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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
7節 新たな出会い

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第106話 敵か味方か

 現れた澱みを倒した後。

 さらに湧き出した澱みに囲まれた俺達5人。


 そして戦闘を再開しようとしたその時。



 別の場所から魔力、いや星力を感じた。



 感じた方向を見上げると、紫色の光を放つ無数の矢が落下を始めていた。



 避けようにも、あの量だと範囲外に出る前に落ちてきそうだ。

 そう判断した俺は「全員伏せろ!」と叫んだあと、言葉を紡ぎ始める。


「風よ。吹き荒び、我らを降り注ぐ矢の雨から守り給え!」


 そして杖を掲げ、上空に向けて風魔術を展開して対抗する。



 紫の矢と、風魔術がぶつかり合う。



 この矢は鈴保すずほが蠍座概念体に刺されたときと同じ矢だ。

 俺は当初「行方不明のレプリギアの持ち主がこの矢を撃った」と考えていた。


 しかし、そのレプリギアの持ち主は佑希ゆうきだった。

 そして佑希が選ばれた星座は双子座で、戦い方は剣と星力で生成したカードを投げる。

 そもそも今、ここにいる。



 つまりこの矢を撃っている、敵か味方かわからない神遺保持者が別にいる。



 よく考えればすぐに分かることだ。


 しかし、こぎつね座の堕ち星との戦いや焔さんへの文句ですっかり忘れていた。

 誰の仕業か、敵か味方かを突き止めねば。


 ……現状は味方とは思えないが。



 1分ほど経って、矢の雨が止まった。

 俺は確認をしてから、風魔術を止める。


 それを合図としたのか、仲間達が立ち上がり始めた。

 一方、澱みは1体残らず消滅している。


 今のところ、次の攻撃が来る気配はない。


 しかし今日はどこから撃ってるか確認できていない。


 ここは駅前の商業施設街。地上から屋上が見えない建物ばかり。

 屋上から撃っている場合は地上からでは見えない。


 だが、今日でその正体を知っておきたい。


 そう思った俺は、まず追尾魔弾を上空に向けて撃ちまくる。

 追尾魔弾なら魔力や星力などに反応して、何者かが居るなら追尾できる。


 そして十数発は撃ったので、次に「佑希、煙幕か何かを出せるか!?」と叫ぶ。


「出せるけど……お前……」

「とりあえず出来る限り広範囲に出してくれ!あと全員集まれ!」

「無茶言うなぁ……!」


 そう言いながらも佑希は星力で作ったカードを左手で空に向かってばら撒いた。

 そして右手の指を鳴らすと、カードが弾けて煙を発生した。


 その煙は、徐々に俺達を覆い隠す。


 自分でも無茶ぶりだとは思うが……出来るんだな……煙幕……。


 十数秒後。煙幕が戦いの場を覆い隠した。

 そして視界が悪い煙の中、由衣ゆいの「何か考えがあるの?」という声が聞こえてきた。


 俺はその声に「直接捕まえる」と返す。


「うわぁ単純……」


 そんな鈴保の呆れたような声に俺は「それ以外ないだろ。悪いが4人全員で囮を頼むぞ」と返す。


 ……いや。本当は頼みたくない。


 だが、そうでもしないと近づけないだろう。

 それに今の由衣達なら、1回なら任せても重症を負うことはないだろう。


 何よりも、その次が来る前に俺が相手を捕まえてしまえばいい。


 今はそう、自分に言い聞かせるしかなかった。



 しかし、煙の中に由衣の「囮!?」という声が響いた。


「じゃあ私達ずっとあの矢から逃げ回るの!?」

「俺達……遠距離攻撃手段がないけど……どうしたらいいんだ?」


 由衣と志郎しろうの言うことはもっともだ。

 だが今はこれしか策がないんだ。


 そう反論しようとしたとき。

 佑希が「言い争ってる場合じゃないぞ。2回目が来てる」と言って来た。


 俺はその言葉で意識を外に向ける。


 確かに上空からさっきと同じような星力を感じる。

 ……時間がない。


 俺は「全員散開!」と指示を出しながら、煙の外へ向けて走り出す。


 走りながらプレートをギアから抜き取り、星鎧を消滅させる。

 代わりに、言葉を紡ぐ。


「我が身体。我が存在。何人たりとも視る事、識る事、聴く事、認識する事叶わず」


 使用したのは認識阻害魔術。


 攻撃が来ている以上、星鎧を解くのは危険だ。

 しかし、星鎧を纏ったままでは認識阻害魔術の効果は薄くなる。


 理由は星鎧の星力が強すぎるからだ。

 認識阻害魔術の1番効果が高くなるのは、生身で魔力使用と放出を極限まで絞った状態。


 だが結局遠距離の撃ち合いだと俺が不利なのは確実だ。

 だから、バレないうちに間合いに入りたい。


 走り出して十数秒後。煙から抜けた。

 俺はすぐ建物の屋上に上れそうな場所を探す。


 そして、ちょうど外階段から屋上に上れそうなビルを見つけた。

 俺は極限まで星力による身体能力強化を抑えながら、外階段に跳び乗る。


 無事に入れたので、そのまま階段を上って屋上を目指す。


 屋上に出てすぐ、辺りを見回す。


 すると少し離れたビルの屋上の端で弓を持っている男が目に入った。

 星力も感じる。


 あいつだ。


 俺はもう一度集中して、魔力や星力使用と放出を極限まで抑えてから前へ進み始める。


 体勢を低くし、ビルの間を跳ぶのは大変だ。

 それに途中にもう一度、上に向けて矢を放ったのが見えた。


 だが焦らない。

 ここで焦って失敗する方がすべてを無駄にしてしまう。


 そして、男が居る建物まであと1つまで来た。



 そのとき。

 男が突然こちらに向いた後、矢を放った。


 俺は咄嗟に横に転がる。

 直後、風を切る音が聞こえた。


 偶然にしては的確に俺を狙いすぎている。


 そう考えた次の瞬間。2射目が放たれた。


 俺は視界に男を収めながらも、もう一度地面を転がる。


 しかし、その避けた先を狙って既に3射目が放たれていた。

 だが俺も、当たるわけにもいかない。


 一瞬だけ手足に星力を手中させて、3射目に射抜かれる前にその場を離脱する。


 そして屋上の端まで走って、滑り込むようにパラペットの裏に身を隠す。


 完全には身を隠せてはいないが、一息はつけるはずだ。

 障害物の関係で少ししか見えないが、男は視界に入ってる。


 俺はひとまず深呼吸をする。



 それで……なぜバレた?



 疑問が浮かんだが、答えは簡単だ。



 認識阻害魔術は便利だが万能ではない。

 この魔術は魔力によって相手の認識狂わせる。

 そのため相手が魔術師、それも手練れであればあるほど効果は薄くなる。


 つまり、相手は認識を狂わせても見抜いてくる手練れだ。


 であればどうするべきか。



 しかし、結論を出す前に4射目が放たれたのがちらっと見えた。


 俺は咄嗟に横に転がる。

 するとその直後、俺の足があった場所に矢が突き刺さった。


 ……あの場所、屋上の柵をすり抜けた上で落下地点まで計算していないと刺されらないよな。

 それも、まだビル1つを挟んでいるのに。


 ここまで正確で計算された射撃をされたら作戦を立てる暇もない。

 だけど結論は難しいものではない。


 ここまで来たなら全力でこちらの間合いに入るだけだ。


 俺はもう一度転がって仰向けになり、追尾魔弾を放つ。


 そして立ち上がって、柵に跳び乗る。

 さらにその柵を足場にして、跳ぶ。


 隣のビルに着地をした直後を狙ったかのように矢が飛んできた。

 俺は無詠唱で身体能力強化を使ってから、斜め前に飛んで何とか避ける。


 しかし、またもや着地点を狙い矢が放たれている。


 やはりこちらが不利だ。

 このままでは近づく前にあの矢に貫かれる。


 だったら。


「風よ!我が身を空へと押し上げろ!」


 そう紡ぐと共に地面を思いっきり踏み込む。

 すると足元から上へと風が吹き上がった。


 俺の身体はその風に乗り、屋上のさらに上へと舞う。


 しかし、宙を舞う俺は相手にとっては絶好のチャンスだろう。

 既に矢が向かって来てるのがその証拠。しかも3本も。


 だが俺も考えなしな訳では無い。


 俺は相手に向けて左手を突き出し、「風よ!吹き荒べ!」と言葉を紡ぐ。


 すると今度は左手を中心に風が吹き、向かって来る矢を散り散りに飛ばしていく。

 飛ばされたその矢は、そのまま空中で霧散した。


 ……消えるということはただの矢ではなく、魔力などで生成しているのだろうか。


 そんなことを考えている間に、俺の身体は落下していく。


 しかし、また矢を番えるのが見えた。


 俺は相手と同じ屋上に着地すると同時に、走り出す。

 放たれる矢は、勘で避ける。


 矢は避けれた。


 俺はそのまま走り続ける。

 「電流よ!我が左手に宿れ!」と言葉を紡ぎながら。



 そしてついに、俺は間合いに入った。

 俺の電流を纏った左手が、男の顔の目の前に届いた。



 しかし、相手もまた無策ではなかったらしい。



 相手は矢を番えた弓を、俺の眉間を狙うかのように構えていた。

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