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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
8節 友達とは、親友とは
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第117話 不快感

「……台風さ、直撃すると思う?」

「さぁな」


 9月も半分が終わったある日。

 由衣ゆいの言う通り、この街に台風が近づいているらしい。

 その影響か今日の天気はあいにくの雨。


 ……昨日までは晴れていたのだが。


 そんな雨の中を、俺は今日も迎えに来た由衣と2人で学校へ向かってる。


 あれから射守いもりとは会っていない。

 澱みとの戦闘は何度かしたが現れなかった。


 一方、由衣は矢持やもちと定期的に連絡しているらしい。


 まぁ由衣が人と仲良くなるのが早いのはいつものことだ。

 射守の行動も把握できるだろうし、任せておこう。



 いや、それよりも大事なことがある。



 頭が痛い。



 というか何か妙な不快感を覚えている。

 それもここ数日、外に出るとだ。


 そして今日は特に酷い。悪寒というやつだろうか。


 そんな事を考えながら空いてる手で頭に手を当てる。

 この行動で不快感が消えるわけでもないが。


 すると、「……さっきからどうしたの?」という由衣の言葉が飛んできた。


「……頭痛いの?大丈夫」


 ……思いっきりバレている。


 しかし、肯定すると過度に心配されるのは目に見えている。

 なので俺は「違う。何でもない」と返す。


「……ほんとに?違うなら良いけど……無理しちゃ駄目だよ?」

「……あぁ」


 すると、今度は「いや、多分本当に頭痛いんでしょ。返事のキレがない」と鋭い言葉が後ろから飛んできた。

 そしてすぐに由衣の「わ!ちーちゃん!!」という言葉が飛ぶ。


「おはよ!……いつの間に?」

「おはよ。由衣が『頭痛いの?』って聞いたときから後ろにいたよ」


 確かに誰か後ろにいるとは思っていたが、それが智陽だとは思わなかった。

 そして見抜かれてる。……頭痛が増しそうだ。


「気づかなかった……え、本当に痛いの?」

「…………あぁ」

「きっと偏頭痛でしょ。今日雨だし。あと寝不足だと悪化するらしいし。

 真聡まさと、ちゃんと寝てる?」


 智陽からの指摘がまた飛んできた。


 寝てるか寝てないか。

 答えるなら「前よりは寝ている」となる。


 こぎつね座の幻覚を受けてから半月ほど経った。

 そしてようやく夢を見る回数も減ってきた。だから最近は寝れている。


 なので俺は先程の答えの通り返事をする。


「……もしかしてリードギアの実験してるからだったり?

 あれまだ実験中なんでしょ?」

「……何か不具合あったのかな」


 由衣の言葉の後、智陽がそう呟いて口を閉じた。


 これは……責任を感じているのだろうか。

 智陽は外観やざっくりとした機能を考えただけで、作ったわけではないんだが。


 ……不必要な責任を感じさせるぐらいなら、全部話した方が良いか。


 そう思い、俺は口を開く。


「頭痛も不快感も外に出るとだ。家や跡地に居るときには感じない」

「……じゃあ、リードギアじゃない?」

「多分な」


 俺の言葉に、智陽が「……じゃあいいけど」と呟く。

 そして入れ替わるように、「じゃあ……何で?」と由衣が呟く。


「知らん。わかったら苦労しない」

「そう……だよね……。

 でももし我慢できないなら言ってね?保健室付いて行くし、帰るなら家まで送るから」

「いらん」

「こういうときぐらい素直に頼ってよ〜」


 由衣が頬を膨らませているのが視界の隅に見えるが、俺は気にしない。


 自分の限界ぐらいわかってるつもりだ。

 というか、由衣の手を煩わせたくない。


 そうこう話していると、通用門が見える所まで来た。

 しかし、いつもと様子が違う。


「……警察来てない?」


 そう。

 由衣の呟きの通り、通用門前には数台のパトカーが止まっている。


 ……こんな朝から、何事だ?



 俺はそう考えながらも、集中して気配を探る。



 堕ち星や澱みの気配は……しない。



 というか感じられない。不快感によって何も感じれない。


 俺は由衣の言葉に「なんだろうな」と返す。

 そして一応智陽に「何か知ってるか」と話を振る。


「流石に何も知らない。雨の中歩きながらスマホは流石に無理」


 やはり知らなかった。

 というか知っていたら最初に会ったときに言いそうだ。


 となると……事情を知ってる人を探したいが……


 そう考えていると「あ、ゆー君!おはよ〜!!」という声が聞こえてきた。

 そしてすぐに「あぁ。おはよう」という声が聞こえた。


 振り返ると、佑希ゆうきがどこからか合流してきていた。


 ……こいつ今どこから出てきた?


 そう考えている間に、智陽が「佑希は何か知ってる?」と質問をしている。


「残念ながら俺も今来たところ。だから何も知らない」


 そう上手くは行かないようだ。

 何で頭が痛い(こんな)日に限ってこんなことに……。


 そう思っていると、佑希が「とりあえず」とまた口を開いた。


「校内には入れそうだから教室へ行こう。途中で何かわかるもしれないし」

「それもそうだね」


 由衣がそう返して、佑希と一緒に通用門の方へ向かって歩いていく。

 そして智陽もついて行く。


 俺も置いて行かれるわけにはいかないので追いかける。


 下駄箱まで行き、屋根の下で傘をたたみ校舎内に入る。


 すると「よぉ〜す、4人共〜」と、また聞き慣れた声が聞こえてきた。

 その声に由衣が「あ、しろ君!おはよ!」と挨拶を返す。


 今度は志郎しろうが合流してきた。

 俺は即座に「志郎はこの状況について知ってるか」と言葉を投げる。


「いやぁ……俺も知らねぇ。

 ……あでも、鈴保すずほなら朝練で早く来てるから何か知ってるかもな」

「今どこにいる」

「あぁ〜……今日雨だからな……校舎内の何処かだと思うんだけど……わかんね!」


 ……絶妙に頼りにならないな。


 そう思っていると、智陽が「……先に鞄置きに行かない?」と呟いた。


 そして由衣の「それもそうだよね」という返す。続いて佑希と志郎もそれぞれ肯定の言葉を口にする。


 そのため、俺達5人はとりあえず教室へ向かう。


 だが、やはり校内はざわざわしている。

 ただ有益そうな情報は聞こえてこない。


 そして途中で志郎と別れ、俺達4人は自分の教室へ入る。


 するとすぐに「おはよ〜今日は4人一緒なんて珍しいね」という声が飛んできた。

 由衣はすぐに「麻優ちゃんおはよ〜!」と返す。


「そうなの、今日はゆー君とちーちゃんは学校に着く前に会ったんだ〜」


 同じクラスの長沢ながさわ 麻優まゆが話しかけてきた。


 そして確かに俺と由衣はほぼ毎朝一緒だが、佑希と智陽とは別に来ることが多い。

 そのため4人で教室に入るのは珍しいかもしれない。


「ところで、1限目は自習らしいよ?」

「そうなの?」

「うん。ほら」


 長沢はそう言いながら黒板を指差した。


 黒板には『今日の1限目は自習です』と書かれている。


 ……やはり何か起きてるな。


 しかし、この感じだと長沢も何も知らなさそうだ。


 どうするか……。


 そう考えながら鞄を自分の席に置く。


 そして何やら廊下が騒がしい気がする。

 そう思った次の瞬間。


「真ぁぁぁ聡ぉぉぉ!!!鈴保教室にいたわ!!!」

「うるさい。普通に呼んで。周りの注意引くし。それと廊下は走るな」


 志郎と鈴保がそんな声と共に、教室の扉の所に現れた。


 ……普通に来てくれ。


 とりあえず俺達3組の4人は廊下に出て、志郎と鈴保と合流する。


 出て直ぐ、鈴保が「それで、警察が来てる理由?」と言葉を投げてきた。

 由衣が「そうそう。何か知ってる?」と返す。


「顧問が言ってた。

 生物部の生徒数人と顧問が昨日、学外活動に行ってから帰ってきてないんだって」


 生物部って……確か……。


「ひーちゃん!!!」


 俺が考え着くよりも先に、由衣は走り出していた。


 恐らく日和の教室だろう。


 俺達も流石に走りはしないが、急いで後を追う。

 途中、由衣が先に日和の教室に入っていくのが見えた。


 そして俺達が教室の前に着くと、ちょうど由衣は廊下に出てきた。

 明らかに、さっきより顔色が悪くなってる。


 そんな、由衣が不安そうな顔で口を開いた。


「ひーちゃん……今日誰も見てないって……」

「つまり……」


 佑希のその言葉に、俺は「あぁ。たぶんそういうことだな」と言葉を返す。


 だが、この状況だと間違いないだろう。




 俺、由衣、佑希の幼馴染。

 水崎みずさき 日和ひよりが、行方不明になった。

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