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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第124話 巨大な蛇

 時間は少し巻き戻り、日和ひより達が水に飲み込まれる前。


☆☆☆


 咄嗟に詠唱をして生成した土壁に何かがぶつかる。

 そのときに生まれる重い音が地下貯水路の中を響いている。


 生物部の人達の話では、この地下貯水路には蛇人間と巨大な蛇の2種類の怪物がいるらしい。

 そして恐らく、蛇人間はへび座の堕ち星だろう。


 ……ならば巨大蛇は別の概念体だろうか。


 しかし、数日前に射守いもりを助けたときにはへび座も巨大蛇に成っていた。


 そうなるとこの水路にいるのはへび座の堕ち星だけと考えて良いのか。


 しかし、妙な違和感がある。

 俺が今相対してる相手、土壁に体当たりをしているのは本当にへび座か?


 なにより無言なのがおかしい。

 今までの言動からすると、へび座なら俺に言葉を投げてきそうだ。


 そう考えていると、土壁からぱらぱらと土が落ちてきた。


 ……崩れ始めている。


 そして崩れた土壁の隙間から蛇の顔が見えた。


 このままではマズい。

 だが、日和達が逃げる時間は稼げたはずだ。


 だったら、ここからは打って出るべきだろう。


 俺は後ろに飛び下がりながら立ち上がる。

 そして生成したプレートをギアに入れて、いつもの手順を取って構える。


「星鎧生装」


 その言葉と共に、ギア上部のボタンを押す。

 するとギアから山羊座が飛び出し、薄暗い地下貯水路を紺色の光が満たす。


 その光に包まれ、俺は紺色と黒色の星座の力を宿す鎧を身に纏う。



 そして、光は晴れる。



 まだ土壁は崩れていない。


 だがあの蛇。顔であの大きさだとかなり巨大だろう。

 この狭さでどう戦うか。


 日和達は後ろに逃がした。

 だからできるなら奥に押し込みながら戦いたい。



 そう考えていた時間が、命取りだった。



 いきなり土壁が吹き飛び、地下貯水路の3分の2ほどの大きさの巨大な蛇がその姿を現した。


 そしてその勢いのまま、巨大蛇は俺に噛みついてきた。

 俺は咄嗟の出来事に反応できず、身体が地面から離れる。


 そして巨大蛇は俺を咥えたまま前進を始めた。


 もしかしてこいつ、俺を咥えたまま日和達を追うつもりか?

 やはり早く抜け出して足止めしなければ。


 ……いや、俺が脱出に失敗した場合が恐ろしい。

 俺が何もできないまま全員がやられる。そんな最悪の事態は避けたい。


 ならば先に、日和達を遠くに行かせた方が良いだろう。


 ……あまりやりたくはないが。


 俺は巨大な蛇に加えられながらも、自由な左手に杖を生成して言葉を紡ぐ。


「水よ。生命の源たる水よ。今、その大いなる力を我に分け与え給え。今、澱みや堕ち星から逃げ惑いし人々を遠くへ導き給え!」


 杖先から水が溢れ、地下貯水路内の水と混ざり合う。

 そして、激しい水の流れが生まれる。


 水が多い地下貯水路内。

 例え一瞬だとしても、激しい水の流れを生むことはそう難しいことではなかった。


 しかし、巨大蛇はその流れを気にせず前進を続ける。


 だが日和達はこの水に押し流され、遠くに運ばれるだろう。

 追いつくには時間がかかるはずだ。


 ……日和を始めとした生物部の人達には本当に悪いが、今はこれしか思いつかなかった。本当に申し訳ないと思っている。


 由衣ゆい佑希ゆうきは防水魔術を使っているから大丈夫だろう。

 生物部の人達は……2人になんとかしてもらうしかない。


 とりあえず次だ。

 早くこの巨大蛇を何とかしなければ。


 そんな焦りと共に、俺は短く「電流よ、我が全身を駆け巡れ」と言葉を紡ぐ。


 すると言葉の通り、紺色と黒色の星鎧の表面を電気が走り始めた。

 そして当然、俺を咥えている巨大蛇も感電する。


 動きが鈍った。

 流石に堪えるらしい。


 しかし、噛む力は弱まらない。

 それどころか、巨大蛇は頭を振って壁にぶつかり始めた。


 どうやらそこまでして、電流魔術を止めたいが俺を離したくはないらしい。


 俺はぶつかる前に何とか無詠唱だが耐衝撃魔術を使用できた。電流魔術はもちろん維持できている。


 しかし、巨大蛇は懲りずに壁にぶつかり続けている。


 ……痛めつけられながら2つ同時に使い続けるのはキツイんだが。

 あと耐衝撃魔術を使ってはいるが痛みは感じるし。


 そんな戦いがしばらく続いた後。

 突然、俺の身体が宙を舞った。


 痺れを切らしたのか、遂に俺を離したらしい。


 何度か地面とぶつかりながらも体勢を整える。そして同時に距離を取る。


 狭い水路は戦い辛くて仕方ない。


 そう思っているとすぐに、少し、いやかなり広い空間に出た。


 ここなら広くて戦いやすい。

 そして何やら戦っているような音も聞こえる。


 巨大蛇との距離はまだある。

 なので俺は出てきた通路から意識を逸らさずに周囲を確認する。


 天井が高く、柱が沢山ある空間。


 ……だいぶ奥まで来たのかもしれない。


 右には複数の人が固まっているのが見える。


 ジャージ姿が5人、制服姿が2人。

 どうやら俺が水で押し流した人は全員無事のようだ。


 そして左には橙色の星鎧と深紅色の星鎧。

 志郎しろう鈴保すずほだ。


 戦っているのは……尻尾が繋がれた2匹の巨大な魚と巨大な蟹。


 ……魚座と蟹座の概念体か?


 どうやら、事態は俺が思っている以上にヤバいようだ。


 あちらもなんとかしたいが……最優先は生物部5人の避難だ。

 増援は送れない。


 そして巨大な蛇が通路から姿を現す。


 由衣と佑希に指示を出そうと息を吸う。



 そのとき。



「はい、そこまで」



 突然、何者かの声が地下貯水路に響いた。

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