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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第120話 地下貯水路

 住宅街の中、さらに低い位置にある川の中。

 その川の岸壁の一部を覆う、黒い靄状の澱み。


 俺はその澱みを水魔術で祓った。



 その結果、現れたのは。



 岸壁に浮かぶ、禍々しい存在感と黒い光を放つ紋様だった。



 ……何かの封印だろうか?


 だが行方不明となっている日和ひよりに繋がりがない以上、この怪しい封印を解いてみるしかない。

 危険はあるかもしれないが、気にしてる場合ではない。


 俺はもう一度その紋様に向かって左手を伸ばし、今度は別の言葉を紡ぎ始める。


「我、星の力を分け与えられし者也。故に我、神遺を宿す者也」


 その瞬間、左手から紺色の閃光が走り出す。

 そして、身体中が痛み始める。


 やはり、自分を大きく定義する言葉を使うのはキツい。


 それに堕ち星が仕掛けた封印ならば神遺に該当する力のはず。


 澱みに加えて神遺、そうなれば封印解除に危険が伴う。

 それどころか大抵の魔師では手出しができないだろう。



 だが、俺にも同じ神遺の力である星座の力がある。



 同じ系統の神遺同士ならばあとは技術の差だ。



 俺は身体の痛みを堪え、気合を入れ直して言葉を最後まで紡ぐ。


「その神遺において命じる。汝が秘匿せしものを解放せよ。

 我、澱みを祓い、世を照らし、人々を導く星座の光に選ばれし者也!」


 紺色の光が封印にぶつかる。

 そして紺色と黒色、2色の閃光が走る。



 その後、ガラスが砕けるような音がした。


 

 そして目の前に現れたのは、コンクリート製の水路だった。



 ……とりあえず、上手く封印が解除できたようで何よりだ。



 少し痛みが残る左腕を振りながら、深く息を吐く。



 するとそこに、上から末松刑事の「あ〜〜!!そうだ!!」という叫び声が聞こえてきた。


「地下貯水路だ!おかしいと思ってたんですよ。

 何で思いつかなかったんだろうな……」

「末松、叫ぶな」

「あっ……すみません」


 どうやら丸岡刑事にも見えるようになったらしい。

 封印を解除したから見えるようになったのだろう。


 恐らく認識阻害の効果があった……いやそれが封印の主か?


 それにしても地下貯水路か……。

 星雲市《この街》の地下にあることは知っていたが……いかにも何か潜んでそうな雰囲気がある。


 そう思ったとき、地下貯水路から黒い靄が吹き出してきた。


 尋常じゃない濃さの靄状の澱み。


 それと同時に納得がいった。


 だが先にこの澱みの対処をしなければ。


 俺は神経を集中するのをやめる。

 そして自分の身体の中、魔力回路を魔力と星力で満たすイメージをする。


 次に最初に澱みを祓ったときに紡いだ言葉をもう1度唱え、澱みに向けて水を放つ。


 すると地下貯水路は少しだけ奥への見通しが良くなった。


 これなら入ることもできるだろう。

 だが……先に1度上に戻って、これからの行動を言った方が良いだろう。


 そう思った俺は、少し移動しながら無詠唱の身体能力向上魔術を使う。

 そして上にいる由衣ゆい達に「離れろ」と言ってから、思いっきり飛び上がる。


 するとちょうどよく柵の高さまで飛び上がれた。

 俺は柵を掴んで、自分の身体を引き上げて柵を乗り越える。


 そして、ようやく地上に戻って来た。


 先程の左手の痛みは取れた。

 だが、本当に大変なのはここからだ。


 そう思っていると、丸岡刑事から「……何から聞けば良いんだ?」という言葉が飛んできた。

 それに続くように「私達にも説明して!」と由衣からの言葉も。


 現状の共有は必要だ。

 むしろそのために上がって来たからな。


 俺は頭の中を整理しながら「まず」と口を開く。


「今俺が解除したのは何者かが仕掛けた封印です。恐らく仕掛けたのは堕ち星……怪物だと思います。

 ですが、行方不明の5人がこの中にいるとは限りません。だから俺1人で突入します」


 そう言った後、俺はメンバーの方を向いて「お前らは念の為に待機しろ」と指示を出す。

 すると、すぐに「何で1人で行こうとするの!?」という由衣の言葉が飛んできた。


「……確証がない。もし違った場合は時間の無駄だ」

「だからって……1人で行かせたくない。

 それにまー君、今日調子悪いんでしょ?」

「頭痛いなら無理しない方が良い」


 智陽ちはるまでがそんな言葉を投げてくる。


 だがそれはもう解決済みだ。


 なので「あぁ。それなら多分。原因はわかった」と言葉を返す。

 すると由衣が「え?」と首を傾げながら呟いた。


「俺はいつも澱みや堕ち星の気配を感じ取れる術を使っている。

 それがここ数日はあの地下貯水路……この街の地下に溜まっている澱みを感じ取っていたんだろう。

 だからその術の使用を止めれば楽になる……というかなった」


 これは先程、地下貯水路から澱みが吹き出したときに気が付いた。


 恐らくまだマシだった家や跡地、学校には結界が張ってある。

 そのため、地下の澱みまで感知できなかった。だからその3箇所では身体に不快感がなかったんだろう。


 まぁ1つ言うなら、これは魔術じゃなくて技術なんだが。


 そして俺の説明を聞いた由衣は「それなら良かった……いや良かったけど良くない!」と叫ぶ。


 どうやら不満らしい。


「そうだけどそうじゃない!『もう頭が痛くないからいい』って問題でもないから!

 とにかく、1人では絶っ対に行かせないから。まー君があの中行くなら、私も行くから」

「俺も行く。どう考えてもあの中に怪しすぎるだろ。

 それに現状、あの中しか日和の居場所は考えられない」


 まさかの由衣だけではなく佑希ゆうきまで着いてくると言い出した。


 だから地下貯水路に行方不明の5人がいる証拠がないんだが……。

 それに危険度も未知数だ。もしもの時を考えて俺1人で行きたいんだが……。


 しかしメンバーからの言葉は終わらない。

 続くように、志郎しろうも「俺も行く」と口を開いた。


「あの靄……澱み?の量、どう見ても普通じゃねぇだろ」

「そうそう。あんなにあるなら、あの中に堕ち星がいても不思議じゃないんでしょ。

 それにもし堕ち星が居た場合、私達が後から追いかけても間に合わない可能性高いでしょ。だから私も行くから」


 鈴保すずほまで行くと言い始めた。


 まさか普段ストッパーよりの佑希や鈴保まで着いてくると言い出すとは……。

 何でこういうときにストッパーにならないんだ……頭が痛くなってきそうだ。


 ……まぁ、感じないように細工をしたから頭痛も不快感はないが。


 そう思ってると智陽が「というか」と口を開いた。


「澱みっていつものあの人型のことじゃないの。さっきからあの靄も澱みって言ってるけど」

「……澱みの本来の形はあの靄だ。人型になって人を襲う今の方がおかしいんだ」

「え、あれが本当の姿なの!?」


 智陽の質問に答えたはずが由衣が驚いている。

 由衣は続けて「何で人型になるの」と聞いてくるが「知らん」と返す。


 その理由は協会も明確な理由は解明できていないらしい。

 俺が知りたいぐらいだ。


 そんなやり取りをしていると丸岡刑事が「じゃあ華山以外は行くってことでいいな?」と聞いてきた。

 その言葉に、由衣が「はい!」と元気よく言葉を返す。


「じゃあ準備をして、少し休息を取ってから突入してくれ」

「わかりました!」


 由衣のその言葉の後。メンバーたちは警察が現場捜査本部としているらしい仮設テントの方へ歩いていく。


 気が付くと、なぜか本当に星座に選ばれたメンバー全員で行くことになっている。



 ……どうしてこうなった。



 何故か倍疲れた気分の俺の口から、思わず溜息が零れた。

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