師匠! どっちが好きか早く決めてください! 前編
ここはデコの国、中心部フィズの町、多くの大商人がここに居を構えている。
都市部は円を描くように中心部から王族、貴族、大商人、商人、平民とすむ場所を分けている。商人、平民エリアにはたくさんのお店が並んでおり、その品揃えの多さゆえに海外からも多くの人がデコを訪れるほどだ。
「うぁー! ここがデコの国ですね」
今日のリリは薄ピンク色の私服で髪を肩までおろしている。その姿はいつも一生懸命に働いている彼女とは少し違う雰囲気を醸し出していた。ああ、その姿は昔一緒に旅をした魔法使いアイシャにそっくりだった。
「馬を預けて、宿をとったら少し観光してみよう」
「はい! 師匠!」
リリはキラキラとした目でデコの町を眺めた。
「まずはこの国の名産品を食べて、そのあとお買い物して……」
「そうだね、この町は商人の町だからリリが欲しいものがきっとあると思うんだ」
「質問です。師匠、ここにはどれくらい期間立ち寄りますか?」
「そうだなぁ、この国にはクレープ材料の砂糖を買いに来ただけなんだ。だから3日もいれば良いと思う。それにこの国のルールで露店を開くことはできないから、準備ができ次第すぐに出発しようと思ってて」
「そうなんですね、そうしたらデコの国はちょっとしたバケーションですね! 私、新しい私服を買いたいです! きれいな服を着てこの町を探索したいです! ささ! 行きましょう!」
そう、デコの国のルールで屋台等は禁止されており、出店するためには屋根のある建物と国の永住権が必要だ。店舗を持たない屋台等は流通品を混乱させてしまう恐れがあるし、ここに住んでいる商人達の物が売りづらくなってしまう。商人たちを守る国デコ、ゆえに商人が沢山集まる。商人たちのパラダイスといったところか。
俺たちは馬を預け荷物を宿屋へ預けた後、街を回ることにした。
◆◆◆
「師匠! 見てください! どっちの服が私に合いそうですか?」
「えっと……どっちも同じにしか見えないんだけど」
「全然違うじゃないですか!」
リリは自分の選んでいる服を俺の目の前に押し付ける。
「え……えっとじゃあ右のほうかなー」
「師匠はセンスないんですね」プイッ
「じゃあ、左の方かな」
「師匠は優柔不断なんですね」プイッ
リリは口を膨らませてつぶやいた。
(えー結局どっちが正解なんだー)
「えーと、あーと」
「じゃ、私は会計をした後、着替えてくるのでちょっと待っててください」
そういうとリリは両手に持っていた服をどちらとも戻し、すでに購入を決めていたであろう青色の服を購入した。
(どっちも不正解なんて……)
いったん宿屋に戻りしばらくして……
「師匠、どうでしょうか? 似合いますか?」
「うぁあかわいい! かわいいよリリ! とてもいいと思う!」
「本当ですか! うれしいです」
新しい服を買えてリリはご機嫌だ。
「モモカさんより?」
「え……あっああ。もちろん。リリが一番かわいいよ」
そういうとリリは「じー」と俺を睨んできた。
「な、なんだよ。本当の事を言っただけじゃん!」
「ほ、本当ですか! やりました!」
彼女は嬉しそうにはにかんだ。
(どうやらリリはアデルの国で会ったモモカを敵対視しているようだ)
「さあ、行きましょう! まずはあそこのレストランで名物料理を食べます! おでんというのが有名みたいです! その次は隣のケーキ屋さんでケーキを食べます! そして……」
俺たちはデコの国の観光を楽しんだ。
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