表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
7節 新たな出会い
110/214

第108話 子供だって

 今日の私達は、また星雲市から少し離れた警察病院に向かっています。

 今回は私とまー君とゆー君の3人で。


 しろ君とすずちゃんはそれぞれ空手と部活。ちーちゃんは「パス」って言ってた。

 まぁ……まー君も「そんな大所帯で行く必要もない」って言ったし。


 私は呼ばれてないけど行くことにした。

 一方、ゆー君は何やらまー君にほぼ強制で連れてこられてます。


 ……何かあったのかな?


 わからないことはさておき。

 本題に戻って、私達は何故また警察病院に向かっているのか。


 それは数日前に丸岡刑事からまー君に「こぎつね座の堕ち星と成っていた森住もりずみ あきら君が目を覚ました」って連絡があったから。


 だから今回も私達は「何故堕ち星は生まれるのか」を解き明かすために向かう…ってまー君が言ってた。


 そして病院にたどり着いた私達は待合室で座って面会許可が下りるのを待つ。

 受付は前回と同じくまー君がやってくれた。


 数分後。看護師さんに呼ばれて私達は移動を始める。


 呼びに来た看護師さんが微妙そうな顔をしていたのは気のせい……かな……?


 そんなことを考えながらも、エレベーターを使って上の階に行く。


 でもエレベーターを降りて廊下を歩いてると、看護師さんが微妙そうな顔をしていた理由がわかった。



 廊下に怒鳴り声が響いていた。



 声的に……女の人と男の子……かな?


 そして看護師さんがまー君に「こんな様子ですけど……どうしますか?」と聞いている。

 でもまー君は「行きます」と言って病室に向かって歩いていく。


 この状況でも……行くんだね。


 そう思ってると、ゆー君もその後ろについて行ってるので私も追いかける。


 そしてまー君は病室の扉を普通に開けた。

 中から喧嘩してる声が聞こえるのに。


 入ったら予想通り、女の人と森住君との凄い喧嘩が行われていた。


「心配してないなら来なくていい!」

「お母さんだって働いてるの!職場に迷惑かかるからすぐに来れないのぐらいわからないの!?」

「知らないよ!だから来なくていいって言ってるじゃん!」


 ……とりあえず止めないと。


 そう思ったときにはもう、まー君が「あの」と言葉を発して止めに入っていた。

 すずちゃんが喧嘩してたときとは大違い。


 そして女の人は振り向いてから、「誰ですかあなた達」と言葉を投げてきた。


陰星いんせい 真聡まさとと申します。あなたの息子さんを怪物から元に戻した者です。

 今日は警察の方から許可を得て、息子さんに話を聞きに来ました」

「……今、見ての通り取り込み中なので後にしてください」

「失礼を承知で言いますが、今このまま続けても喧嘩をするだけではないですか?

 お母様も1度落ち着かれてはいかがでしょうか」


 まー君は森住君のお母さんの言葉に怯まず、ズバズバ言い返している。

 でも、それは逆効果だったみたい。


「警察から許可を得たって、あなたまだ子どもでしょ。

 それにこれは親子の問題なの。口を挟まないで」

「……俺は確かに学生で成人してない子どもです。それでも、これは俺がやらなければならないことなんです。

 それに、既に親子の問題では済まないところに来ています。ですので、1度俺に任せていただけますか」


 まー君の言葉に、森住君のお母さんは固まってしまった。


 でもその数秒後。

 森住君のお母さんは「……わかりました」とだけ言って病室から出ていった。


 ……まー君って丁寧に話せるんだね。


 私はそんな口にしたら怒られそうな感想を抱いてしまった。


 すると、森住君が「なぁ」と口を開いた。


「あの人追い出してくれたのは嬉しいけど、お前達誰だよ」

「お前と戦ったやつだ」

「……じゃあお前があの鎧のやつかよ」


 その言葉に、まー君は「そうだ」と返した。


 すると、森住君は反対側を向いてしまった。


「……帰れよ。お前にも話すことなんてない。」


 ……駄目そうじゃない?


 でもまー君は諦めずに言葉を続ける。


「……森住 晶。何であそこまで母親を嫌う」

「…………何だよ。お前まで説教かよ」

「それは違う。お前の話を聞きに来た。何故母親にあんな事を言う」


 だけど、森住君から返事は返ってこない。


 でもその十数秒後、森住君は口を開いた。


「……あの人、本当は俺のこと嫌いなんだよ。消えた父親の息子の俺なんか」

「どうしてそう思う?」

「ずっと働いて、全然家に帰ってこないんだよ。

 きっと俺が家を出た後、遊んで暮らせるように金貯めてるんだよ。俺には小遣いも全然くれないのに塾だけは行かせるし」

「それは母親から聞いたのか?」

「だから全然帰ってこないから話しすらしないんだよ」


 そのやり取りの森住君の声は、悲しそうな声をしていた。


 ……なんか、凄く可哀想。


 私がそう考えている間にも、まー君は言葉を続ける。


「母親も人間だ。考えてることを言わないと伝わらないぞ」

「……言った。小学生の頃、みんな持ってるゲーム持ってないし、家にも呼べないから周りのやつと遊ぶのが辛いって。

 そしたら『ごめんね』と『お母さん頑張るから』としか言われなかった。でも何も変わらなかった。逆にあの人が家にいる時間が減っただけ。

 だから、あの人は俺のこと嫌いなんだよ。」

「……だから前に『自分のことを必要しないやつなんて、みんないなくなれば良い』って言ってたのか。

 ……あれは、本心か?」

「…………覚えてない」


 それに対して、まー君は「今でもそう思うか?」と聞いた。


 森住君はしばらくしてから「思う」と返事をした。


 それを聞いたまー君は何か考えてるみたい。


 ……何を考えてるんだろ?


 聞こうとしたとき、まー君は口を開いた。


「お前、実は寂しいんじゃないのか」

「違う」

「……想いというのは、言わないと伝わらない。それに、伝えれる相手がいるのなら。手の届かないところに行く前に、伝えたいことは伝えておくべきだ。

 ……1人しかいない親なら尚更な」


 そう言ったまー君の声は、どこか悲しそうに聞こえた。


 一方、森住君は突然こっちを向いて「だからあの人は俺のこと嫌いなんだって言ってるだろ!」と叫んだ。


 その表情は。怒ってるのか、泣きたいのか。

 私にはわからない表情だった。


 ただ、感情と言葉の勢いが凄いのは私でもわかった。


 だけど、まー君は全く驚いてないみたい。

 さっきまでと変わらず、淡々と言葉を口にする。


「……嫌いだったら、もっと酷いように扱われているはずだ。

 ずっと働いて家にいない理由を自分で聞いていないのに、そう決めつけるのは良くないと思うぞ。

 1回落ち着いて、自分の気持ちに素直になってみろ」


 その言葉の後、まー君は振り向いた。

 そして「行くぞ」とだけ言って私達の方に歩いてくる。


 ……え、いや。森住君をこのまま置いていっていいの?


 そう聞く前に、まー君は病室から出ていってしまった。


☆☆☆


 病室を出てからのまー君は、誰かを探してるみたいで病院の中を歩き回ってる。

 「誰を探してるの?」って聞いても、「黙ってろ」って言われた。


 ……冷たくない?

 ゆー君は「まぁ黙って着いて行くしかないな」って言ってるし。


 でもまー君の探していた人が見つかったのは、結構すぐだった。



 そしてその人は、森住君のお母さんだった。



 森住君のお母さんは、廊下とくっついてる休憩室みたいなところの椅子に座っていた。

 そしてまー君は森住君のお母さんの正面に移動して、「お母様、息子さんから話を聞いてきました」と話しかけた。


「……お手数をおかけしました。晶には私からもキツく言っておきますので」


 その言葉の後、お母さんは立ち上がって頭を下げてから病室に戻ろうとする。


 まー君はその背中に「今叱っても、逆効果だと思いますよ」と言葉を投げた。


 すると晶君のお母さんは足を止めて、「じゃあ、どうしろと言うんですか」と呟いた。


「晶は怪物になって物を盗んで、同級生を襲ったんですよ。それを叱るなと言うならどうしろというんですか」

「……確かに息子さんは許されないことをしました。ですが、怪物になること自体がおかしいんです。

 だからまずは、責めるより話を聞いてあげてください」


 まー君のその言葉に、森住君のお母さんは振り向いた。「話を聞くって……」と言葉を発しながら。


「確かに私は家にいる時間は少ないです。

 でも私は晶のために、私や離婚した父親のようになってほしくなくて、いい大学に行って人生を失敗しないで欲しい。だからその学費を出せるように、晶が苦労しなくて済むように働いているんです。

 ……そもそも成人すらしてないあなたには私の……親の気持ちはわからないでしょ。

 ……これは私達親子の問題です。口を出さないでください」


 そう言い切ると、森住君のお母さんは今度こそ病室戻ろうと歩き出す。


 でもまー君は、「……確かに」と口を開いた。


「子供である俺には、お母様の気持ちは理解できないと思います。

 でも子供だからこそ、息子さんの気持ちがわかるんです。

 晶君は、お母様のような子ども思いの親を持てて、幸せ者だと思います。

 ですが言葉にしないと、親が何を考えているか、そもそも本当に自分のことを大事にしてくれているのかわからないんです。子供は人生経験が少ないので、余計に。

 息子さんはきっと不安なんです。家にいる時間が短く、ずっと働いている母親に自分は本当に愛されているのか。


 それに、親が願う幸せと子供が思う幸せは違うこともあります。子供だって1人の人間なので。

 だからきちんと、息子さんの話を聞いてあげてください。お母様の想いを伝えてあげてください。

 それがきっと、今の晶君に1番必要なことだと思います」


 その言葉の方で、森住君のお母さんは足を止めていた。


 そしてまー君の言葉から数十秒後。森住君のお母さんは「わかりました」とだけ言って去っていった。


 その背中を見送るまー君の顔はやっぱり、寂しそうに見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ