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師匠! 魔王の頭! 50億円で売れました!

盗賊村アスヒーダ交渉部屋

「クレープの作り方と砂糖を交換?」

俺は長老アデアラに聞き返した。するとアデアラは「まさしくこれだ」というものを見つけたように話を続ける。

「そう、アスヒーダの村は行商ビジネスで十分潤った。しかしこのビジネスは闇取引のようなもので他の場所へ公開することは無理。結局のところ我々はばれないようにこのビジネスを続けていた。しかしそろそろ引き際と感じ、なにか別の名産や名物……という公にしてもかまわない観光スポットを釣りたいんじゃ。密約で頑張ってきても人に自慢はできないが、このクレープはどの町でも有名になれる素質がある。作り方を教えてくれんかの?」

 アスヒーダの村長としては改心したいという気持ちはあるようだ。というか今にもクレープをお代わりしたい感じがする。


「クレープの作り方を教えたらこの行商ビジネスはやめて、観光街としてスタートしてくれるのでしょうか」

俺は、アデアラに本当にクレープ一本で頑張るのかを確かめる。

「ああ、わしはそう思っている。少なくとも子供たちが大きくなった時にこんな仕事をしていたという文化は消すべきなのじゃ」

どうやら本気のようだ。

しかし、長老はその気でも今までの稼ぎ方法を捨てて新しいことをする事に抵抗するものもいるだろう。隣でアデアラの話を聞いている若頭ロッキもそのうちの一人であった。


「アデアラ様、落ち着いてください。少し話が急すぎるとは思いませんでしょうか。まずは我々もくれえぷ? とやらを試してみてから判断させてください。すみません、試食はまだ残っているかな?」

「はい、あります。今、取り出しますから少々お待ちください」


『空間転移』


そういって俺はいつも通り『空間転移』を使用して、倉庫の中からクレープの試食品を取り出した。

お、おお……これは伝説の魔術じゃないか、とひそひそ声が聞こえている。そりゃあ、こんな最上級高等術を使えるのも、こんなもったいないことに使っているのは俺一人くらいだろう。


「100食分あります。これ、みんなで食べてみてください。リリ、みんなにこれを配ってきて!」

「はい! 師匠!」

そういって俺は倉庫に残っていた試食品のクレープをアデアラとロッキに1つづつ手渡し、残りの分をリリが村中を回って渡した。

「師匠! みんなに配ってきました! そしたら……あはは、みんなついてきてしまいました」


この商談小屋の外にクレープを食べたものが集まっており

「うまい!」「うまい!」「これはなんだ?」「くれえぷ?」「長老が新しいスイーツを観光名産物にするらしいよ!」「そうなんだ! これは売れるぞ!」「どうやって作るんだろう」などと話し込んでいた。どうやら村人の中でもクレープは人気だ……

そして、「うまぁああうまぁあああ」と長老がまた歌い始める。


「……変な薬とか入っていないよな」若頭ロッキが怪しむ。

「もちろんですよ、だれが食べても小麦や牛乳、砂糖など無害な食材しか入れていません。人畜無害です!でもそれらを微妙な加減で調合したとき、人を幸せにする味ができるんです。これがクレープです」

「な、なるほど……」ロッキはうーんと悩み込む、そして手元にあったクレープを一口、パクリ。


「……!!!」

※ロッキの頭の中

「うまうまぁ!!!!!! ああああ! おいしい! なんだろう、この口に入れた時のもちって触感。そしてこの中から出てくるクリーム! とろけてしまうよ。そしてこの赤い果実があまあああい!! うまいい! これは荒波を駆け巡ってしまう。クリームの大海を!」ロッキは頭の中で大海原を巡ってた。


「……ああ、おいしいな。これはたしかに売れると思う。アデアラ様、どうしますか?」

「もちろん! 採用じゃ!」とアデアラはクレープを持っていない方の手でOKマークをした。

「さあ、クレープの作り方を教えるのじゃあああ」


◆◆◆

次の日

ということで俺はアデアラにある条件でクレープの作り方を教えてあげた。

ただし次の条件と引換えだ。


その1観光地としてこの村を大きくすること

その2行商から預かっている在庫は全て返却すること。また、新たに行商から物を預かるのは禁止。

その3クレープ屋の名前をメルティ2号店とする事、この町以外で販売するときはメルティ3号店と名前を付ける事、名前貸しのロイヤリティは月売上の10%とする

その4上記の内容を守ることができれば営業補助費で3年間1億カンを寄付する。途中で1~3を守れない場合は寄付を中止する。


「こ、こんな条件でいいんですか?」ロッキは契約書をよく見る。誰が見たってこの条件は破格だ。クレープの作り方を教えてもらえるだけではなくお金ももらえるなんて。

「問題ありませんよ。僕はクレープで世界を幸せにしたいと考えています。こんなの安いです。月に一度戻ってきますから、ロイヤリティを頂ければと思います。」

「わかりました。ち、ちなみにこの寄付金ですが……財源はどこから?」


「ああ、空間転移のワープポイントにしまっていた魔王の首を売ってきたんだ。ほら」


納品書

魔王 点数1 金額50億


「魔王の納品書って……もしかして、あなたは!」



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