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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第122話 怖いのか?

 真聡まさと達3人の背中が遠くなっていく。


 すると、隣に居る志郎しろうが「じゃあ、俺達も行くか」と呟いた。


 そして地下貯水路の分かれ道の右側の暗闇に進んでいく。

 私もその背中を追う。


 ……やっぱり気乗りしないけど。

 でもここで置いて行かれる方が無理だし。


 そして2人で暗闇の中を、ヘルメットのライトを頼りに進んでいく。


 しばらくして、いきなり志郎が立ち止まった。

 私はなんとかぶつかる前に立ち止まる。


 あまりにも突然だったから、私の口から思わず「なに」と言葉が漏れる。


「いきなり止まらないでよ」

「いやぁ……鈴保すずほ、1つ聞いていいか?」


 志郎は前を向いたまま、そう聞いてきた。


 ……何が聞きたいのこいつ。


 そう思いながらも「……何」と言葉を返す。


「お前……怖いのか?」

「……は???な、何が!!??そんなわけないじゃん!?」

「いやだって鈴保……ずっと俺の背中を盾にしてるし……服掴んでるよな?」


 私はその言葉で、自分の手元に視線を向ける。


 確かに、私の右手は志郎のポロシャツの裾を指先で掴んでいた。



 …………いや何で私こいつの服掴んでるの!!??



 私は自分の無意識の行動に驚いて服を離して後ろに下がる。


 その反応を見た志郎は少し笑いながら「何だよ、無意識かよ」と言った。

 私は吐き捨てるように「うるさい。早く進んで」と返す。


 だけど、志郎は私の方を向いて「……怖いのか?」と聞いてきた。


 ……答えたくない。


 でもきっと志郎は答えないと先に進まないと思う。


 今は人の命がかかってる。早く進まないと。



 ……だったら、答えたくないけど答えるしかない。



 私は渋々「そう。怖い。何か悪い」と答える。


「いやいや、悪いなんて言ってないだろ……。

 ……何が怖いんだ?」

「……こういう場所が苦手なの。

 小さい頃、たまたまテレビでやってた心霊番組を見てから苦手なの」


 言ってしまった。


 あまりにも恥ずかしいから、梨奈りな以外には言ったことがないのに。

 しかもよりによって志郎こいつに。


 ……だって、高校生にもなってまだ克服できてないのって恥ずかしいでしょ。


 私がそんな恥ずかしさと戦っている間。志郎は「あぁ……なるほどなぁ……」と呟いている。


 でも、その後に出てきた言葉は予想外のものだった。


「……戻るか?」

「はぁ!?何で!?」

「怖いのに無理に行く必要なんてないだろ。真聡もきっと怒んねぇよ」


 そうだった。

 確かに志郎は馬鹿でデリカシーが足りないし、ノリが軽くてたまにイジってくる。


 でも他人のことはしっかり考えてる。

 人の悩みや欠点を笑うやつなんかじゃない。


 むしろ笑うやつを頼んでもないのに勝手に文句言いに行くタイプ。


 ……言ったら笑われそうとか思ってた私が馬鹿みたい。


 そう思いながらも、私は「もし怒ったら?」と聞き返してみる。


「あ〜……その時はお前の味方する。一緒に謝る」

「……ありがと。

 ……でも戻らない。早く進もう」


 私なんか恥ずかしくなって、そう言いながら止まってる志郎を追い越す。


 でもすぐに「待てよ」と声が飛んできた。

 私は「今度は何?」と言いながら、足をを止めて振り返る。


「いや……怖いんだろ?

 だったら無理すんなよ。俺のこと盾にしていいし、どっか掴んでてもいいからさ」


 そう言ってくれた志郎は、とてもかっこよく見えた。


 ……凄く不本意だけど。


 でもやっぱり怖いから、その言葉に甘えることにした。

 凄く癪だけど。


 そして、私は志郎を盾にしながら再び地下貯水路内を進み始める。

 歩きながら志郎は色々な話題を振ってくる。


 ……凄く気を使われてる気がする。


 無視するのは流石に申し訳ないので話に乗りながら進む。


 そして数分後。

 今度は3方向の分かれ道が現れた。


「右と左と……正面……か。どうする?」


 志郎がそう言いながら、振り返って来た。


 でも、私はそれよりも気になることが合った。


「……それより何か聞こえない?」

「……聞こえるな。どっちだ?」


 聞こえるのは、遠くで何か水をかき分けて走ってるのような音。

 それも沢山。


 私達は辺りを見回して、音の原因を探す。


 だけど音の原因は分からない。

 しかも、だんだん大きくなってきている。


 どんどん怖い気持ちが上がってくる。

 心臓が飛び出してくるんじゃないかってぐらい、早くなっている。


 怖い気持ちがもう我慢できなくなったとき、ようやくその音は右側から来ていることに気が付いた。

 でも音の大きさ的に、もうすぐ近くに居る。


「無理無理無理無理っ!!!!」


 私の口から、そんな叫び声が飛び出す。



 だけど、何も起きない。



 でも「チャパチャパ」という足音だけは沢山聞こえる。

 どういう状況かわかんらいけど、ただ怖い。



 そこに、志郎の「……鈴保……鼠の群れだったぞ」という言葉が聞こえた。


「……え?」

「もう通り過ぎたし………。あと、流石にこの掴まれ方は辛ぇわ……」


 私はいつの間にか閉じていた目を開けて、今の状況を確かめる。


 私は今、志郎に斜め右後ろから抱きついている……。


 ………は?何で?


 私は驚きのあまり、「意味わかんない!!」と叫びながら志郎を突き飛ばしてしまった。


 志郎は「何でぇ!?」と突き飛ばされながらも……転ばない。


 ……知ってたけど体幹は強い。


 その後、志郎は「いやいや……流石に酷くねぇか……?」と言いながら戻って来た。


 ……流石に今のは私が悪い。


 なので「……ごめん」と謝る。


 すると志郎はため息をつきながらも「まぁいいけどさ」と呟いた。


「でも突き飛ばすのだけはやめてくれ……」

「………本当にごめん」

「で、どうする?どれに進む?」


 そう言いながら志郎は右、正面、左と順番にヘルメットのライトで照らす。


 私は少し考えてから、「……正面」と答える。


「一応……理由聞いてもいいか?」

「左に行くと真聡達に合流するかもしれない。したら分かれた意味がない。

 あと変に曲がると迷ったときが困ると思う。だからとりあえず突き当たるまで一直線で行こう」

「うし、じゃあ行くか」


 志郎のその言葉を合図に、私達は再び歩き出す。


 そして志郎はまた前を歩いてくれる。


 ……今度何かあっても、できるだけ掴まないようにしよう。


 そう決意しながら奥へ進む。


 それから分かれ道をできるだけ正面を選んで進む。


 2回ほど分かれ道を過ぎたとき。

 また遠くから変な音が聞こえてきた。


 私達は足を止める。

 そして2人で進行方向をライトで照らす。



 でも、何もいない。



 何も見えないなら……。


「また鼠?」

「にしては音が大きくねぇか?それにさっきと比べると少ない気がするぞ」


 私は耳を澄ませる。


 ここはさっきと違って分かれ道じゃない。

 来るなら前か後ろの2つだけ。


 考えている間にも「ジャパジャパ」という音は、だんだん大きくなってくる。


 どっちから来る……?


「後ろだ!鈴保!」


 志郎がそう叫んだ直後、私の手を引いて後ろに回ってくれた。

 続いて志郎は「しゃがめ!!」と叫んだ。


 私は志郎が見たものが見えてないのでとりあえずしゃがむ。


 聞こえるのは風を切るような音。

 そして頭の上を何かが通り過ぎた気配がした。

 

 ……いや、飛んでるやつは足音しないよね?


 そう思いながらも私は顔を上げて、その飛んでるものの正体を確認する。


 すると私の前で、2匹の魚が浮いているのが視界に入った。

 2匹の魚は、尾びれの付け根が紐のようなもので結ばれている。


「……魚座の概念体ってやつ?」

「それだけじゃないらしいぜ」


 志郎の言葉で後ろに視線を向ける。

 そこには、巨大な蟹がいた。


 ……足音を立ててたのはこいつ?

 そいてこいつは……


「蟹座……?」

「どっちも黄道十二宮……だっけか?」

「そうね。………強敵かも」


 前には魚座概念体、後には蟹座概念体。


 流石に逃げれそうではない。

 真聡達に連絡してる暇もなさそう。


 でも、堕ち星じゃないし志郎と2人でもいける。


「志郎……やるよ」

「おう」


 私達は立ち上がって、お互いの背中を守る形で概念体と向き合う。

 私の正面には魚座。口をパクパクさせながら浮かんでる。


 地下貯水路に入る前に喚んだギアは、今もちゃんとお腹に巻かれてる。


 私は時計盤の7時のところに手をかざして、プレートを生成してギアに入れる。

 そして7時のところから左手を一周させて、左手を引いて右手を斜め上に突き出す。


「「星鎧生装!!」」


 その言葉の後。

 眩しいくらいの紺色の光が、暗闇の地下貯水路を埋め尽くした。

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