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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第126話 無い方が良い

 時間は真聡まさと達が巨大な蛇と遭遇した頃に遡る。


☆☆☆


 俺は魚座と蟹座と遭遇して星鎧を生成してから、鈴保すずほと一緒に戦い続けていた。


 ただ地下貯水路は狭くて戦いづらい。

 だから少しずつ奥へと移動しながら。


 すると、かなり広い場所に出た。


「鈴保!ここなら広くて戦いやすいよな!」

「そうね。さっさと倒すよ」


 真聡達の状況はわかんねぇ。


 だけど、黄道十二宮星座の概念体が2体もいるのが明らかにおかしいことはわかる。

 だからさっさとこの2体を倒して真聡と合流したほうがいい。


 俺は少し焦りながらも蟹座との距離を詰める。


 さっきまでで甲羅にはほとんど攻撃が通らないことがわかってる。

 だから狙うなら腹の方。腹の方ならまだ攻撃が通るはず。

 何より広いところに出れた今なら、動きやすいから潜り込みやすい。


 そう思って下に潜り込もうとする俺に、鋏が振り下ろされる。


 この鋏は見ただけでヤバいのが分かるので死ぬ気で避ける。


 あれ挟まれたら終わりだと思うんだよな。

 さっき通路の壁削ってたし。


 結局、潜り込めずにまた距離が出来た。

 そのときに少しだけ鈴保が視界に入った。


 鈴保は飛び回る魚座に向かって毒を飛ばしている。


 魚座は浮いてるし動き回る。でも「蟹は固いから任せた」って鈴保に言われた。

 あと魚座については「毒を入れて動きを鈍らせるか落とすかしたい」と言ってた。


 ……鈴保も全力で戦ってる。


 俺だっていつまでもこうしちゃいられねぇ。

 今度こそ潜り込んでやる。



 そう思って、距離を詰めようとしたとき。



 ゴオッという凄い音が聞こえた。



 その方向を見ると、俺達が出てきた別の通路から凄い量の水が溢れ出してきた。


 気になるので、蟹と戦いながらもなんとか時々視線を向ける。


 するとその水のから7人ほど人だ出てきた。


 由衣ゆい佑希ゆうきとジャージ姿の人が数人……。

 人数的に行方不明だった生物部の人たちか?


 どうやら無事に見つかったようで良かった。


 そう考えてるうちに蟹座が近づいてきていた。


 俺は鋏を避けながらも、鋏の上の関節みたいなとこにガントレットでの一撃を叩き込む。


 すると蟹座は痛かったらしく、後ろに下がっていた。


 ……あそこもありっちゃありだな。やっぱり硬いけど。


 そう考えていると、また目の端で何かが動くのが見えた。

 俺は蟹座とその何かが同時に見える位置を取る。


 どうやらさっきと同じ通路から真聡が出てきたらしい。

 既に星鎧を生成している。


 ……つまり、真聡も何かと戦っているのか?


 そう考えていると、今度は同じ通路から巨大な蛇が出てきた。


 まだ概念体いるのかよ!


 ……でもへび座も巨大な蛇に成れるんだよな?どっちだ?


 そのとき。


「はい、そこまで」


 何者かの声が響いて聞こえてきた。


 俺はその聞いたことがある声がする方向を見る。



 するとそこには、へび座の堕ち星とからす座の堕ち星がいた。 



 おいおい、強敵の堕ち星が揃っているのかよ……最悪じゃねぇか……。


 ……でもへび座があそこにいるってことは、あっちの蛇は概念体ってことだよな。


 俺なりに状況を見てるとへび座が「本当にさ」と話し始めた。


「本っ当に、君達って僕の邪魔をしてくれるよね。

 ……まぁでも。僕の計画は最終段階で、ここは澱みで満ちている。

 だから、君達に勝ち目はないよ」


 ……何だよ計画って。ここで何やってんだよこいつらは。


 そう思っていると、真聡の指示が聞こえてきた。


「由衣はそのまま避難誘導、佑希はこの蛇、志郎しろうと鈴保はそのまま概念体の相手!」


 ……つまりあいつ、1人で堕ち星両方とも相手する気かよ。

 流石に無茶だろ。


 助けに行きてぇ。


 でもそうしたら鈴保に概念体両方押し付けることになる。

 それは無理だ。


 ……だったらこの概念体さっさと倒さねぇと。


 そう意気込んでると、鈴保が声をかけてきた。


「志郎、いける?」

「当たり前だ。さっさと倒さねぇとな」


 どうやら鈴保も俺と似たようなことを考えてるらしい。


 鈴保はそう言い残して、今度は壁に向かって走って行く。


 ……壁を蹴って浮いてる魚座との距離を詰めるのか?


 そう思いながらも、俺も蟹座との距離を詰める。


 今度は鋏に邪魔されないように、横から足の合間を通り抜けて下に潜り込む。


 そして、腹に渾身のアッパーを叩き込む!


 綺麗に一撃を貰った蟹座はふらふらしながらも横移動して、俺と距離を取った。


 手応えはあったんだけどやっぱり硬ぇ。

 ガントレットの先がかけるかと思った。


 というか概念体って結局どうやって倒すんだよ!


 前の蠍座は鈴保の手を刺したあと消滅しちまった。

 でも流石に今回はそんなことは起きねぇと思う。


 真聡はとにかく攻撃しろと言っていたけど……わかんねぇよ……。


 悩んでても仕方ないから、とにかく距離を詰める。


 けど、さっき潜りこんだからか警戒されてる。


 足ですげぇ邪魔してくる。

 走ったり転がったりしながら何とか避ける。


 そもそもどこを攻撃すればいいんだよ。

 全身硬いんだけど。



 考えながらも、攻撃の隙を探して動き回る。



 するとそこに、「しろ君避けて!」という声が聞こえてきた。



 反射的に俺は蟹座から離れると同時に、5匹ほどの半透明の羊が突っ込んできた。

 それに続いて赤色の鎧、由衣が蟹座に近づいて杖で思いっきり殴った。


 フルスイングだな。

 けどやっぱり硬いらしい。


 距離を取って、杖を握ってた腕をぶんぶん振ってる。

 とりあえず、俺はそんな由衣と合流して言葉をかける。


「いいのかよ、真聡は避難誘導しろって言ってただろ」

「だってまー君1人はダメでしょ!」

「……やっぱそうだよな」

「あの大っきな蛇はゆー君が相手するらしいから、早くこの2体倒そ。

 それで、まー君を助けに行こう」


 俺が「だな」と返事したとき。

 近付いてきた蟹座が鋏を振り下ろしてきた。


 俺達はとりあえず別れて避ける。


 ……にしてもどうやって倒すんだよ。

 硬すぎて決め手がねぇぞ。


 悩みながらも、もう一度蟹座の足を杖で殴ろうとする由衣を見守る。


 ……いや、見守ってる場合じゃないのは分かってる。

 でもなんか隙とか見つけれないかなって。


 そこに後ろから、「逆にその武器無い方が良いんじゃない」という声が聞こえてきた。


 驚いて振り向くと鈴保の背中がすぐ後ろにいた。

 とりあえず俺は「武器無しでどうすんだよ」と返す。


「硬くて弾かれるんでしょ。じゃあ無い方がいいでしょ」


 そう言い残して、鈴保はまた魚座に向かって行った。


 ……だが言われてみればそうかもな。


 でも、そうしたら威力が下がらねぇか?


 そう思ったとき、さっきチラッと見えたもの……というか、時々見ていたことを思い出した。


 真聡は結構、火とか水とか風とかを殴るときに拳に纏わせている。


 …………俺も似たようなことできねぇかな。


 ガントレットから星力で斬撃を飛ばすことはできる。

 なら、ガントレット無しなら拳そのものに星力を纏わせれねぇのかな。


 蟹座に視線を戻す。

 俺が考えている間もずっと、由衣が代わりに蟹座と戦っている。


 早く戻らねぇと。


 ……というか今の俺なら警戒されてないだろうし、また潜り込めるんじゃねぇか?

 だったら……今やるしかねぇよな!


 俺は地面を蹴って全速力で蟹座に近づく。

 右腕に星力を集中させながら。


 斬撃が飛ばせるようになったんだ。今の俺ならできる。


 由衣が鋏の攻撃を全力で避けてる。


 その隙に俺は横から蟹座に近づいて、腹の正面を取る。

 そして気合を入れながら、拳を叩き込む!



 拳は、綺麗に入った。



 そして一瞬だけ、青白い光が走った気がした。



 その一撃を受けた蟹座は、衝撃で後ろに下がる。


 決まった……。


 その直後、「しろ君、凄い!」と言いながら由衣が駆け寄って来た。


 ……鎧で顔見えてねぇけど目がキラキラしてる気がする。


 俺は「真聡のやつ、俺なりに真似しただけだけどな」と返す。


 だけど今まで一番手応えがあった。

 これならイケる気がする。


 そう思った俺は「なぁ由衣」と声をかける。


「何?」

「もう1回、羊で蟹の動き鈍らせれるか?」

「上手くいくかわかんないけど……やってみる」

「頼むわ。鈍くなったら俺がもう1回殴る。とりあえず、羊頼む」

「わかった」


 俺は由衣の返事を聞きながらも、ちょうど体勢を立て直した蟹座との距離を詰める。


 今は時間を稼ぐだけでいい。

 俺は蟹座の周りを動き回って、注意を俺に向けさせる。


 ただ、俺は真聡のように速く動けるわけではない。

 だから鋏の攻撃が結構危ない。


 ひやひやしながらも鋏や足を避け続ける。


 そして何度か鋏の攻撃を避けたとき。

 由衣の「羊の群れ!」という声が聞こえた。


 俺はその声を合図に蟹座から離れる。


 すると羊が蟹座に突撃していく。


 俺はその間にもう一度集中する。

 今度は両腕、両足に星力を集中させるイメージ。


 どこで攻撃するかわかんねぇからな。


 羊が全て消え、蟹座は体勢を崩している。


 俺はそのタイミングで、もう一度蟹座の腹の正面に出る。


 そして右、左、右足と連撃を決める。


 最後にもう一度渾身の右ストレートを叩き込む!


 それを受けた蟹座は、青白い光と共に壁まで吹き飛んだ。


「やったねしろ君!」

「おう!」


 上手くいった喜びを、駆け寄って来た由衣とグータッチをして分かち合う。


 そしてもう一度蟹座に視線を向ける。

 ちょうど蟹座は、どんどん小さくなって見えなくなった。


「これって!」

「あぁ。たぶん倒せたよな」



 駆け寄って確認しようとしたそのとき。



 明らかに痛そうな衝撃音が、地下貯水路内に響いた。

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