真聡は大ピンチに陥っていた。

 立ち上がりかけてる状態で、2体の堕ち星と巨大蛇に詰め寄られてる。


 そして既にへび座から黒い霧が、からす座からは羽根が飛ばされて真聡に迫っている。


 できるかわからねぇけどやるしかねぇ。

 とりあえず助けねぇと。


 俺はガントレットを生成して、走りながら斬撃を飛ばす。


 飛んだ斬撃は黒い煙と羽根とぶつかってかき消した。


 そしてそのまま真聡の前まで走り込んで、巨大蛇の尻尾を受け止める。


 結構重い。

 けどそれより、真聡に言ってやらねぇと気がすまねぇ。


 俺は真聡に向けて、ずっと思ってることを叫ぶ。


「1人で突っ走んなって……前も言ったよな!」


 そのまま勢いのまま、巨大蛇をへび座とからす座の方に押し飛ばす。


 ……これでちょっとは時間が稼げるか?


 そこに真聡が「……概念体は倒せたのか」と聞いてきた。


「蟹だけな。まぁ、由衣の助けがあったからだけどな」

「由衣……あいつ……」

「お前が死んだら元も子もねぇんだよ!

 理事長も全員無事で帰ってこいって言ってただろ!

 だからこうなった以上、全員で脱出するぞ」


 だけど真聡からの返事はない。


 ただ、聞こえるか聞こえないかギリギリの舌打ちだけが返ってきた。


 ……何が不満なんだよ。


 反論しようとするが、今はそういう状況ではなかった。

 「はいはい、そういうの良いから」と本気で呆れてるような声が聞こえてきた。


「ここに来た時点で全員ここで死ぬことは決まってるんだから」


 振り返ると、 巨大蛇をどうにかしたらしい2体の堕ち星が戻ってきていた。

 もちろんその周りにはさっきの巨大蛇もいる。


 だけど俺は、「お前こそ勝手に決めてんじゃねぇよ」と言い返す。



 確かにここは敵の本拠地かもしれねぇ。

 俺達に逃げる場所はないかもしれねぇ。


 けどこんなところで、死んでたまるか。


 ガントレット消滅させて、真聡に「やるぞ」と声をかける。

 そして、手を貸す。


 真聡は黙ってるけど、俺の手を掴んだ。

 俺はそのまま真聡を引っ張って立たせる。


「……からす座、頼むぞ」


 そう言い残して、真聡はへび座との距離を詰めていく。


 だから何でそう突っ走るんだよ!


 けどまぁ……俺がからす座を相手することで、あいつの負担を少しでも減らせるなら…………今はそれでいいか。


 自分に言い聞かせながら、俺はからす座との距離を詰める。


 まずは右手で一撃打ち込む。

 しかし、余裕そうに受け止められた。


 残念ながら全然効いてなさそうだ。


「山羊座は俺の相手を君にさせたいらしいけど……君じゃあ役不足じゃない?

 前に戦ったときと大差ないよ?」

「やくぶそく……?

 ……何が言いたいか知らねぇけど、俺だって前と同じじゃねぇからな!」

「馬鹿の見栄張り程見苦しいものはないぞ〜」


 へらへらとした態度でそう言ってくるからす座。

 しかも俺の腕を掴んだまま蹴りを入れてくる。何度も、何度も繰り返し。


 俺は胸と腹に星力を集めて受ける。


 けど痛みがなくなるわけじゃない。

 早く抜け出さねぇと。


 俺はガントレットを自由な左手にだけ再生成する。

 そしてそのまま、斜め上に斬り上げる。


 するとからす座は俺の手を離して距離を取った。


 言葉の意味はよくわからねぇ。

 でも馬鹿にされてるのだけはわかった。


 そんなからす座はすぐに距離を詰めなおしてきた。地面すれすれをすべるように飛んで。

 そしてそのまま俺に蹴りを入れてくる。


 俺はそれを避けて蹴りで返す。


 けど避けられた。


 そこから拳と蹴りの打ち合いが始まる。

 打って、避けて、避けて、打って。



 ……俺は真聡程は強くねぇ。頭も良くねぇ。


 でもずっと。ちゃんと言葉にはできないけど、誰かを助けれる人になりたいって思ってた。


 そして俺は、真聡の戦う姿を見て。自分も真聡みたいに人を襲う怪物から誰かを助けたいって思ったんだ。


 俺のやりたいことがしっかりと見えたのは真聡のお陰だ。



 重い蹴りが飛んできた。

 避けれないので両手でなんとか受ける。


 けど重すぎて俺は衝撃で後ろへ吹き飛ぶ。


 何とか体勢は崩さなかったけど、からす座と少し距離が空いた。



 真聡とへび座の戦いが見える。

 巨大蛇を上手く避けながら、へび座と殴り合ってる。



 ……そうだ。



 俺は自分を後回しにして誰かと戦う、真聡の力になりたい。



 真聡が1人で、走らなくて良いように。



 ……俺だって、鍛えてるんだ。前の俺とは違う。



 からす座がまた地面すれすれを滑るように飛んで、俺に突っ込んでくる。


 俺はそれを正面から受け止める。


 そして、投げる!


 さらにそのまま距離を詰めて、星力を集中させた右の拳を叩き込む!


 するとからす座は投げられたのと拳の勢いで吹っ飛んで、地面に倒れた。


「なるほどね……確かに少しは強くなってるみたいだね」


 そう言いながらからす座は立ち上がった。


 かと思ったら、「だったら!」と叫びながら飛んだ。



 そして俺が届かない高さ空中から羽根を飛ばしてくる。


 弾丸のような速さで飛んでくる黒い羽根。

 俺は右手にもガントレットを生成して、両手から斬撃を飛ばして羽根を弾き返す。


 けどこのままだと俺の攻撃が届かねぇんだよな……。


 俺はダメ元でからす座に向かって「おい!降りてこい!」と叫ぶ。


「やだね。それに、自分の有利な方法で戦うのは基本だろ?」


 確かにそれはそう。

 だからといってこのままは良くねぇ。


 不利すぎて、何もできないまま負ける。


 そう考えている間にもからす座は羽根を飛ばし、俺に突撃を仕掛けてくる。

 俺はそれを横に飛んで、地面を転がって避ける。


 するとからす座はまた間合いの外に飛んでいって、羽根を飛ばしてくる。

 俺はそれを斬撃を飛ばして向かえ打つ。


 この状況、どうやって突破したらいいんだよ。


 そのとき思い出したのは、さっきの鈴保の行動。

 壁を蹴って、飛び回る魚座との距離を詰めていた。


 ……それだ。


 でもそれだけだと、きっとからす座には逃げる。

 だから絶対避けられない状況じゃないと駄目だ。


 からす座はまだ羽根を飛ばしてくる。

 それをまた斬撃で迎え撃ってから、続いて言葉を投げる。


「こんな攻撃なんともねぇぞ!俺達を殺すんじゃなかったのか!」

「へぇ〜……大口叩くね。じゃあ、お望み通りにしてあげるよ」


 そう言い切ったからす座は、俺に向けて羽根を飛ばしてきた。

 けど、さっきよりも量が多い。倍ぐらいある。


 俺はそれを迎え撃つんじゃなくて、避ける。というか走って逃げる。

 逃げる先は柱と壁の間。


 音からして、からす座は羽根を飛ばしながら追いかけてきている。

 その証拠のように言葉も飛んでくる。


「何か作戦でもあるかと思ったのに逃げるだけか。やっぱり君、馬鹿か」

「うるせぇよ!」


 チラッと振り返ってみると、からす座との距離はそんなに変わってない。


 羽根飛ばしながらの癖に速いな……。


 そう思っていると、柱が目の前まで来ていた。


 足を止めて振り返ると、また羽根を飛んできていた。

 俺はそれを斬撃を飛ばしてまくって撃ち落とす。


 そして羽根がほとんど消えたとき。

 俺は、からす座の姿が見えないことに気が付いた。


 ……どこに行った?



 次の瞬間。

 真上から「俺の勝ちだ」と聞こえた。


 見上げると、俺の真上にからす座がいた。

 しかも、落ちてきている。


 どうやらそのまま、上からかかと落としを決めるつもりらしい。


 けどなぁ。


「誘ったんだよ!」


 俺はそう叫びながら、近くの柱に向けて飛ぶ。

 そして柱を蹴ってさらに飛ぶ!


 途中、落ちていくからす座とすれ違う。

 「こいつ……!」と叫びながら、体勢を立て直そうとしている。


 せっかく上取ったのに、逃げられてたまるかよ!


 そして俺はからす座の上からからす座に向けて落下する。


 その落下の勢いも合わせた拳を、からす座に打ち込む!


 けど、残念ながらからす座はぎりぎりのところで避けられた。

 だけど、かすりはした。逃げられるときに羽に当たった。


 ……もう少し上手くやってちゃんと当たってれば、決め手になっていた自身があったんだけどな。


 そんな悔しい思いをしながら、地面に突き刺さったガントレットを引き抜く。


 からす座は少し離れたところに「やってくたね……」と呟きながら着地した。


 でもよく見ると、右の羽を庇っている。


 ……やっぱりもう少し上手くあたってればな。


 でも、今のはもう使えないだろうな。きっと警戒される。

 じゃあ次はどうするか。


 そう考えていると、からす座が「……確かに」と口を開いた。


「あの時よりは強くなってるね。

 だったら、俺も奥の手を出すか」


 ……奥の手?まだなんか隠してんのか、こいつ。


 そう考えているとからす座はどこからかプレートを取り出した。


 何をする気かわからねぇ。

 だから俺は、とりあえずからす座からは目を離さず構える。



 避けるなり、迎え撃つなりできるように。



 けど、その警戒は全く意味が無かった。



「しぶんぎ座流星群」



 からす座がそう告げると、プレートが黒く光った。



 その直後、何かが降ってくる音が地下貯水路に響き始めた。



 そして、俺が何が起きているか認識するよりも前に。

 地下貯水路は轟音と共に煙に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ