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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第121話 チーム分け

「じゃあ……行こっか」

「何でお前が仕切る。……全員、ギアは既に付けているな」


 真聡まさとの言葉に、私達はそれぞれ肯定の返事をする。

 そして全員がギアを付けていることを確認できたので、真聡は薄暗い地下貯水路の中に入っていく。


 そして私は1番最後に足を踏み入れる。


 ……やっぱり入りたくない。

 なんて言えないから。



 ちなみにさっきの話の通り、智陽ちはるは地上に残った。

 行っても戦えないし「念の為や連絡役が必要だ」と真聡が言ってた。


 真聡が地下貯水路の入口の封印解除した後。

 少し休憩している間に、全員真聡から防水の術を教えてもらった。


 星力って本当に色々な使い方ができるみたい。

 防水の術を使えば傘をささなくても濡れない。


 ……何か他の使い方もできそうな気がする。


 あと警察から全員、ライトが付いたヘルメットを貸してもらった。


 そして真聡は他にも鞄を受け取ってた。

 確か……中にはスポーツドリンクが入ってるって言ってた。


 もちろん私達もスポーツドリンクを貰った。


 警察と繋がりがある事は知っていた。

 だけどまさか、こんなにしっかり警察と協力する日が来るなんて想像もしてなかった。


 ……今でも少し実感がわかない。


 そんな事を考えながら、地下貯水路の奥へ進んでいく。

 ときどき真聡が立ち止まって風を起こし、澱みを奥へ押し返しながら。



 そして歩き始めて、数分程。


 地下貯水路に真聡の「止まれ」という声が響いた。


 私は目を歩く志郎しろう由衣ゆいの身体の隙間から、前の様子を窺う。


 すると、目の前で道が2つに分かれているのが見えた。


 そして由衣の「分かれ道……だね」という声が聞こえてくる。


「あぁ」

「どうする。俺は何も感じない……感じれないが」


 佑希ゆうきの言葉に、真聡が「俺もだ」と返す。


「使っていてもこの澱みの濃さじゃ何も分からんだろうが」


 真聡がため息交じりにそう呟いた。


 ……感知の術って何だろう。

 出発前、地上でも話してたけど……話の感じからすると「遠くにいる澱みや堕ち星がわかる」とかなのかな。


 薄々思ってるんだけど、真聡はまだ何かを隠してるよね。あと佑希も。


 でも流石に今は聞くことはできない。


 そう考えていると、由衣が今度は「……どっちに行くの?」と言葉を投げた。


「……考え中だ。決め手がない」

「……別に、普通に二手に分かれたら良いんじゃねぇの?」


 その言葉に、真聡は振り返って私の前に居る志郎を見る。


 そしてしばらく志郎を見つめてから、「あまりこの状況で戦力分散はしたくないが……」と呟いた。


「でも、道が2つに分かれてる以上はそうするしかないでしょ」

「…………そうだな。チーム分けを考えるか」


 私の一言が最後の一押しになったのかな。

 とりあえず、分かれていく方向で話が進み始めた。


「……まず、俺と佑希は分けたい」


 その言葉に佑希が「そうだな。俺も同意見だ」と言葉を返す。


「次に……由衣と志郎も分けるか」


 すると、志郎が「……理由を聞いてもいいか?」と言った。


「由衣と志郎は最初に分けた2人の次に戦ってきた期間が長い。

 それにそこまで選ばれたときの差がない。つまり実力が近いだろう」

「で、その分けたのをどう組ませるわけ?」


 私の言葉に、真聡は黙ってしまった。


 そして数秒後、「……俺が由衣を連れて行く。目が離せない」と真聡は呟いた。

 それに対して志郎が「理由……どうなんだよ……」と言い返した。


 とりあえずこれで真聡と由衣、そして佑希と志郎というチーム分けになった。


 最後に残ったのは私。


 ……まぁ私が1番遅いし、まだ選ばれて戦い始めてから1ヶ月ほどだから戦力として頼りないか。


 でもそう思っていても必要だと思うので、「私は?どっちと一緒に行けばいい?」と疑問を投げる。


 するとまた少し時間が空いてから真聡が「佑希の方に入ってくれ」と言った。


「……理由を聞いても良い?私は真聡の方になると思ってたんだけど」


 真聡からの返事はない。


 私が真聡の方になると思っていたのは、戦うときの距離の問題。


 真聡も由衣も色々飛ばして戦うタイプ。

 だから2人だけで堕ち星と戦闘するなら辛いと思う。


 まぁ私達全員、志郎のお父さんに鍛えてもらってるから完全に戦えないとわけじゃないと思うけど。


 だけど、やっぱり1人ぐらい近い距離が得意な人がいた方が良いと思う。

 そして今、残っているのは槍が武器の私だけ。


 私が前で戦えば2人が言葉を唱える時間が稼げるはず。


 ……間違ってないよね、この考え。


 そう思っていると、真聡は「……いや」と口を開いた。


「佑希の方に着いて行け。

 人数が奇数なんだ。それなら佑希の方を1人多くしたい。

 俺の方は何かあっても俺が何とかする」


 そう言った真聡の声は。

 やっぱり言っても聞かなさそうな、既に決意している声に聞こえた。


 なので納得はできてないけど、私は「……わかった」と返事をする。


 真聡がそう言うなら従うしかない。

 今は喧嘩してる場合じゃない。


 チーム分けは決まった。あとはどっちのチームがどっちの道に行くか。

 そんな話をしていると元気な声が左側の道から響いてきた。


「まー君!!!!みんな!!!これ見て!!!」


 そう叫びながら、由衣が頭の上のライトを輝かせながら帰って来た。


 ……チーム分けの会話が珍しく静かだと思ってたら、由衣が参加してなかったんだ。

 でもこの状況で単独行動は危ないと思うんだけど……。


 そう思っていると、真聡が「何がいるかわからないのに叫ぶな」と低い声を飛ばした。


「というかお前、どこ行ってたんだ」

「あ……えっと……何かないかなって思って両方の道をちょっと見てたら、何か落ちてるのを見つけてさ。拾いに行ってみたらこれが!」


 そう言って由衣が差し出したのは星芒高校の生徒手帳。

 私も同じものを入学した時にもらってるからすぐに分かる。



 そして、その手帳が由衣の手によって開かれる。



 由衣はそのまま、中に入っている学生証を取り出す。

 その持ち主の名前は、『水崎みずさき 日和ひより』と書いてあった。


 その瞬間、真聡と佑希が「日和……」と呟いた。


 そして由衣は、深呼吸をしてから「つまり」と口を開いた。


「ひーちゃんはこの中に入って、こっちに行ったってことだよね」


 そして自分が来た道を指さす。


「落とした……ってことだよな。

 そして拾いに戻ってこれない状況……」

「何かから逃げてた……ってことか?」


 佑希の言葉に続いて、志郎がそう呟いた。

 その言葉に真聡が「……そうだと良いんだがな」と返した。


「由衣、お前は俺と一緒だ。左に行くぞ。お前らは念の為に反対側を頼む」

「手がかり見つかったんだしみんな一緒に行こうよ!」


 そう言いながら、由衣は自分の隣を通りぬけようとする真聡の前に立ちはだかった。

 そんな由衣に、真聡は「いや、罠かもしれない」と返した。


「それに、日和が意図的に自分が行く方向と反対側に投げた可能性もある。

 だから念の為に、佑希達には反対側に行って欲しい」


 その言葉に、私と志郎はそれぞれ返事をする。

 そして右側の道に進む。


 そのとき、佑希が「……俺も、左側に行かせてくれ」と呟いた。


「……理由を聞かせろ」

「俺だって日和が心配だ。左にいる可能性があるなら、俺も左に行きたい」


 また、真聡は返事の言葉を発さない。


 聞こえるのは水の音と佑希の最後の声が地下貯水路に反響しているのだけ。


 数秒後。

 真聡は絞り出すように「…………駄目だ」と呟いた。


 その言葉に、由衣が「何で!?」と聞き返す。


「3人で行けばいいじゃん!私達幼馴染は5人なんだから、ゆー君だってひーちゃんが心配なのは当たり前じゃん!」

「駄目だ。戦力的に志郎と鈴保すずほを2人にしたくない」


 突然始まった、絶対に居まするべきじゃない言い争い。

 それに志郎が「俺は良いぜ」と割って入った。


 ぶっちゃけ、私も同じ意見だから「行ったらいいじゃん、3人で」と言葉を投げる。


 しかし、真聡は反対らしい。

 「……堕ち星に出くわしたときにどうする」と低く重い声で聞いてくる。


「そのときは……戦うしかねぇだろ」

「へび座やからす座、それより強い堕ち星がいたらどうするんだ」


 その言葉に、今度は私が「最悪逃げるわよ」と返す。


「私達は普段から運動してるんだから、星鎧さえ纏えれば簡単には追いつかれないでしょ」

「そうそう。だからお前ら3人で友達探しに行けよ。

 ……大事な、幼馴染なんだろ」


 また真聡から言葉が返ってこない。


 そして数十秒後。

 真聡は「……悪い。行くぞ2人共」と言い残して、左側に進んでいった。


「ちょっ!待ってよ!1人で行かないでよ!」

「悪い。2人も気を付けてくれ」


 由衣と佑希はそう言いながら、真聡を追いかけていく。


 私的には、佑希が入ればチームバランスも良くなると思う。

 だから反対する理由はない。むしろこれでいいと思う。



 ……ただ、志郎と2人っきりなのが少し嫌だけど。



 でも今そんな事言ってる場合じゃない。



 そんな事を思いながら私は、真聡達の背中が遠くなっていくのを見ていた。

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