真っ白なノートに色えんぴつで思いを込めて
むかーしむかし、ある所に、小さな狼獣人の男の子がいました。
名前はルゥ。喉に病気を持っていたため、赤ちゃんの時に孤児院の前に捨てられていました。
そこに、とても若くて優しい孤児院のシスターがやってきて、赤ちゃんのルゥを拾い上げました。
「あらあら。泣き声が聞こえないわ。呼吸はしっかりしてるのに。…そうね、孤児院は子供達の味方だもの。この子が成人するまで育てましょうね」
そして、そのシスターの元で育ったルゥは、無事に孤児院で元気にスクスクと育ちました。
しかし、ルゥは未だに声を出すことが出来ません。
孤児院で拾ってもう5年が経っているのに、きっとルゥも他の皆のように声を出したいと思っているでしょうに…。
シスターは、どうすればルゥが話せるようになるのか考えました。
「…うーん、どうすればいいかしら…。あ!そうだわ!ルゥに文字を教えてみましょう!」
『文字を教える』というナイスアイデアを思い浮かんだシスターは、早速ルゥを近くに呼び寄せました。
「ねぇ、ルゥ。これから私と一緒に文字を覚えましょうね。まずは…この文字から」
そうして、シスターは持ってきた赤い色えんぴつで真っ白なノートに『ルゥ』という文字を書きました。
「これは貴方の名前よ。素敵な名前ね」
「…!」
ルゥは声が出せないだけで、目も見えるし耳もよく聞こえます。
だからノートに書かれた自分の名前が素敵だと言われて、ルゥは尻尾をブンブンと大きく振り、目を輝かせて喜びました。
「ふふっ、喜んでくれてよかったわ。じゃあ、次は挨拶の文字を覚えましょう。『ぼくのなまえは、ルゥです』。はい、この文字を見て書けるかしら?」
シスターに突然、色鉛筆とノートを渡され、ルゥは少し戸惑いました。けれど、彼は意を決して色鉛筆を握り、文字を書きました。
『ぼ く の な ま え は ル ゥ で す』
大きさもバラバラでぎこちない文字でしたが、頑張って書いたのが伝わり、シスターはルゥをギュッと抱きしめました。
「そうよ、ルゥ!よく出来たわ!偉い子ね!」
「…!」
ルゥも褒められたのが嬉しかったのか、顔を赤くして今まで見たことない明るい笑顔を浮かべました。
記憶に残るような大切なものはきっと、大人になっても残り続けるでしょう。その時、まだルゥが色えんぴつとノートを持っていたら、また一緒にこのノートに文字を書きましょう。
そう遠くない未来に向けて、シスターはこれからもルゥに文字を教え続けたのでした。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
よろしければ、感想や「☆☆☆☆☆」の評価、いいね等お待ちしております!(^^)