第一話「宮島という男」
「あぁ金が欲しい」
才能もない。容姿も普通。
宮島隆幸はごく平凡なサラリーマンだ。29にもなって彼女もいない。借金まみれの典型的な駄目男だった。
普段は酒の販売会社の社員として働く毎日。仕事が終わった後や休日はパチンコや競馬、雀荘通いなどギャンブル漬けだった。借金ももうすぐ300万にとどこうかという所まで膨らんでいた。
「くそっ…また負けた」
宮島は今日もパチンコで負けイライラしていた。
「何か…何か今の状況を打開する方法はないものか…でも俺何も才能とか長所も本当にないしな。一つくらいあってもいいよな」
ブツブツいいながら新宿の街を歩いていた。周りを見ると仲のよさそうなカップルばかりだ。
「こんな公共の場でイチャイチャすんなやボケがっ」
宮島は道に置いてある喫煙者用の灰皿を思い切り蹴った。
「ガンッ」という大きな音がしたがカップル達は全く気にする様子もなくベタベタしている。
※
「ただいま〜」
家についた宮島は誰もいない自分の部屋にそう言いながら入り込んだ。7畳くらいある上に家賃は5万となかなかの部屋である。
宮島は趣味が何もないので部屋にも何も置いていない。テーブルが一つと布団が敷いてあるだけの寂しい部屋だ。
そんな部屋で冷蔵庫一杯に入ったキリンラガーの瓶ビールを1、2本開けながら考え事をするのが彼の一日の楽しみだった。
しかし今日は特に荒れていた。まだ帰って一時間弱しか経っていないのに、もうビールを瓶三本も空けていた。
「…変化…今のままじゃだめだ。何か変えないと。しかし俺には女がキャーキャー言う程の容姿もなければ使いどころに困る程の金もない。何かきっかけさえあれば…」
いつも自分から何をするわけでもなく、ただ愚痴をもらすだけなので変わりようもない。しかしなぜか今日に限って無性に何かある気がしていた。そのため落ち着かなくなり、アルコールの摂取量も増えていった。もうビールも5本目だ。
「ふう。しかしどうして世の中こんなんなっちまったんだ?今やキャーキャー言われる男、つまりイケメンと呼ばれる奴らってみんな髪の毛ツンツンのホスト顔の事だろ?…まぁそんなのばかり好きになる女も女だけどなぁ。やっとガングロギャルがいなくなったと思いきや今やキャバ嬢みたいな奴ばっか……そんな奴らに限って金持ってるし……」
宮島の言う事の半分は愚痴やヒガミばかりだが、もう半分はもっともな事だった。
宮島は疑問を抱いていた
自分は今のように毎日必死こいてこき使われて働いてようやく今の生活ができている。
しかし、ちょっと才能があったり容姿が良かったりするだけで稼ぎや世の中の扱いが違いすぎるんじゃないかと…
そのちょっとの差が大きすぎる…
必死こいて勉強してまぁまぁの大学行ったのにこれか?
「いわゆる負け組だな…」
そんな事を考えたら泣けてきた…




