俺(……まあ全部嘘だけどな!)
ワウフの村 集会場
ここは集会場、村で決まり事などを協議する時に使う場所だ。
小さなワウフの村で一番大きい施設となっており、大人でも30人くらいが収容できるスペースとなっている。
さて、ここで俺が置かれている状況……それは……
「うぅ……、うぅ……」
村の物を盗もうとした子どもたちの見張りである。彼らは手を後ろで拘束され、足は隣の子の足とロープで結ばれており身動きが取れないのである。特に食べ物の窃盗は魔王軍からの圧政で特に困窮しており、盗めば衛兵を呼び、死罪もしくは無期懲役にしても良いと言われるほど重罪とされている。だから少しかわいそうではあるが仕方がないと言えば仕方がない……のか?
「くれ……くれよ……食べ物」
少年が一人小さくつぶやいた。どうやら空腹のようだ。
周りを見ると他の子たちもいつ飯を食べたのか分からないくらいに、「食べ物」とつぶやいている。口枷はしていないから大きな声で叫ぶこともできるだろうが、彼らにそんな体力などなかった。
(魔王は倒した、そして世界を平和にしたというのにどうして目の前で子供たちが拘束されて、ボロボロの服を着て、今にも死にそうなほどの空腹を訴えているんだろう。目の前にいる子供たちはどういうものかすらわからないが、ただ食べ物望んでいる姿を見続けるのは勇者としてほおっておけない。)
俺は集会所から長老の家に向かう
「長老、おなかがすきました。何かください!」
「サエキ殿、集会所から子どもたちが逃げ出してしまいますぞ。持っていくから早く戻りなさい」
「ああ、わかったよ。ただし俺は今日農作の手伝いをして(嘘)、冒険者クエストを10個受けてきたんだ(嘘)。だから俺は腹が減っている。15人前を集会場前に持ってきてくれ」
(……まあ全部嘘だけどな!)
「……ふふ。お前がそんなに食えるとは思っていないが……そういわれると思ってなぜだか作ってしまった。ほら、これを持っていけ!」
そういってガララは大きなかごを俺に渡してきた。中には大きなサンドイッチが30個入っている。
「水は集会場の中に備蓄してあるからな、全部飲むんじゃないぞ」
ガララはうわべ上は規律を守るが、実際は優しいおじいちゃんなのだ。
「飲まないよ! でもありがとな、ガララさん」
「……気を付けろ。今日は新月だから明かりが何もない。子どもたちとはぐれないようにしっかりと監視しているんじゃぞ」
これがワウフの町の長老ガララとの最後の言葉だった。




