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師匠! この盗賊村!何かがおかしいです(別の意味で)

「「世界一平和な村のアスヒーダ〜」」

子供たちの歌が終わり彼らは小屋から出て行った。

「うぁー上手なんですね!」

パチパチパチパチ


リリは陽気な笑顔で拍手をした、俺もなんか悪い感じがしたので合わせ拍手をした。

(……なんてひどい歌詞だ。しかし、大体のことは分かった。この村、アスヒーダはビジネス盗賊団だったのだ)


「いえいえ、二人とも喜んでくれてうれしいですじゃ」

アデアラは笑みを返す。

なんという事であろうか。行商人が盗賊に襲わ「れた」のではなく、行商人が盗賊に襲わ「せた」という設定をでっちあげていたのだ。在庫を一時的にこのアスヒーダの村に預けることでデコの国へは物流が届かなくなる。そうすると自然にデコの国の物価が上がるのだ。

もちろんデコの国への納入期限を守らないと行商と商人の間でわだかまりが発生するのだが……「盗賊に襲われた」という理由であれば相手も怒るに怒ることができないとの事であった。


「いやはや、昔は武力で物を奪ってはいましたが、そんな物騒なことする必要はないんです。だって定期的に行商がここにきては、物を盗賊に奪われたと言う体裁で置きにくるんです。行商達から自らの足で! 今月は砂糖を奪うと言うことにしているのです。このような生活を続けることでこの村はとても豊かになりましたのじゃ」


ビジネスの方法はいろいろあるが……なんか凄い。いろいろと固定観念を覆された。

「そ、そうなんですね」

「それで、あなた方はどのような密約を?」

長老の老婆アデアラは俺たちに再度質問をしてくる。

「僕たちはその……移動式行商レストランを経営しておりまして。材料に砂糖を頂けないでしょうか」

「なんだぁ。ただの買い物かぁそうだねえ、砂糖はもう3ヶ月したら次の行商が来るからまだまだまだ高くうるからなぁ。1袋だけなら7000カンでよければ売るけどもぉ」

「安い! いや高い! もともと砂糖は1200カンが相場だと思っています。しかし、デコの国では18000カン、高いところでも30000カンします。これではデコの国のお菓子屋さんが衰退してしまいます。どうにか通常の値段で譲っていただくことはできないでしょうか?」

「あ? それは無理に決まっているじゃ。おぬしは今教えてくれた。砂糖1袋30000カンと、これは利益が出まくってこの村はさらになる。お前に売るこの砂糖も7000カンじゃあ安すぎだ」

これだけシステム化してしまったのであれば覆すことは難しい。ごろつきの悪い盗賊であれば魔術で屈服させることもできるのだが……

「はぁ、金にならないなら時間のむだじゃ。早く帰ってくれ」

「さあ、出口はこちらです」若大将のロッキは小屋の扉を開けて外に出そうとする。

(く……ここまでなのか)

「あの!村長さん! 良かったらこれ!クレープって言うんですけど」

最後に言葉を発したのはリリだった。今回はいつにもまして今日は積極的である。

「くれえぷ? 聞いたことないなあ」

「試食品なんですけどよかったら! あの! 歌のお礼だと思ってくれれば」

「あぁ、ありがとう。この娘は良い子じゃなあ」

「では早速……」

「う……う……」

「う……う……うまあああ!!! ってことで! ミュージック! スタート!」

アデアラが声をあげると、再び子供たちが小屋の中に入り今度は手拍子をたたき始めた。


『うまいのお~ この食べ物は~めちゃくちゃうまい~

うまい~うまい~うまい~うまうまい! 下にとろけるクリームと~あまあまあまなくりーむと~奇跡の出会い一番おいしいー!』


(……なんだこのひどい歌は)

歌が終わり子供たちは小屋から出ていくのであった。

◆◆◆

「うむ、とても美味でしたじゃ。これをおぬしらは作っているんじゃな、そのくれえぷを」

アデアラは相当このクレープを気に入ったのであった。


「はい! アデアラさん! と言うことで、このクレープを作りたいんです。だから砂糖を分けてくれませんか」

人の心は腹からつかめ、昔誰かが言っていたような気がする。

「このクレープをたくさんの人たちに売りたいんです。だから材料の砂糖を元の正規料金で売ってください」

もはやこの盗賊村から砂糖をすべて取り返すのは不可能であろう。であれば自分たちが使う分の砂糖だけでも確保しておきたい。


長老のアデアラは少し考えると……

「うん、それはむりじゃ」

「なんで?」

「それはな、わしらも作りたいんだもん! この町をクレープ名産地にするんだもん!」


「えっ」

「クレープの村」

アデアラは相当クレープを気に入ってくれたらしい。しかしそれが裏手に出た。

「そこを何とか……」

「じゃあこれから交渉といこうかの。わしらはこのクレープの作り方が知りたいのじゃ。この砂糖と交換しないかぁ?」

「作り方を、教える?」

「そう、この町を観光地にしたい。その名産としてクレープを提供したいのじゃ」

(な、なんか凄いことになったぞ……)


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