初代勇者が数千年ぶりに転生したら倒したはずの魔王に世界征服されてました。
暗黒時代。
それは圧倒的な力を生まれながら持つ上級魔族が大繁殖し世界が崩壊へと進んでいた時代。
それを一言で表すなら "絶望" それ以外の何ものでもない。
だがそんな時神に祝福され神に育てられたものが現れた。
人々はそのものを「勇者様」、「賢者様」、「神の子」だと呼んだ。
その者も死んだが魔王は倒され世界に平和が戻った。
そして数年後
「いやだ!助けてく」
ぐちゃ。
街中のレンガの地面に赤い液体が飛び散る。
悲鳴
ぐちゃ。
悲鳴
ぐちゃ。
悲鳴
ぐちゃ。
人々の悲鳴と無数の足音が町中に響き渡り波のように広がっていく。
世界は今死んだはずの魔王によって再度壊されかけている。
崩壊へと
町は荒れ神秘的な教会は血まみれの汚い姿へと変わり、王城では大量兵士が倒れこんでいる。
そしてその奥にいる黒く、禍々しい、絶望の塊のような者。
魔王だ。
そのころ神界では
「お、おい。これはまずいんじゃないのか」
「ひどいのう」
「ひどいわね」
「前より力が数倍に上がっておるぞ!」
「あのものを呼び出すしかないか」
「それしかなかろう」
「仕方ないのう」
白い地面に黄色く光る魔法陣が表れた。
「■■■・◇◇◇◇・□□」
魔法陣の光の強さが増してそこに人の影が映る。
「頼んだぞ初代勇者殿」
あたりに神秘的で低音の声が響き渡る。
「任せろ」
◇◇◇
「久しぶりに来たな」
大量の足跡によって踏み荒らされた草原の上に一人の勇者と小さな精霊がいた。
「久しぶりよね~」
「お前もいたのか。しろ」
「勇者の最強のペット様しろ、よ!」
「……ほかのやつはいないのか?」
「いないわね。」
俺が依然勇者として活動していたころには俺と精霊のしろ以外にも3人いた。
三人ともよく俺ののわがままに付き合ってくれたよ。
魔王討伐の旅の途中にも酒飲んだり、火を囲んで楽しく話したり……、楽しかったなぁ。
「物思いに更けてるんじゃないわよ、こうしている間にも魔王軍は世界を崩壊へと導いている。さあ、行きましょ。」
「はは、俺の考えはお見通しか」
「当り前じゃない。何年一緒にいたと思ってるの。」
「とりあえず足跡をたどってみるか」
「そうね。武器とか持ってるの?」
「ああ、持ってた。勇者の剣だ」
「ならいいわ。いきましょ」
「ああ」
「こ、これはひでぇな」
「なんで……」
地面にレンガが敷き詰めてある町には無数の死体が転がっていた。
「さっさといくぞ」
「いくからまってぇ」
俺は死体を踏まないようにして前へ進む。
「たすけてぇよぉぉぅ。うええぇぇん。痛いよぅ」女の子の泣き声がした。
「あそこよ!」
しろが小さい指で大きながれきをさした。
その下には黒い猫耳の生えた小さな女の子がいた。
俺はその子のいる方向へ走った
「今助けるからな!」
「おにい さん は だ れ?」
息苦しそうに彼女が言った。
「今はしゃべるな。肺が破裂するかもしれない。」
「……」
「重いなあ!」
俺は大声をあげながら大きいがれきを持ち上げる。
「早く来い!」
「は、はい!」
女の子は走ってがれきの下から逃げる。
「大丈夫か?」
「うん」
女の子の服は白い大きなTシャツのみで下には何もはいていなかった。
「これ使え」
俺はそう言って自分の着ているマントを女の子に渡した。
「あ、ありがとう」
「あんたの声が怖いからおびえてるじゃなーい」
「仕方ないだろ、声はかえられ……るか」
「おにいさんは怖くないからねー。とりあえずここで何があったか話せるかなぁ?」
「最後のほう元に戻ってるー」
「え、えーと。でっかい牛とか怖い人とかが町の人たちを、人たちを……」
かわいそうに。
こんな小さな子の目の前で人が殺されるんだからな。
怖くてしょうがないだろう。
俺は慣れたけど。
「ごめん、もう大丈夫。とりあえず俺についてきてくれる?」
このままだともう一回魔族が来た時に殺されてしまう。
守れる命は守りたい。
「わかった。ついてく。」
「よし、俺の名前はレオ。こっちはしろだ。お前は?」
「私はくろ。よろしくお願いします。」
くろ、だと!
しろとくろだ!
「よろしく」
「よろしくねぇ~」
「とりあえず生き残りがいないか探してみるか」
「このがれきの量はきついわね」
「安心しろ。がれきは元に戻すから」
「よろしく~」
「……え?戻す?」
「それ!」
俺は手を上にあげ魔法を発動させる。
するとがれきは消えて町の様子が元に戻っていく。
これは転移魔法。
ただものをもとの場所に戻してくっつけてるだけだ。
「相変わらずちーとねー」
「あ、あなたたちは一体?」
「名前は名乗ったよ?」
「……もしかして、レオって……初代勇者様ですか!」
「そっ」
「きずいちゃったか~」
「でも勇者様は魔王と相打ちになったて……」
「ん~神様にお願いされて生き返った。」
「私はそのペット様!」
「お、お願いです勇者様!町の人たちを救ってください!あと魔王も倒してください。お願いします!」
「魔王は倒すけど生き返らせるかはわからないかな。」
「まえはできたじゃん」
「まだ完全に前世の力を使えるわけじゃないんだよ」
「なるほどねー」
「ま、試してみるよ」
「ありがとうございます!」
大きく息を吸い吐いた。
「◇◇◇◇◇・◆◆◆・□□□□□□・◆◆◆◆・□□…………」
長い詠唱が終わったとき一斉に無数の虹色に光る玉が表れた。
まだだ!
魔力の制御ができてない。
もっと抑えてもっと圧縮。
流れをつかみ取って……ここだ!
玉が集まり大きな玉になる。
その玉からは強すぎる光が溢れ出し俺の視界を奪った。
光が弱まりだんだん視界が戻ってくるときにくろが言った。
「み、みんな!」
時を操る魔法。
それはこの世の理から外れた魔法。
失われた魔法。
そして古代魔法の一つ。
本来ならば "常人" ならば扱うことができない。
だが一人人間でそれを扱えるものがいた。
そう、勇者だ。
勇者だったら誰もが使えるわけじゃない。
勇者で神の子でしか使えない。
神の子とは神に祝福された者。
ゆえに人間で使えるのは初代勇者のレオのみ。
「お父さん!お母さん!よかった!よかった!」
「ど、どうしたんだよ。急に」
「あらどうしたの?」
「成功してよかった~」
「かっこよかった」
「なんかいったか?、しろ」
「うるさいやい!」
「そ、そうか?」
俺たちはくろを見届けた後ゆっくりとその場を後にした。
「おにいちゃん!」
「ん?」
くろに呼ばれたので後ろを振り返る。
「ありがとう!あとこれ!」
そう言ってくろが白くて小さい袋を渡した。
「お守り!お礼に!」
「ありがとう。元気でね」
レオではなくおにいちゃんといったのは混乱にならないようにと、彼女なりのお礼の一部だろう。
「またね~」
俺たちは歩く。
次の町へと。
まずは動き回ってる魔王軍をぶっ殺さねぇとな。
「せっかく生き返れたんだし楽しく過ごしましょ!」
「それもそうだな。」